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第四話 後輩たちの言い分
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うすら笑いを浮かべて、三初は語るような語気で言う。
つかなんでお前は俺の好きなヤツ気にしてんだよ。お前だよ。言えるかクソが。
しかし断固拒否する構えを取ったあと、はたと気がついた。
昨日三初は俺に自分の好きな相手を教えなかったのだ。風邪っぴきがぶすくれて聞いたのに、いつもどおり煙に巻かれた。
だったら……俺が教える義理は、ねェよな?
「三初よォ、俺がお前の好きなヤツ聞いた時、誤魔化しただろ。俺だけに吐かせるのはアンフェアじゃねェかッ」
「あらら、珍しくいいところにパンチ打ってくるじゃないですか」
「ケッ。あんま俺舐めんな。さっさと帰れ」
前に回された手が胸元の隙間から侵入しようとするのを叩き落として、とりあえず腕を上めに組み直す。
触られたらやべぇトコは守っとかねェと。
「あーマジで先輩、もうめんどくさいですって」
「うぐぇ、は……ッ? 首折る気かチクショウ。もげろ」
「言って。早く」
そうしていると、不意にグイッと頭を掴まれて思いっきり後ろに倒され、俺は顎を限界まで反らした状態でギロリと三初を睨みつけた。
めんどくさいめんどくさいって、うるせぇな。俺のどこがめんどくせぇんだよ。テメェのがめんどくせぇ。あんまり言われると不貞腐れてしまう。
どうして俺のプライバシーを侵害したがるのか、理由がてんでわからない。わからないし、こいつは聞いたって言わないのだ。
理不尽が服を着て歩いているような生き物である。台風でもいい。
「脅しじゃなくて、……オネダリ、ですよ」
ニンマリと猫のような笑みを浮かべる、まったくかわいくない後輩。俺を従わせる必殺ワードを使わない意味も、皆目検討がつかない。
じっ、とハチミツ色の瞳を睨みつけると、三初が真上から俺の顔を覗き込んでいるせいで、甘ったるい蜜に埋もれた自分の姿があった。
怒っているように見える仏頂面の俺の顔。
怒ってるかもしんねぇけど、嫌じゃねぇんだ。わかりにくいかもしれない。
こいつはめんどくさいと言うが、俺は結構、こういう文句を言い合える関係は嫌いじゃない。だから俺はこいつが不本意ながら好きで、気に入っているわけだからな。
けれど三初はそうは思っていないだろう。
俺を抱いてはいても、愛だの恋だのの感情を向ける相手は、別にいる。
誰だと聞いても答えないが、いないと否定しないんだからまあ、確実に。
そいつがどこの馬の骨かは知らないが、この我が強すぎる男が〝めんどくさくてテンポが合わない〟と言い切っていても、やめられないのだと言っていた相手だ。
そう思うとずいぶん、見も知らない男か女かが、ズルく思えてきた。
俺はめんどくせぇって言われんのによ。
従順でかわいげのあるもんになれってんなら、それは絶対にムリだ。俺は俺以外には逆立ちしたってなれない。恋した結果変わるのはいいが、恋のために変わるのはお断りだ。
まあ三初の恋を捻り潰してまで俺を見ろと言うほど、俺は子どもじゃねぇかんな。
三初が相手と結ばれて、俺がひっそりと失恋したって、それもいいと思う。
それを仕方ないで納得できるくらい、まだ俺の恋心は燃え上がってはいなかったりするからだけどな。この恋は、せいぜい小火程度。
けれど。
ここで俺が三初に自覚したての自分の好きな相手を明かしてフラれるのが平気なほど──生ぬるい火でもないわけで。
ハチミツに浸かった俺が、射殺すようだった眼光を緩める。
怒ってねえってのは、こいつにはバレてる気がした。それでも構わない。
「ン。……?」
組んでいた腕を解いて三初の首に腕を回し、下からチュ、とその唇にキスをしてやった。
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