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第四話 後輩たちの言い分
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そもそも俺は惚れた腫れたが苦手だ。
彼女がいたことは何度かあるが、不器用で口下手で大雑把な俺の交際は、いつも長続きしなかった。
焦れた彼女が「好きって言ってよ」と強請っても、そう言われると余計に口にできず、素っ気なく「言わなくてもわかるだろ」と言ってしまう。
夢だろうがなんだろうが、俺はそういうのが全面的に苦手なのだ。
三初について素直なことが言えず、バツが悪くなって黙りこくる。
するとワッフルはため息を吐き、呆れた目で俺を睨んだ。目はどこについてるのかわかんねぇけど。
「そうじゃなくてさ。こーゆー話ってことは、あんた、愉快な思考になってるじゃないですか」
「は?」
「なんで俺を好きだと言えない理由で、恋愛に行き着いてるんですかねぇ……」
「!?」
ビキッ! と全身が石のように硬くなり、俺は溢れんばかりに目を見開いて、こんがりと焼けたワッフルを凝視した。
は? 恋愛思考? 誰が? 俺が? 誰に? 三初に? なんで? 好きだから? ライクだろ? ライクの話だろ? いやいやいやいや、誰がラブの話をしたんだよ。馬鹿だろ。……俺だったッ!
脳内思考の回転速度がドンドン上がり結論が出ると熱もあってプシュウ、と蒸気が出そうなほど混乱した俺は、羞恥と複雑な心境に至り、みるみるうちに顔を真っ赤に染めてしまった。
三初はそんな俺をニヤニヤと眺めて、妙にこんがりと焼きたてホヤホヤなワッフルになっている。仕上がり最高かよ。なんでだよ。
いや、まだだ。ちょっと待て。
俺が恋愛的な好きを伝えるのが苦手だって話は意味なんてなく、たまたまだった。別にお前に対してそうとか、これっぽっちも思ってねぇ。うん。普通の好きだ。
「なんで? 三年先輩後輩してて、三ヶ月はプライベートも頻繁に俺と一緒だったのに? 嫌なの?」
嫌とか以前に、おかしいだろ!
そりゃあ最近距離が縮まって、一緒に過ごしたり出かけたりすることが多くなってきてはいるだとか。
お前のことが少しはわかってきて、結構イイヤツじゃねぇかと見直してから気に入ってるだとか。
そんで実は不安と緊張があった初チャレンジのデカい仕事をイイ感じにサポートされたからって……コロッと恋愛発展するか?
「や、一個で十分なきっかけがそんだけあって、しないほうがおかしいでしょうに。少女漫画だったら二桁はヒロインがトゥンクしてるレベルですし」
俺はヒロインじゃねぇぞ。
って、そうだ。俺は男で三初も男じゃねぇか。ジャンル違いだろ。
別にバイの三初に対して偏見なんざねぇけどよ。一応抱かれてるし。
でも元々ノンケで交際歴複数回ありの非童貞な俺が、わざわざムカつく男の後輩にラブしねぇだろ? 論破だぜ。
「ハッ。非童貞ノンケのくせに非処女のチョロ男がなに言ってんだか……」
非処女言うな。チョロくもねぇ。
セックスは気持ちとか一番ボヤけるもんだかんな。男とヤレるからってイコール恋愛できるかどうかは別だろうが。
てかそもそも俺のケツ掘んのお前だけだぞ。お前がヤらなけりゃ俺は普通にあんなセックスに未練なんざねぇんだよ。
「ふぅん? じゃ、俺が八坂に惚れてアイツ抱いても興味なし?」
え。
「真と俺って幼なじみの腐れ縁ですよねぇ。セックスぐらいしてるかも、ね。俺の好きな人、そっちかも」
そ、そりゃ、まぁ……。
でも別に、俺はなんにも。
「あーあ。俺が他に恋人作ったら、もうこんなふうに看病しに来たり、先輩に添い寝してあげたりは、絶対しねぇだろーなー」
「おいっ! なんか、そ、それは嫌だ」
「お。喋った」
ふよふよ。そよそよ。
三初の誘導尋問により、甘くてフワフワな甘味天国で、俺はとびきり苦い気分に陥ってしまった。あんまりだ。鬼畜ワッフルめ。どう足掻いても逃がさねぇ気か。
「ぐっ…………わかった、わかった。そういうのは嫌なくらいには、俺は確かに三初を気に入ってる」
「そりゃどーも」
「でもイコール惚れてるってことじゃねェ」
「そ?」
クソッ、余裕綽々対応をやめやがれッ!
コロコロと転がって暴れたかったが、そんな体力もないし、三初の腕でホールドされているので動けなかった。なにもかもままならない。悶絶ぐらい好きにさせろよっ!
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