21 / 454
第二話 先輩ワンコの沽券
05
◇ ◇ ◇
会社の前にある蕎麦屋に来た俺たちは、俺がきつねそば、冬賀が天ぷらそばをそれぞれ頼んでちゅるちゅると啜る。
俺は甘いおあげが大好きだ。というか甘いものは大抵なんでも好きだ。
馬鹿にされるから三初の前ではあんま食べねェけどな。知らん間に甘党はバレてた。
天ぷらそばのエビにかぶりついて衣だけ剥がれてしまったらしく、残念そうな冬賀は呑気にメニューに載った単品の天ぷらを、チラチラと見ている。
ったく、世話が焼ける野郎だ。
後輩の前ではシャンとしてるくせに、なんで俺の前じゃマヌケてんだよ。相変わらずなにかと残念なイケメンってやつだな。
「お前いつも衣崩すの嫌がってっから中身抜けんだぜ? ちったぁ学習しろよ」
「そおっと食わねーとパリパリなくなんだろ? 旨さ減するじゃねーか」
「すみません、エビの天ぷら単品で。あぁ? 天ぷらそばの天ぷらなんか汁に浸かってる時点でてろってろだろ。それが嫌なら注文届いてすぐ食え」
「半パリ半てろぐらいが一番うめーの。わかってねぇなぁ、シュウ」
理解できない顔をしつつ俺が単品の天ぷらを注文すると、冬賀は器にもう一尾残っていたその半パリ半てろのエビを俺の器に移す。
クククと喉を鳴らすのは、機嫌がいいからだ。わかりやすい野郎である。
冬賀は身内に甘い世話焼きなタイプだが、実は変なところが結構抜けている。
天ぷらそばだって別添えを頼めと言っているのに拒否するし、それで毎度てろてろになるのだ。
俺は間抜けな友人を鼻で笑ってから、献上された天ぷらにかぶりつく。
おあげなら汁を吸えば吸うほど美味くなるってのに、これだからモグリは……と。お、うめぇじゃねぇか。
「まぁまぁだな」
「はいはい。うまいって顔したくせに」
「してねぇ。ってかお前ケツ掘られた?」
「掘られてねぇー。……?」
「おーそっか。あ、天ぷらそっちっす。ありがとうございます」
「うーい。んぐ、正統派パリパリうまいわー」
注文が届けられたのに気を取られなにも気がつかず、無事ちゃんと清い肉体らしい冬賀は天ぷらを美味しそうに食べている。
内心密かによし、と頷く。
あまりのさりげなさに自分の才能が怖いくらいだ。
こういう人の話を聞き出すとか小細工が苦手な俺にしては、上出来である。
冬賀の間抜けは気づかないだろうし、暴君の毒牙にかからず処女を貫いていたことを確認できたのでオールオッケー。
「いや、なんか今おかしくね?」
オイ、なんでだ。
全然気づいてるじゃねぇか。
全国さりげなさ選手権トップスリーのようなやり取りだったのになんでバレたんだよクソ納得いかん。
なんだか負けた気分にもなり、俺はチッと舌打ちをしつつそばつゆを飲む。別に不貞腐れてはない。
唇を尖らせてそばつゆを味わう俺に正統派パリパリのエビの天ぷらを一尾差し出す冬賀は、貞操の真偽を尋ねられた意味を知るべく呆れた目で俺を見た。
「んでシュウ、なぁんでケツ?」
「ただの好奇心」
「いっくら俺がエロの酸いも甘いも噛み分けた年頃になったからって、ケツにチャレンジするほどギャンブルしてねーよ」
「別にテメェのエロ事情なんかどうでもいいわアホ。伸びるぞ、啜れ」
「あー? じゃあなんだって、あ、なるほど。へぇへぇ」
俺はお前のエロ事情じゃなくて、欲望に忠実な変態暴君の毒牙にかかってねぇか気にしてやっただけだ。
あんな性癖に異常をきたしそうなとんでもない行為は後輩とヤるもんじゃねぇ。
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
またのご利用をお待ちしています。
あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。
緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?!
・マッサージ師×客
・年下敬語攻め
・男前土木作業員受け
・ノリ軽め
※年齢順イメージ
九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮
【登場人物】
▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻
・マッサージ店の店長
・爽やかイケメン
・優しくて低めのセクシーボイス
・良識はある人
▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受
・土木作業員
・敏感体質
・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ
・性格も見た目も男前
【登場人物(第二弾の人たち)】
▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻
・マッサージ店の施術者のひとり。
・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。
・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。
・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。
▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受
・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』
・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。
・理性が強め。隠れコミュ障。
・無自覚ドM。乱れるときは乱れる
作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。
徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。
よろしくお願いいたします。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。