誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

文字の大きさ
42 / 454
第三話 概ね普通の先輩後輩

07



 二人で並び立って珍しく笑いながら、モール内を歩く。
 初めて二人きりで出かけたが、プライベートな距離感でも緊張や違和感はなかった。


「御割先輩んちってコーヒーないですよね。俺コーヒー派なんで買いに行きましょう」

「なんでお前の好みにあわせて常備しねぇとダメなんだよアホ。あれ苦いじゃねぇか」

「普通の人は飯時にココアなしなんで」

「俺ん家だよな?」


 そんな道中、通りすがったコーヒーショップのテナントに興味を示した三初が、行きますよと当然のように俺の腕をぐっと掴む。

 わかりきっていたことだが拒否権なく連れて行かれ、俺は文句を言いつつも渋々それに付き合った。

 そういえばコイツ、チョコエッグのチョコ全部俺に押しつけてきた日もあったな……。

 寒い中三初の財布抱えて買いに行った俺に対して労りだとかなんとか言ってたけど、自分がいらないだけだろあれ。

 甘いもん嫌いなのか?
 いや、それはねぇか。チョコエッグもプリンシェイクも甘ったるいしな。

 まぁ、よくわからない思考と行動はいつものことだ。
 俺はこのあと特に予定もなかったので、大人しく買い物について行くことにした。

 腕を引く三初の口角が妙に上向きで、こんな珍しい顔を見れるなら、悪くないと思ったからかもしれない。




 コーヒーショップなんで当然だが、店内にはコーヒーの匂いが濃密に漂っていた。

 あの独特の苦味のある香りはどうにも苦手なのだが、コーヒーのお供にといろいろなお菓子がおいてあるのは見ていて楽しい。

 買う物が決まっているのか迷いなく進んでいく三初に対して、俺は商品が物珍しくて足を止めてしまう。

 そうしていると休日の人混みに流され、腕を掴んでいた手がいつの間にやら離されていた。

 土日のショッピングモールは人が多いから仕方ねぇ。向こうも買い物が終わったら連絡してくるだろうから、それまで好きにしてるか。

 ちょっと気になった拳大の巨大マシュマロを手に人混みと商品をかき分けて、覚束無い足取りで店内をうろつく。次の休みに焼いて食べる魂胆だ。

 大方店内を見終わった頃、レジ前で豆を選んでいる三初が見えた。

 女の店員さんや少し離れた場所にいる女子高生たちが、チラチラキャッキャとしているので見つけやすい。

 アイツはわかりやすく美形だからな。
 万人受けする、ってやつだ。中身知ったらヤツら全員卒倒するだろうけど。

 俺は人の群れの中から手を上げて振り、三初に居場所を知らせようと名前を呼ぶ。


「みはじっ」

「──修介センパイ?」

「あ?」


 そんな時だ。
 背後から誰かに声をかけられたのは。

 急に自分の名前を呼ばれて誰なんだと反射的に振り向くと、そこにいたのは俺よりいくらか小さい見覚えのある男が一人いた。

 相変わらず派手な金髪に、多少は大人びたアーモンドアイのアイドル顔。

 細っこい手足にジャラジャラとアクセサリーをつけて、ダボついた謎センスなシャツにサルエルパンツのコイツは、比較的かわいがっていた大学時代の後輩。


「お前……中都?」

「ピンポーンっ! 修介センパイ七年ぶりっすねぇ! 八坂やさか 中都ちゅうと でっす!」


 名前を当てられて大げさにコミカルな挙動で笑った中都は、語尾に星でもつきそうな声音で七年ぶりの再会を喜んだ。




感想 137

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

またのご利用をお待ちしています。

あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。 緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?! ・マッサージ師×客 ・年下敬語攻め ・男前土木作業員受け ・ノリ軽め ※年齢順イメージ 九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮 【登場人物】 ▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻 ・マッサージ店の店長 ・爽やかイケメン ・優しくて低めのセクシーボイス ・良識はある人 ▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受 ・土木作業員 ・敏感体質 ・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ ・性格も見た目も男前 【登場人物(第二弾の人たち)】 ▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻 ・マッサージ店の施術者のひとり。 ・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。 ・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。 ・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。 ▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受 ・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』 ・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。 ・理性が強め。隠れコミュ障。 ・無自覚ドM。乱れるときは乱れる 作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。 徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。 よろしくお願いいたします。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。