悪魔とダラダラ異世界道中

灯籠

文字の大きさ
48 / 55

第47話

しおりを挟む
 「ちょっと、起きなさいよ。」

 そう言われながら体を揺さぶられ、俺は目を覚ました。

 「なんだよ?昨日は一日中お前を探してたんだし、もうちょっと寝かせてくれよ。しかも、お前の寝言のせいでロクに寝れなかったんだぞ?」

 「私の方がまともに寝れなかったわよ!丁重に扱うべき護衛対象を、木の床に寝かせる人がいるの!?」

 昨日のジャンケンで床で寝ることになったのは、クリプッセンだった。

 「まあまあ、落ち着けよ。運が悪かっただけだって。てか、文句があるんだったらあらかじめ言ってくれよ。」

 「私、姫なんだけど・・・。」

 「ああ、言い忘れてたが、俺達はお前を姫扱いするつもりは一切ないからな。」

 「それくらい気付いてるわよ!」

 そう言ってツッコミを入れたクリプッセンと共に、俺達は宿を出た。



 外で朝食を摂りながら、俺達は今日の予定について話をした。

 「なあ、クリプッセン。今日は何をするつもりなんだ?」

 「そうねえ・・・。考えてみたら、やりたいことがもっと浮かんできてしまうわ。ところで、私に普通の人の暮らしってやつを体験させる、って計画、ちゃんと立ててるの?」

 「いや全く。」

 「望んでない答えを即答しないでよ・・・。まあいいわ。だったら、今日は私のワガママに付き合ってもらうとしようかな?」

 「まあ、いいけど。何するんだ?」

 それからクリプッセンは、今日の予定を話してきた。

 「噂で聞いたんだけど、シノアにはデッカイ遊園地があるのよ!一応今回の外遊で、来賓ってことで遊園地のアトラクションを体験させてもらったんだけど、面白そうなものが体験できてないし、姫として来てるから心の底からの感情を表に出せなかったせいで、全然楽しめなかったのよ。」

 「それは残念だったな。」

 「まったくよ!だから、あなた達と一緒に遊園地で心の底からはしゃぎたいの。ね、付き合ってくれるよね?」

 そう言うと、クリプッセンは両手で俺の右手を掴み、上目遣いでこちらを見てきた。俺は思わず目をそらして、

 「お、おう・・・。」

 とキョドりながら答えた。少し声が裏返った。

 「決まりね!じゃあ行きましょ!」

 クリプッセンはそう言って、支払いを済ませて店を出た。俺は右手を固定したまま席に座り、クリプッセンの上目遣いを脳内で反芻していた。するとイーギが、

 「・・・ケケッ。」

 と笑ってきたが、

 「ありゃあ、誰だってそうなるからな。」

 と返すほかなかった。それほどまでに、クリプッセンの上目遣いは破壊力があった。



 クリプッセンについていくと、そこには大きな城と、どうやってできているのかよく分からない施設がたくさん並んでいた。

 「ここよ、ここ!これがネシディー園よ!たくさんのアトラクションが集まっていて、ここに来ればあらゆる娯楽を得られるとまで言われているわ!」

 「あ、ああ・・・。」

 「そ、そうか・・・。」

 俺とイーギは生返事をした。その理由は、多分イーギも一緒だろう。

 似すぎている。俺達の知ってる、あのランドに酷似している。何だあの城。デザインが丸パクリってレベルじゃねーだろ。持ってきたのか?俺達の世界から持ってきたのか?

 しかし、見えているのはあの城だけだ。これ以上に類似する要素なんてないだろう。

 そう思い込むことでなんとか自我を取り戻した俺は、クリプッセンに質問をすることにした。

 「なあ、クリプッセン。あの城って何だ?」

 「あれはデリン・セラ城っていって、あるお姫様が住んでいた、っていう設定で造られた城よ。」

 「アバババババ・・・」

 設定まで一緒じゃねえか!もうダメだ!どうしようもねえ!

 「ちょっとどうしたのよ、そんなに驚いて?」

 「いやー、これからどうなるのかなぁ、って考えててな。」

 俺の処遇が。

 「それを言うなら、どうするか、でしょ。もちろん、この遊園地に入って遊ぶに決まってるわ。」

 そこで俺は最後に、悪あがきのように質問をした。

 「クリプッセン。城ってああいうのが普通なのか?」

 「うーん・・・。私、他の国がどうなってるのかはよく分からないけど、少なくとも私の国ではあんな城、ちょっと時代遅れって・・・」

 「ようし、行こう!」

 俺はクリプッセンの発言をかき消すように声を出し、ネシディー園に向かうことにした。

 心の中は、アノ動物、もとい鬼が出るか蛇が出るか、気が気でならなかった。アノ笑い声が、脳内再生されていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...