誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

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第三話 概ね普通の先輩後輩

01



 自信満々の三初の予想通り、新商品のピーアール企画会議で俺たちの企画が採用。

 それに伴い俺と三初はこの二ヶ月、日々販売開始日に向けて、準備に追われていた。

 ……正確には、俺オンリーだが。

 開発部ができるわけねぇふざけるなクソがアホがやってやるとキレながら作った新商品。つまるところその売り込み準備が、宣伝企画の仕事である。

 今回の商品は一品で栄養価が高くオーガニックな食材を使用した、リゾット、パスタのツータイプあるスーパーインスタント食だ。

 環境にも体にも優しい。
 臨床試験でも効果を出した、置き換えダイエット食としてもファスティング明けのデトックスにも日常の食事としてもおすすめの一品。

 健康食品の課題、味も見事クリアした抜群のうまさだ。濃厚なんだよ。

 さらにガッツリ量があるぜ。
 ちゃんと一食ぶんの重みがあった。普通に食いごたえがある。

 昨今の男も肉体改造に積極的になりつつある風潮を加味して、男でも楽しめるような味と目的のバリエを揃えてある。

 基本はバランスで、他に筋トレ、アンチエイジング、脂質カット、腸活など、目的別の付加価値がいろいろある。

 もともとは一緒くたにスーパーフードを作っていたが「そもそも目的別に特化したバリエを増やすべき」ってのが、三初の案だ。

 しかも美味いからな。

 そのスーパー食品をどう売り出すか、っていうのが宣伝企画課の仕事だが……手の空いてる全員で企画を持ち寄った結果、選ばれたのが俺たちの企画だったわけだ。

 ちなみに唯一の欠点は、割高。
 一食三百円代なので、普段食にするインスタント食品としては少々高級である。カップ麺なら百円以下だぜ?

 俺は買わない。
 俺なら一つ三百円のプリンを買う。ケーキ屋のちゃんとうまいやつ。

 なのでまずは、通販サイトで販売。

 それがインフルエンサーの起用により軌道に乗ったので、今回満を持してお高めなマーケットで先行販売した。

 ウケが良ければ一般層も狙い、低コスト化したお手軽バージョンを売り出してみる算段である。

 高級スーパーの客層データとしては、やはり金の使い道がある程度自由な独身客が多く、次点で富裕層の奥様方といった具合。

 意外と自分の店をもつ料理人なんかも多いみたいだ。
 産地直送のオーガニック野菜なんかを扱っているからだろう。

 俺は今まで企画でこういう少しいいスーパーに手を出したことはなく、庶民派な企画やちょっとしたコラボなんかに携わってきたから、四苦八苦している。

 パッケージやらなんやら、デザインと開発と企画と頭を撚ったり。

 市場に通ってみたり慣れた先輩に意見を求めたりハウツーを学んだりと、やることが多くて大変だ。

 なにかと馬鹿みたいに真剣に取り組んでしまうところが少しあるので、俺は日々疲労とストレスとお手手繋いで仲良く仕事をする毎日。

 それに引き換え、三初は普段となにも変わらずリラックスモードだった。

 昨日なんてデスクで戦艦大和のプラモを組み立てていたから、もう脳から人種が違うのだろう。

 ちなみに前々から、暇になると作ったプラモを部内のデスクに無差別に飾り付けていくというアホみたいな遊びをする。戦艦大和は部長のデスクに鎮座していた。

 ……そのくせ仕事頼んだらもうできてるか、当日中に仕上げてくるんだよなぁ……。

 仕事はいかにして片手間に楽して終わらせるか、というのが三初の本分である。

 仕事は私情の二の次三の次。
 バリバリと積極的に余計な仕事はしないが、自分の担当作業は効率的に捌く。

 やりたくないことはしないし、仕事のためになにかを犠牲には絶対しない。遊びたければオフィスだろうが遊ぶ。

 それだと「なぜもっとできるのにここまでしかしないのか」「なぜ時間が空いているのに他の人を手助けしないのか」というお偉方の苦情が来たりする。

 もちろん、俺を通して。
 教育係って伝言係じゃねぇぞ。

 俺は「普通のやつは二日かかるんで、むしろ多めに進めていますよ」「自分の仕事全部終わってるんでいいんじゃないでしょうか」と軽く流す。

 そうすると当然、要領の悪い俺は不向きな対応で余計にストレスに追われるのだ。

 まぁ……だからというわけじゃないが。

 勝負に負けてから三初のオモチャである俺は、ストレスフリーなご主人サマに、溜まったストレスを殴りつけることにしていた。




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