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第三話 概ね普通の先輩後輩
13(side三初)
◇ ◇ ◇
人目を気にする意外とシャイな先輩にぶつくさと文句を言われつつ、行きつけの小料理屋に先輩を連れて行き、そこで食事をすませた。
なんか和食の気分だったからね。
先輩も結構和食好きだし。まー文句は言われないだろうってことで。あの人、きな粉と黒蜜好きだしね。
フッ、笑えるよなぁ。あの顔でドが付く甘党。血糖値やばいでしょ。
だから趣味と甘味巡りの帳尻を兼ねて筋トレを欠かさないんだけど、部長曰く、三十過ぎたら腹に来るらしい。
ンー……肥え太ってブタになったら、飼ってあげよう。
ククク、来年が若干楽しみになった気がする。もちろんジョークだ。
首輪は王道で真っ赤なやつかねぇ。いいや、ガチの家畜用のハーネスにしようか。どっちにしろ似合わねぇな。そこそこ愉快。
そんな愉快な先輩に、たらふく餌を与えたあと。
不意に思いついたままに帰り道の変更を申し立て、適当になだめすかして目的地まで引き連れる。ん? ほら、道草もたらふく食わせないと。
俺が手を引くとこれ以上ないくらい嫌そうにして、ヘタレな先輩はキョロキョロあたりを気にし始める。
周りばっかり見て、つまんねぇの。
周囲の視線とかいう指に残ったポテトの塩のようなものなんて、舐めくさっている俺だ。
ズボラでデリカシーなしのくせに変なところで繊細なめんどくさい先輩がそれに気を取られている隙を見て、さっさと目的地へ連行した。
先輩はフロントに入るとポカンとして、ようやくなにかおかしいと気づいたらしい。
でもそれってあれだろ。時既に遅し。
手遅れになってから「なぁ、おい」とコソコソ俺の服の袖を引く、ドーベルマンみたいな顔つきの中身は豆柴な駄犬先輩を無視して、どんどん部屋に進んでいく。
適当に選んだそこそこグレードの部屋に先輩を連れ込み、俺はあくびを噛み殺してジャケットを脱いだ。さ、ヤるか。
俺としてはいかな鈍感アホバカ先輩でも、わかるだろうって感じ。
けれど部屋を入ってすぐのダブルベッドを呆然と見つめる先輩は、上着を脱ぐこともなく棒立ちのまま、光のない目でボソリと呟く。
「……なんで俺はこんなとこいんだろう」
ふっ、こんなとこって──ラブホだろ。
見てわかるでしょうに。
「要望をわかりやすく言えと言う先輩の希望を叶えたからですけど」
「言ったけど言われたら拒否権ナシってのはおかしいだろォがッ」
あらら。なに一生懸命オツムの悲惨さを丸出しにした発言をしてるんだか。
グルル、と飼い主に無謀にも唸る駄犬は、不満たらたらで異議申し立てを始める。懲りないねぇ、あんた。
始まりは俺の衝動だけどもう何度も抱いてるし、自分だって楽しんでるくせに、いつまでたってもいっぺん噛みつかなきゃ気がすまないらしい。
青筋を浮かべて眼光鋭く睨んでくる黒毛のワンコは、子どもなら泣いて逃げ出す形相をしている。
慣れた俺にとってはじゃれつく子犬でしかない。くくく、構ってちゃんだかんね。
この先輩をつい構ってしまう衝動に、きっかけなんてのはないこともない。でも、それがなくてもこういうところが結構、お気に入りなのだ。
見ず知らずの妙なポメラニアンに、気安く触られるのは気に食わねぇくらいにはな。
さっきの話だよ。
だからこそ、こう、さ。俺の知らない先輩とか、最高につまらないわけでね。
つまらないモノを見ると、反射で足が出てしまった。すり潰したくなる。この無警戒な犬に誰が飼い主か教え込まないと気がすまないって、衝動。
機嫌悪くはなかったけど、面白くはなかったよなぁ……これってどういうロジックかねぇ。先輩をいじくってたらどうでも良くなったけどさ。
アニマルセラピーだわ。
豆柴効果? 若干うるさい。
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