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第五話 冬暴君とあれやそれ
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しおりを挟む三初が好きだと気づいてから、しばらくが経った。
季節は早いものですっかり冬に染まり、十二月も半ば、クリスマスシーズンを迎えている。
きらびやかな装飾を施された街はどこもかしこもクリスマス一色で、それはもちろん、世間相手に商売をする俺たちの会社でも変わりはない。
クリスマスと託けた商品戦略は数ヶ月前から準備するのが当然だ。
来るとわかっているブームだからな。
あやかりにあやかりまくって、すでにある商品はパッケージから味から限定品を作り、イベントやキャンペーンで更に盛る。
そしてクリスマスが終わったら手のひら返して正月に媚びを売り、初売りだセールだ福だなんだって騒ぎ立てるのが俺たちの仕事である。毎年恒例の手馴れた作業。
そういう仕事柄、宣伝企画課はイベント事に敏感でなければならない。
恋人がいなくても聖夜を意識して見ず知らずのカップルたちが甘くなるよう経済を守り立てる。
そしてそれが実ったクリスマス当日や前後に休みを取る浮かれた同僚の尻拭いは、独り身企業戦士の必須業務となるわけだ。
どうだ? あくせく働くロンリーな同僚どもに感謝したくなったろ?
更に言えば今年はイブと当日が木、金曜日だ。故に土日を含めた四連休を取る浮かれポンチが多いこと多いこと。
まぁそれは別に構わない。
有給は使うべきで、会社もそれを推奨している。うちは自分の仕事に支障がなければ時期なども遠慮無用だ。恋人と過ごすというのは悪くない。
悪いのは結果的に仕事が前倒しになり、休まれる当日も働くってのに負担は平等に分割されて、各所に行き渡るということで。
これがどうなるかは、お察しするところで。
「……つまり独身の肩身が狭くなって、休み前で納期が縮まった仕事をさせられる羽目になるってことかよ」
「お先で~す」
「お疲れ様でした~」
「クソお疲れ様でしたァ」
一人パソコンに向かい合ってカタカタとキーボードを叩きクリスマス後の年末年始企画の準備を進める俺は、重低音で挨拶を返す。
その俺に浮かれた挨拶をしてきた同僚たちは、軒並み今日を終えると連休になる奴らである。
そうじゃなくても家で家族が待っている上司や先輩たちは、プレゼントを用意するべく、定時になると帰っていった。
部下に仕事を割り振ってな。
チクショウ完璧に終わらせてやる。
せいぜい感謝しろよ浮かれポンチ共が。
キーボードを叩く指に力が入り、カタカタと言う音がダカダカと勢いを増した。
当然ながら彼女も彼氏も配偶者もいない一人暮らしの独り身である俺は、好きなだけ仕事をして帰れる男であるのだ。
そうして仕事をしていると、オフィスの外からガヤガヤと大勢の声が聞こえてきた。
定時を過ぎたとは言え、イベント前は繁忙期。残業するやつは、平時よりも多い。
チラリと視線をズラすと、ガラス張りの廊下を、うちの課の連中と隣の課の連中が連れ立って歩いている。
なんだか一つのスマホを覗き込んで、むさくるしい男が大勢はしゃいでいるようだ。というかその団体の先頭が、なにを隠そう俺の昔馴染み、冬賀である。
「はっ?」
それをしっかりと目視した途端──俺は素っ頓狂な声を上げ、チラ見程度だった注目が首を曲げてのガン見に変わった。
商品開発部・商品企画課の風雲児である冬賀は、基本的に人に好かれやすい性格だ。だから隣の部署であるうちのやつらにも、顔が知れている。
大勢連れていてもなにもおかしくはないが、俺が三白眼の目玉をまんまるとした理由はそれじゃない。
冬賀の隣で一緒になって囲まれている男が、独身男社員に鼻持ちならないと敵視されるランキングナンバーワン・三初だったからだ。
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