380 / 901
七皿目 ストーキング・デート
21
しおりを挟む「ちなみになにが一番好きなんだ?」
「は、好物……個人の趣向ですか? 種族的にですか?」
「ん? 種族?」
俺はメニューからひょこりと顔を出して、ゼオを見つめる。
(種族的というのは……ドラゴンが肉好きとか、ワイトが生気好きとか、そういうことか?)
ゼオはトンと肘をついて、無表情のまま俺を見つめた。
それにしても、一度も表情が崩れたところを見ていないな。
「あぁ……俺、ハーフヴァンパイアなんですよ。ヴァンパイア種は、血が一番好きです」
しかしゼオの種族が明かされた途端──俺はビクッと肩をはねさせてしまった。
(吸血系の魔族さんだったのか……!)
なぜか、とことん吸血鬼に縁がある。
続く話によると、ヴァンパイアは定期的に血を飲まないといけないタイプの魔族で、ゼオも飲まなければ凶暴になるらしい。
だから日常的に口にする血液は、好みのもののほうが嬉しいそうだ。
「シャルは俺好みの、いい匂いですよね」
「いや、そ、それは俺自身とはまた違うというか、なんというかだな……」
さて。
なぜ俺がこんなにも気まずい気持ちなのか、昔聞いた話を思い出して、改めて聞いてほしい。
昔、俺のお菓子専用厨房を作る工事を手伝ってくれた、アゼルの眷族たち。
カプバットと、黒人狼という吸血系の魔族だったのだが……俺は三日ほどしか一緒にいないのに、妙に懐かれていた。
アゼルに聞くと、俺は異世界人で血が美味しい以前に、誰しもが個々に持つ体臭と言うか、所謂フェロモンが吸血系の好きな匂いだそうだ。
魔力の量で、匂いは大きくなる。
あの頃の魔封じをかけられた状態なら、眷族程度の弱い魔族しか気にならない。
魔力に魅了がかかる魔族だからこそ効くようなものらしいが、要は好意の種類は恋愛ではないが、モテやすいというわけだな。
で、今は俺の魔力がフル解放なのだ。
ハーフといえど、ヴァンパイアは魔界でそれなりに強い魔族。
ゼオがいい匂いと言ったのは、そのせいだと思う。魔力に釣られたのだ。
(……そんなものにまで効果ありなのか……?)
こうして共にいる理由が判明して、俺は少し複雑な気持ちになってしまった。
つまり俺は普通に仲良くなれたのかと思っていたが、ゼオはいい匂いがしたから気になり、構ってくれていたのだろう。
そのおかげで俺の下見に付き合ってくれているなら、なんだか罪悪感が湧き上がる。
俺というより、匂いの問題だ。
それを思うと、気まずかった。
ゼオはそう思って言い淀んだ俺を、特に気にしたふうもなく見つめる。
そして俺の内心を察した様子で、「あぁ」と漏らし、一蹴した。
「シャルの魔力の匂いですが……それを覚えていたから声をかけましたが、それ、きっかけですね」
「!」
「別にそれだけで今、会話してるわけではないです。ヴァンパイア、そんなにチョロくないですから」
42
あなたにおすすめの小説
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
転生×召喚
135
BL
大加賀秋都は生徒会メンバーに断罪されている最中に生徒会メンバーたちと異世界召喚されてしまった。
周りは生徒会メンバーの愛し子を聖女だとはやし立てている。
これはオマケの子イベント?!
既に転生して自分の立ち位置をぼんやり把握していた秋都はその場から逃げて、悠々自適な農村ライフを送ることにした―…。
主人公総受けです、ご注意ください。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない
Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。
かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。
後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。
群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って……
冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。
表紙は友人絵師kouma.作です♪
【完】ラスボス(予定)に転生しましたが、家を出て幸せになります
ナナメ
BL
8歳の頃ここが『光の勇者と救世の御子』の小説、もしくはそれに類似した世界であるという記憶が甦ったウル。
家族に疎まれながら育った自分は囮で偽物の王太子の婚約者である事、同い年の義弟ハガルが本物の婚約者である事、真実を告げられた日に全てを失い絶望して魔王になってしまう事ーーそれを、思い出した。
思い出したからには思いどおりになるものか、そして小説のちょい役である推しの元で幸せになってみせる!と10年かけて下地を築いた卒業パーティーの日ーー
ーーさあ、早く来い!僕の10年の努力の成果よ今ここに!
魔王になりたくないラスボス(予定)と、本来超脇役のおっさんとの物語。
※体調次第で書いておりますのでかなりの鈍足更新になっております。ご了承頂ければ幸いです。
※表紙はAI作成です
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる