誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

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第四話 後輩たちの言い分

36(side三初)



 ま……ちょっとくらい、意識してくれたのかと思ったんだよ。

 なのに先輩は俺だけは突っぱねる。
 俺が触ると手を叩いたのに、八坂は抱きしめていた。二人で食事も行ったんでしょ?

 八坂がああ言うくらいには、俺とのことも話したんだ。

 俺の言うことはちっとも聞きやしねーのに、あの駄犬。マジに苦しい時は頼ってもくれない。後輩だからって、遠ざける。

 俺のやることは全部裏目に出るのだ。

 でも八坂のことは特別かわいがってんのね。それはなんで? ああいうのがタイプ? 不愉快すぎるんだけど? 

 あんなのアンタとは合わないでしょ。
 断言してもいい。八坂と先輩の関係なんか、せいぜい馬鹿犬とアホ飼い主だ。

 けどね。アンタは犬なんだよ。
 飼われる側だろ? そうに決まってる。

 まったくアンタに餌をやってるのが誰だか、てんでわかってないよな。
 だってさ、アイツに仕事の手助けができるわけないだろ。

 未経験のジャンルを任されたアンタの気の強さの裏。仕事はキッチリするから、必死だった。勉強も、努力も。

 付随するプレッシャーやらのアレやソレって、誰がフォローしたと思ってるわけだか。素敵な後輩だ。

 こうやって追い出されたのに手土産持って帰ってくる後輩だって、俺だけでしょ?

 じゃ、俺にしろよ。アンタを飼ってやれる後輩なんか俺だけだろうに。
 先輩の昔のことは知らないけど、今のことはそれこそ最中の顔まで知ってる。

 性感帯も、ね。
 やっぱ俺しかないわ。

 脳内クレーム祭りが止まらない。
 休日の混雑した道をスイスイと抜け、先輩の住むマンションの駐車場の、来客用ブースに停める。

 先輩は車通勤なのに運動がてら電車で行くことが多々あるが、俺はほぼ車。たまに電車。そこは気まぐれ。だからたまーにここに停めることもあるので慣れたものだ。

 バンッ、とドアを閉める。
 荷物を持って、先輩の部屋を目指した。


「ここにくんのも何度目かね……」


 すぐに回数が出てこないくらいにはここへ来ている自分に、内心呆れる。

 ──……ま、本当はさ。
 貴重な休日を頻繁に誰かに使ってやるほど、俺ってマメじゃないんだけどなぁ。

 料理だってできるけど、正直めんどくさいし、ね。男の風呂の世話も? 当然。んでセミダブルでも一つのベッドで寝るのがまず嫌い。邪魔。

 それを可能にしているのはひとえに、相手があの先輩だからだ。

 先輩と違って俺は世話焼きじゃない。人なんかどうでもいい。誰しも周りは都合のいい時だけ寄ってくる人が大多数だよな。

 それもわかる、から別に?
 なんとも思わない。俺に益を求めて得られなければ手のひら返す人種は、特に。

 割とクズいよ。俺。
 短気だし、すぐ足が出る。

 顔がイイと誰かしら寄ってくるけど、中身がこうと知ると大抵離れていく。
 観賞用。よく言われる。

 頭がよかったりある程度なんでもこなせる能力があると、〝人よりできる〟を理由になんでも押し付けられる。多くを。

 なのにできる人は無償の愛を無尽蔵に振りまかなければ、事実を述べるだけで嫌味、マウント、傲慢、散々な言われようだ。

 弱い人は擁護される。
 強い人は消耗される。

 全てに期待もされるわけで。
 勝手な期待は、失望を付随してるんだよね。ファッキン世間、キレる若者ですよ。


「……あー……めんどくせぇな」


 ポーンとエレベーターがやってきて、それに乗り込む。誰もいなかったものだから、疲労たっぷりの呟きをツイートするのだ。


『お前はなんでもできても、なんでもしなくてもいい。無傷なフリして笑うな』

「……いちいち、無自覚に見抜くよね」


 これはラブホで言われたこと。
 突拍子はないけど、あれは当たっていた。実はだけどさ。

 先輩は……俺に期待しないんだよ。

 前科があるからね。
 だから、アンタがそうだと知ってるって言ったわけ。結構昔の話だ。

 たまーに、先輩は先輩らしい。
 俺を後輩として扱う。守るべきもの、教育すべきもの、そういうの。

 仕事を覚えて先輩より早く正確にこなしても、それは変わらない。
 自分よりできる後輩が目障りにならないものかね。相変わらず怒るし、相変わらず後輩扱い。

 だからいつの間にか思ったんだよ。
 先輩に、俺は期待されたいってさ。

 頼られたいし構われたい。後輩だけど、後輩の枠から出たい。

 その枠の外がなにかは最近気づいたけど、三年間は取り敢えずずっと、先輩が俺を見るように絡んでいた。



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