誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

文字の大きさ
23 / 454
第二話 先輩ワンコの沽券

07

しおりを挟む


 多少惜しみつつもケッ、と悪態を吐いてさっさと会社に戻りながら、……馬鹿みたいな内容だったのに、俺はなんとなく冬賀の話を思い出していた。


『ケツって素質あったら一発でハマるらしいーから気をつけろよ。後ろ使わねーとイケなくなんだって』

「いや、ねぇよ」


 会社のガラス扉をくぐりながら、脳内のリプレイへ即座に否定する。

 あるわけねぇだろ。
 俺が今までの人生で散々感じた前でイく経験が一回で塗り替えられるわけねぇし、そうそう中疼くわけもねぇ。なんだそのマジック。

 ないないと呆れつつ、そのままツカツカと歩いて階段を登った。

 腕時計を見ると、まだ昼飯のために会社を出てから三十分も経っていない。残り休憩時間は余裕で余っている。

 昨日のアレは、まぁ、行為だけをいうとだぜ? 行為だけを言うと、良いか悪いかでいうとよかったな。
 あれがあのクソ野郎じゃなくてそれこそ風俗のマッサージなら、気まぐれにまた行っても構わなかったかもしれない。

 指とかなら痛くねぇし。
 あのデカブツ相手だとマジで死にそうになったかんな。

 目を細めて口角をあげる癖があるからエロ顔だけど、どっちかというと甘めの顔をしている三初のシモが甘さ皆無だってのは、意味がわからん。

 ぶつぶつとくだらない考え事を真剣にしながら、オフィスに戻る一つ前の人気のない曲がり角を曲がり、青い人型マークのついた入り口に入る。

 なにが言いたいかって言うと、そのくらいには悪くねぇと思ってるということ。

 思ってるし、一回とはいえアイツは嫌がらせのようにねちっこく虐めてきやがったから、意識を失う前までのあの感覚を未だに覚えているってことだ。

 制御不能の他人の肉に体の奥まで深く穿たれ、熱いものを注がれる感覚。

 いつも表側から触れているモノに裏側から他人が好き勝手触れてくる感覚なんて、あんな行為以外では早々味わわない。
 思い返すとピク、となんとなく指先が跳ねる。

 まぁでも、ありえねぇだろ。
 いくら学生時代にいろいろとくだらないことがあって自覚があるくらいには気持ちいいことに弱いとはいえ、この俺がまさか、ケツに目覚めるなんて。


「あるわけねぇ」


 言いながら、バタン、とトイレの個室に入りドアと鍵をしっかりとしめる。

 カチャカチャとベルトを外してモノを触れるくらいに前をくつろげてから、俺はストン、と便座に座った。

 いや、別に気にしてはねぇよ?
 あるわけねぇけど、俺の性生活のためには一刻も早い疑惑の払拭が必要なんだ。わかるだろ。

 普段なら、職場のトイレでこんなことをするなんて、絶対に思わない。

 自分で思っているより俺は焦っているのかもしれないが、今の俺はその焦燥を認めたくない。男の沽券が関わってんだぞ。職場とか昼休みとかどうでもいいわ。

 一応このトイレはオフィスから遠くほとんど人が来ないので、大丈夫なはず。

 ようはいつも通りにオナってイッて、満足すればいいんだよな?
 簡単じゃねぇか。

 俺は左手でくつろげた前から覗くボクサーパンツのゴムに指をかけ、クッと最低限引っ張りくたりと萎えたモノを取り出した。

 綿百パーセントの下着はお気に入りでありこだわりの逸品だ。
 別に防御力は上がらないし現実逃避はしてない。

 スマホを右手でカツカツと操作し、ダウンロードしてあったお気に入りのAVを、そっとミュートで再生する。

 ん? いやオフィスものじゃねぇよ。
 ナースものだ。

 端的に言うと、ちょっと天然なナースが患者のあれをあれしてくれるやつ。
 この女優が好きで他のもいくつか落としてあるから、オカズには困らねぇ。言っておくが会社でするのは初めてだぞ。




しおりを挟む
感想 137

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

またのご利用をお待ちしています。

あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。 緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?! ・マッサージ師×客 ・年下敬語攻め ・男前土木作業員受け ・ノリ軽め ※年齢順イメージ 九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮 【登場人物】 ▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻 ・マッサージ店の店長 ・爽やかイケメン ・優しくて低めのセクシーボイス ・良識はある人 ▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受 ・土木作業員 ・敏感体質 ・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ ・性格も見た目も男前 【登場人物(第二弾の人たち)】 ▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻 ・マッサージ店の施術者のひとり。 ・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。 ・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。 ・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。 ▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受 ・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』 ・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。 ・理性が強め。隠れコミュ障。 ・無自覚ドM。乱れるときは乱れる 作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。 徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。 よろしくお願いいたします。

今度こそ、どんな診療が俺を 待っているのか

相馬昴
BL
強靭な肉体を持つ男・相馬昴は、診療台の上で運命に翻弄されていく。 相手は、年下の執着攻め——そして、彼一人では終わらない。 ガチムチ受け×年下×複数攻めという禁断の関係が、徐々に相馬の本能を暴いていく。 雄の香りと快楽に塗れながら、男たちの欲望の的となる彼の身体。 その結末は、甘美な支配か、それとも—— 背徳的な医師×患者、欲と心理が交錯する濃密BL長編! https://ci-en.dlsite.com/creator/30033/article/1422322

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件

ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。 せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。 クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom × (自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。 『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。 (全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます) https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390 サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。 同人誌版と同じ表紙に差し替えました。 表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!

先輩、可愛がってください

ゆもたに
BL
棒アイスを頬張ってる先輩を見て、「あー……ち◯ぽぶち込みてぇ」とつい言ってしまった天然な後輩の話

処理中です...