誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

文字の大きさ
98 / 454
第四話 後輩たちの言い分

35(side三初)



「はーあ」


 深いため息を吐く。
 先輩に帰れと追い出されたあと、帰る気なんてさらさらない俺は自分の部屋に戻って車を出し、必要な物をいろいろと買い漁っていた。

 あの意地っ張りめ。顔面蒼白で明らかに悪化してんのになにが大丈夫なんだか。大丈夫の意味調べてから発言しろよって感じ。

 連日企画で疲れ果てていたところ、やっと肩の荷が降りた。
 そこを俺が散々にしてやったものだから、いろいろと溜まっていたんだと思う。

 先輩には迂闊が原因って言ったけどね。それも本当。あの人は自分の世話が下手くそだ。馬鹿だからね。

 でも前提として俺に原因があると言えばあるのに、申し訳なさそうに布団に潜り、俺を見ていた先輩の目を思い出す。

 自分が弱るほど人を気遣えるなんて気質は、なかなかないものだ。

 だからこそああも強がられると、俺心がくすぐられてしまう。

 ベコベコに凹ませて助けてと縋り付かせないと、気がすまない。虐めて泣かせて跪かせて、俺のものにしたいから。

 けれどたまに──デロッデロに甘やかしてやりたくもなる。

 ま、今日はたまたまそういう気分。
 たまたま。マジで感謝してほしいわ。

 じゃなきゃこのまま帰って自己研鑽やら作り置きやら映画鑑賞に読書に勉強にとプライベート満喫してるかんね。

 いつも行っているスーパーで買い物をしながら、自分の優しさに感服する。

 薬と熱さまシート、スポーツドリンク。果物とゼリー。あといろいろ。食事は余ってる材料でなんとかなるからいいか。

 よそ様の台所事情を把握してるくらい飯作ってやってるってのも、どうかねぇ。アレは理由、気づかないものか。

 鈍感なアホ先輩が欠片も気づかないのに腕を奮うって、俺って健気な尽くし系でしょ。

 優しすぎて涙がでるわ。
 八坂なんかより断然お買い得な、カワイイ後輩だと思うなぁ。


『……センパイ、昔俺が酔ったセンパイにオネダリしたこと、覚えてくれちゃったりしちゃいます?』

『あ? あー……うん。覚えてるぜ』


「……あームカツク。なにもないってアホの言うことは信用ならねーわ……」


 さっさとレジを終わらせると、気に食わない光景を思い出してしまい、大股で歩く。

 今すぐ買い物袋、アイツの顔面にフルスイングしてー。

 オネダリとか、脅迫オネダリしか聞いてもらったことねぇしな。まあ拒否されたって、俺は無理矢理聞かせるんだけども。

 思い出すたびに苛立つ。
 事務所の中での光景だ。

 あの時、あのまま先輩が俺に気づかなかったら、ずっと膝だっこでイチャついてただろうな。

 恋人じゃない俺に止める権利はないからいいんだけどさ。いいんだけど、……ね?


「その話が問題かな」


 ポツリ、呟く。
 学生時代、先輩が八坂の部屋にお呼ばれされたような話だ。

 二人の会話的に、取り敢えずキスと同衾の前科があるらしい。

 セックスはしてないにしても、もし先輩が改めて八坂の部屋に行くなら、似たようなことをするだろう。

 されるがままになでられていた先輩。俺がそうしたらキレるだろうが。身の程知らずにも。


「アイツさ。なにが俺のほうがわかってる、なんだか。熱上がってんの気づかなかったくせに。あのポメいつか一発かまそ」


 握ったハンドルを指先でトントンと叩く。
 わかってるんだけどさ。

 あんまなにも気にしないタイプである俺が、それだけでこんな幼稚な悪態を吐くのは、嫉妬だって。




感想 137

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

またのご利用をお待ちしています。

あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。 緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?! ・マッサージ師×客 ・年下敬語攻め ・男前土木作業員受け ・ノリ軽め ※年齢順イメージ 九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮 【登場人物】 ▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻 ・マッサージ店の店長 ・爽やかイケメン ・優しくて低めのセクシーボイス ・良識はある人 ▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受 ・土木作業員 ・敏感体質 ・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ ・性格も見た目も男前 【登場人物(第二弾の人たち)】 ▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻 ・マッサージ店の施術者のひとり。 ・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。 ・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。 ・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。 ▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受 ・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』 ・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。 ・理性が強め。隠れコミュ障。 ・無自覚ドM。乱れるときは乱れる 作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。 徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。 よろしくお願いいたします。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。