誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

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閑話 犬の知らない物語

03(side三初)※



「あッ……」


 思考回路に従って、あっさり手を引いた。ヂュポ、と引き抜かれた指を失ってきゅうと収縮するアナルが寂しげにヒクヒクと開閉する。

 ベッドサイドに置きっぱなしのゴムを一つ取り出して包装を歯で引き裂き、イイ気分のまま前をくつろげて慣れた手つきでマナーを装着。

 病気持ちでもなし、気まぐれにムラムラした時でなければ毎度中を綺麗にしているしで、生でも問題はない。

 俺としてはなくてもいいと思うが、先輩は中出しを嫌がるのだ。

 本人は後処理がめんどうだからだと唸っているけれど、その実はマーキングをされているようで気に食わないのだろう。

 まぁ、否定はしない。
 あれは調教の一環である。

 お前は非生産的な行為で感じているのだ、と刷り込んでいくと、無自覚マゾヒストの先輩は条件反射でそれが気持ちよくなってしまう。


「要するに『あんた今養豚場の豚にする種付けより無意味なコトされてんですよ?』ってわからせられるのが、好きなんですよねぇ」

「ッん…ぅ……」


 クツクツと喉奥で笑いながらぐったりと横たわる先輩の穴に先端で触れ、そのまま根元まで突っ込んだ。

 横倒しの体に挿れると肉に挟まる感じが増すし、角度と擦る場所の感じ方が普段と変わって割とイイ。

 絡みつく内壁を振り切るように、大きなグラインドで深く丁寧に出入りして奥行きを確認する。

 先輩の好きなとこは手前と奥。
 全部いいけど特に、ね。

 ちゃんと腹のどんつきに当たるよう真っ直ぐ入る角度を探りつつ、前立腺に擦りつけるように動かすと、喘ぎっぱなしの先輩の唇からだらしない唾液が垂れた。わかりやすくて結構。


「はっ……ン…はっ……っン……」


 コツを掴んでからはテンポを上げ、余裕を持って突く。

 ほとんどは挿れっぱなし。
 根元から数センチだけを遊び気分で抜き差しする。ね。これであんたの大好きな奥と手前、両方潰せるでしょ。

 今日だけで片手じゃたりないほど挿れたし入った場所は、多少緩んだものの未だに衰えず、ぎゅっ…ぎゅっ、といい具合に締めつけてきた。

 むしろ柔くて丁度いいくらいだ。
 先輩はケツまで筋肉バカだし性格はただのバカだしで、序盤はギッチギチに締めてくる。実はちょい痛い。

 それが今は意識もなくトロトロに泥濘るでいて、イキ過ぎて感度が爆アゲしたせいで絶えず痙攣しながら蠢動する襞の動きが絶妙だった。

 本人は「望んでねぇし嬉しくねぇ!」と吠えるのだろうが、意識がないと先輩の中は相当素直で、たまらない仕上がりをしている。そう躾けた。俺が。

 先輩をこんな体にしたのは俺で、今こうなっているのも俺の責任。


「はっ、それじゃ、もう俺のもんだろ」

「…ッ……ん、…ッ……ッ」

「ねぇ先輩、聞いてますか? 先輩もそう思うでしょ、ねぇ。返事してくださいよ、先輩」

「ヒ、……ヒッ……ァ」


 小刻みで早い抽挿を繰り返しながら所有権について同意を求めるが、喘ぐばかりでなにを言っているのかなにも言っていないのかわからなかった。

 手のかかる困った先輩だ。
 それすらいいのかも、と思う。


「クク、酷い人だなぁ。俺を無視して」

「は…、は…、…ぁは……」

「じゃ──あとで叱れるように、記念撮影しておくか」


 ニンマリ。
 猫のようだと評される笑みを浮かべ、ポケットからスマホを取り出した。

 普段はちっとも素直じゃない先輩は、快感を伴うとしばしば素直になる。

 今までどれだけ構っても唸ってばかりだったこの人と同じベッドで眠る関係までこぎつけたのは、ひとえにその性質が発覚した故に、だ。

 しかしながら正気に戻ると、相変わらずの意地っ張り。

 となればこんな貴重な映像、いつとはわからないが来るべき時のために、なんとなーく、撮影しておくのが当然というもの。文化保存の務めですよ。ね。




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