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第四話 後輩たちの言い分
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ええと、なんだ。
それってつまりどういうことだ?
俺は男だが、三初はゲイ(暫定)だからまぁ男でもいける。欲求不満だから取り敢えず俺を抱ける。昨日も抱かれたし。
そして俺の短所を全く気にしていない。
顔もたぶん気にしていない。言われたのは拗ね顔とキレ顔と泣き顔だけだが。
「いやでもおかしいだろ。あっちは大丈夫でも俺は性格に不満しか、……待てよ?」
しかしさっき、俺があんまり人を気遣ったりするのがうまくないってことを指摘した時、三初は興味なさそうにしていた。
それに過去に俺が気遣いモードになった時のことを馬鹿にしたってことは、どうにかしようとモダついていた俺の本心に、気づいていたということになる。
そしてそれを引き合いに、三初は遠まわしに〝苦手だと知っているから無理をしなくてもいい〟と言ってきた。
なんというかそれは、その、まあ……そこそこ、嬉しかった。
言い方が下手くそな上に優しくするのが小っ恥ずかしい質で、元々の性格が大雑把なのでデリカシーがない。
だから普段、俺なりに考えて言ったり動いたりしてることは、いつも相手に気づいてもらえなかったから。
別に気づかれたくてしてるわけじゃない。見返りも特に求めていないし、むしろ指摘されると恥ずかしい。勝手にしていることだから、気にしていない。
気にしていないが、気づかれるというのはなかなか胸にクるもんだ。
「……まぁ、……うん」
なんとなく、自分の周囲に小ぶりの花が一つ二つ、ホワホワ~と飛んだ気がした。
今日歩きながら考えたこと。
三初は悪い子だが悪いやつではない、ということも加味すると、性格にも不満ばかりではないかもしれない。
こうやって二人でどこかへ行ったり食事をしたりすること、嫌ってわけじゃねぇからな。
……と、そこまで考えて、俺はクリ、と小首を傾げる。
「いやいや、なんで俺はヒロイン的思考でものを考えてんだ?」
そうだよ。なんで三初と俺の相性について真剣に可能性を吟味してんだよ。
三初と俺で少女漫画展開が成り立つかもしれない可能性を発掘しちまわなくていいだろうが。使いどころねぇんだし。
付き合うとか付き合わないとか、そもそも野球するかしねぇかっつー話だろ?
それに三初の言う相性が悪くても好きって相手チーム、俺じゃねぇし……。
……だいたい、そんな思考回路が合わないめんどくさいチームの相手なんか悩むくらいならさっさとやめちまえばいいのによ。
やめられない止まらないはかっぱかにせんだけにしとけ。
それでも好きとか、説得する根性がねぇと続かねぇぞ。先輩の助言だ。
草野球チームなんざ地域に一つはあるだろうが。選り取りみどりだっての。
「あぁクソ。まず俺にあんな顔であんなこと言うなよ、クソが……」
グルグルと謎の思考に囚われる俺の頬は、それはもう真っ赤に染まっていた。
ただ触られて、顔を近づけられて、俺じゃない誰かに向けてのそれらしいことを言われただけなのに。
はっ、なんでこんな暑いんだよ今日。
暖房効き過ぎだ、このモール。
(あー……あっちィ……汗出てきたし、なんかもう世界終われ……)
って、んん?
それにしてもおかしいよな。一応夏はもう終わってるってのに汗ばむほど体温上がるはずなんてない。
この店に入ってから、まだ十分経ったかどうかといった時間しか経っていない。俺が悩みだしてからなら、三分くらいだ。
なのにこんなに暑いのはおかしい。
俺はなにか心当たりがないかを、フワフワと考える。
ええと、今日いつもと違うことと言えば三初がいることだな。
三初がいてなにがあったかってぇと、朝からロールタワーが建設されて、それで──
「……ハッ!」
(まさか、あのコーヒーか……!?)
名探偵の推理パートじみた真剣な表情で思索を巡らせた俺は、原因に思い至り、タラリと頬に冷や汗を流した。
そうだ。
俺は普段コーヒーを飲まない。
あのコーヒーは三初の飲みかけだったが、アイツが飲んでいるのを目視したわけじゃなかった。
あれを飲ませるためだと考えると、ロールタワーのてっぺんにツナわさびが配置されていたのも頷ける。
ツナわさびでツーンとした俺が、近くの水分を求めてあまり味わいたくない苦手なコーヒーを一気する可能性はかなり高いだろう。
全力の嫌がらせだが、三初なら嫌がらせでもそこまで計算する。ゼッテェする。
つまり俺は、一服盛られたのだ。
理由と効能はわかんねぇけど。
「……マジか……」
ハァ、と熱い溜息を吐き出し、額に手を当てた。問い詰めるべきだろうが、少し落ち込ませてくれ。
やっぱり俺に起こる不幸は全て、三初のせいだ……!
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