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第四話 後輩たちの言い分
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そうしていざ性欲処理方法の攻防戦を繰り広げようかという時だ。
「あ?」
「ん?」
突然、ピンポーンと玄関の呼び鈴が鳴った。嘘だろオイ、最悪だ。
一気に萎えた俺は布団の中でゲンナリと肩を落とし、悔しさから仏頂面になりモソモソと動き出す。
なにがそんなに嫌なのかって、家主の俺は今すぐ湿ったパンツを履き直して、インターホンの相手を迎えなければならないのだ。
それはつまりスッキリするのを諦めてこの悶々とした気分のまま、不完全燃焼な体を鎮火させるということである。半萎えから完萎えへの強制移行かよ。
行為の残滓を拭ったあと、熱を持った頬を擦って叩き情欲の香りを顔から消す。
ピンポーンピンポーンとやけにうるさいインターホンに、ひっそりと舌打ちをする。
機嫌がいいわけねぇだろ。
バサッと布団を避けて身型を整えながら、俺は履き古したスウェットがゆるゆるなことにホッと安堵した。
ピッタリ系だったら丸バレだろが。宅配便かセールスかなんだか知らねぇけど、無駄話は一切聞かねぇ。速やかに土に還す。
「っというか待て、お前が出ろよ三初ェ……!」
「えーだって家主じゃないですし。それに先輩がフル勃起で人目につくほうが俺は愉快でしょ?」
「俺は愉快じゃねぇんだよ血管にヘドロでも流れてんのかこの暗黒思考野郎」
若干そーっと動いている俺の後ろからついてくる三初は、代わりに出るという案をあっさり拒否した。
コイツにとって先輩とは、助けるものではなく辱めるものらしい。本当に血の色が黒いとしか思えねぇ。
ブツブツと文句を言いながら玄関にたどり着き、ガチャ、とドアを開く。取り敢えず呼び鈴連打をやめろ。
「あっセンパイ生きてたんすかっ!?」
「勝手に殺すなあとインターホンを連打すんな中都ォ!」
「いだッぐぅんあざぁっす!」
開いたドアから覗いた金髪頭をゴンッ! と殴り、俺は鼻を鳴らして来訪者──中都を睨みつけた。
どうせこんなことだろうと思ったのだ。
ため息を吐いて、呆れる。
実は中都の家、俺の家からあんまり離れてないんだよな。
生活圏が逆方向なだけで、距離的には一駅ぐらいだ。
殴られた頭を押さえた中都は、涙目で「だって先輩悪魔に取り憑かれたと思ってぇ~っ!」とキャンキャン訴えた。なるほど、一応心配してくれたらしい。
そう言われっと悪い気がすんな……。
謝罪の意味を込めて頭をなでてやると、コロッと復活して飛びついてきた。本当に犬のような男である。
「やっほ~いお触りタイム希望~! ってあれ? センパイなんかエロオーラ……じゃねぇや。なんか汗かいてるっすね。顔も若干赤いし、もしやまだ熱あるんすか?」
「ぐっ、いやもうねぇし完治してるぜ。舐めんなチクショウ。まぁとりあえず部屋入れ。お前うるせぇからよ」
「うぃっす!」
飛びかかられて抱きとめた中都に少し痛いところを突かれ、適当に誤魔化してからドアを大きく開く。
危ねぇ。早く風呂に入っていろいろと証拠隠滅しないと、これと見るや突っ走る中都のことだからあれこれ突っ込まれかねない。
「おじゃましま~……。……」
「? おう。はよ入れ」
しかしニコーッと笑って機嫌よくスキップ混じりに玄関に入った中都が、急に無言で足を止めた。
俺は一瞬キョトンとして首を傾げる。
んだよ。セリフも体も微妙なとこで止まってんな。
だが首を傾げつつバタンとドアを閉じて振り向いた俺は、そこで静かに壁にもたれかかっていたポメの天敵の存在を、ようやく思い出した。
無言でフッ、と鼻で笑い、中都にゆるりと笑みを見せつける天敵──三初。
余裕綽々の猫に対し、ワナワナと震え見る見るうちに怒髪天をつくポメラニアン。
「…………ぬぁぁあぁあんでお前がパイセンの小屋にいるんだよ不法侵入常習犯の泥棒猫野郎ぉぉぉぉっ!?」
「ハッ。二連泊。かつ添い寝済み。で? なんか文句あんの?」
「はいコロスぅ~。チュ~トくんガチギレ活火山につき怒りの大噴火不可避~。楽には死なせねぇ~」
「そ。頑張って」
「コッ! ロッ! スッ!」
案の定始まったもう四度目の三初VS中都を前に、俺は額に手を当て、再度深いため息を吐いた。
いい加減にしろよ? お前ら。
もうめんどくせぇから今日ここでケリをつけろ。絶対つけろ。そして以後引きずんな。鎮火させんの全部俺だろうが後輩どもめ。
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