誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

文字の大きさ
127 / 454
第四話 後輩たちの言い分

63(side中都)



 シュート似の先輩、修介センパイは知れば知るほど愛犬によく似ていた。

 言葉や態度はぶっきらぼうだが仲間思いで世話焼きなところや、オヤツをチラつかせれば無愛想に近寄ってくるところは完璧に合致している。

 迂闊に触れると叩き落とすのに慣れてくると自分からなでてくれたり抱きついても振り払わなくなったりするところも、犬好きの中都からすればもうナチュラルにセンパイの頭には犬耳が見えたし、なんなら黒毛のシェパードそのものに見える時もある。

 モッフモフのワンコロだ。
 見ていてかわいいとしか思えない。

 一応、初めはシュートのこともひっくるめて我慢し、普通の後輩として、恐ろしいがかわいらしいセンパイについて回っていた。

 着いて歩くのは気分的には散歩だ。
 ワンコの好きに歩かせてそれを見守り、たまに飼い主も共に遊ぶという図である。

 歩くのは早いが置いていかれることはなく慣れると食事や遊びやとぶっきらぼうに誘ってくれていたあたり、素直じゃないのだろう。わかりやすい。

 中都はそれで満足だったし、シュートのことを差し置いてもこのセンパイはいいセンパイだった。

 だがその思いがここまで濃くなった発端は、ある日の飲み会後のことだった。

 一人の先輩の家でメンバーを集めて散々に飲み、酒が苦手な中都以外、全員が潰れてしまった。

 その中にはもちろんセンパイもいて、雑魚寝の中で一際大きな体を壁際に寄せ、丸くなって眠っていた。

 そんな光景を見ると、やむを得ない。
 魔が差したのだ。当然である。

 中都は我慢ならなくなり、眠るセンパイをなでまわしてキスをしてワンコよろしく散々にかわいがった。
 丸くなって眠るのがあんまり愛らしいので添い寝もした。至福の時である。

 けれどいくら酔っていようがここまで他人に触られると違和感を感じたセンパイが目を覚ますのも、これまた道理であった。

 幸い、目を覚ましたセンパイは前述の通り酔っ払っていた。

 中都の過去や説明を聞いて、たまにならなでてもいいぞ、と快諾してくれたのだ。

 キスも添い寝も人目がなければまぁいいとも言ってくれた。
 中都がこの人を一生センパイと崇め奉ろう、と心に決めたのもこの時である。

 センパイは後に中都から語られたこの出来事を〝若気の至り〟〝酒は飲んでも呑まれるな〟と称するが、知ったこっちゃない。中都的には運命パートツーなのだ。

 更に神が味方したのか、センパイは中都ほどではないにしろ犬が好きだった。

 なぜか野良猫によくまとわりつかれているが、犬派らしい。自分は犬タイプだ。赴くままに尽くせばセンパイは優しくしてくれる。マーベラス。世界は優しい。

 よし、一生お供しよう。
 そしてたまにワシャワシャさせてもらおう。あわよくば添い寝とキスと、シャンプーもしたい。

 中都の行動理念とはそれだけであった。

 どこかの誰かが嫉妬をするような、ラブくてスウィートな関係ではないし、感情でもないのである。

 ただ。ただ純粋に、センパイをリアルなワンコ扱いして、至福を感じる真性のマニア。

 中都の正体。
 それはただの愛犬家ガチ勢なのだ。




感想 137

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

またのご利用をお待ちしています。

あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。 緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?! ・マッサージ師×客 ・年下敬語攻め ・男前土木作業員受け ・ノリ軽め ※年齢順イメージ 九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮 【登場人物】 ▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻 ・マッサージ店の店長 ・爽やかイケメン ・優しくて低めのセクシーボイス ・良識はある人 ▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受 ・土木作業員 ・敏感体質 ・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ ・性格も見た目も男前 【登場人物(第二弾の人たち)】 ▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻 ・マッサージ店の施術者のひとり。 ・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。 ・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。 ・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。 ▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受 ・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』 ・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。 ・理性が強め。隠れコミュ障。 ・無自覚ドM。乱れるときは乱れる 作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。 徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。 よろしくお願いいたします。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。