150 / 454
第五話 冬暴君とあれやそれ
19
「一人は……クリスマスの埋め合わせーって試験直前にデートに振り回されて会計全部俺持ちでしょ? んでクリスマスプレゼント強請られてSNSで自慢用にツーショット撮られて許可なく画像上げられて、ね。それ見た彼女の友達が会いたいーとか言って強制召喚? からの寝取りのお誘い? ま、普通に帰りますよね」
「うわぁ……」
「個人的にはマウント取るためにやたらイチャイチャさせられてラブラブカップルぶられたのが最低にこたえたなぁ……最初そんな女じゃなかったんですけどね。そんで別れたらヒステリックに泣かれて、謎に慰謝料請求とかされましたよ。結婚してねぇのに」
「うわぁ……っ」
「っても超悲しそうな顔でその子の友達たちに不幸自慢した上で『過ぎたことだから恨んでないけどね』って痛々しく笑っておいたんで、余波は問題なしでしたわ。寝取り誘ってきた人もスマホのボイスレコーダー密かに起動してたんで、牽制余裕。みんな世間体大事でしょ?」
「うわぁ……ッ!」
「しばらく彼女はいらない、で傷心に漬け込む肉食女子も一掃。成績優秀な俺は教授にも顔が利くので、あれこれ事実を脚色して吹き込みなんとやら。超平和」
「マジで悲惨すぎんだろ」
聞かされたメモリーの癖が強すぎて、俺はうげぇと舌を出して震え上がる。
三初のことだから黙って別れるだけに留めるとは思わないが、本当に鬼畜だなコイツ。
どう考えても相手の子にとっての悪い思い出だ。いやまぁ相手が悪いけど。
無許可で流出されて散財されて女に襲われたら、愛想も尽かすわな。
曰く、なぜか三初と付き合う女は付き合っているうちに性格が変わったり別れ際にゴネたりと濃いタイプが多いらしい。ウゲェ。
ウゲウゲとドン引きを前面に押し出した表情を向けると、三初は心外そうにやれやれと肩をすくめた。
なにが心外なのかと尋ねると、振り回されたとはいえ噂話を振りまいて身の安全は確保したものの、無条件に全力の尽力を求められるのが腑に落ちないことと、三初の恋人としてなぜか自慢げに振る舞い始める彼女の変貌がトラウマなのだと言う。
だから前半は相手にとってのトラウマだっつってんだろテメェ。
俺にゃわかんねぇ。
自分の女が喜ぶなら尽くしてやればいいのによ。自慢にされんのはいいことじゃねーの? ……いやそれはプレッシャーか。
けど、なんでそんな他人からのイメージをわざわざ自分から早々にぶち壊すのかはちっともわからん。三初はわからん。
「他のも聞きます?」
「ノーセンキュー」
自分ではならない状況と自分ではしない考え方の思い出話に、俺は早々と白旗を上げた。
俺が悪かった。もういい。
捻くれまくった三初にイベントきっかけの親愛度アップなんて、仕掛けるだけ無駄だったのだ。
せっかく一緒に過ごせば楽しいかと思ったのに、本人の性分がこれで記憶がそれならどうしようもねぇし。
ただ、女の好みが一つだけわかったぜ。
荒んだ俺はジロ、と死んだ魚のごとき双眸で横睨みにする。
「お前、あれだろ。報復を決定する前に一応彼女に貢いだってことは、プレゼント自体は別にやってもいいと思ってんだろ。金に興味ねぇんだからよ」
「あら? んん、そうかも。腑に落ちますね」
「で、も!」
「でも?」
ビシッ! と指先で三初を指して、眉間をシワシワにしながら恫喝じみた表情に変えた。
「クリスマスやら記念日やらにかこつけて自分からあれこれ強請るような女は、好みじゃねぇから冷めてくんだろ。だってお前、求められると拒否したくなる屈折ハート大魔王だかんな」
「あー大正解。ピンポーン」
「めんどくせぇぇぇぇ……ッ!」
静かにブレーキが踏まれて、見慣れたマンションの駐車場に止まる車。
打って変わって軽快な声を返された俺はガシガシと頭を掻きむしって、苛立ったような疲れたような悲鳴を上げた。
ぐあぁぁッ!
そんなこったろうと思ったぜ!
だって今日みたいな嫌がらせの餌としてじゃなくても、割とコイツは日頃メシを奢ってくれるんだよ。先輩の威厳で伝票争奪戦になるけどなッ。黙って奢られてろよバカがッ。
「恩を売る。弱みを握る。俺ダーイスキ」
「悪の化身じゃねぇか! 送ってくれてありがとよ! テメェ帰り道単独で事故れ!」
人身事故や巻き込み事故は良くないのでソロ事故の呪いをかけ、俺は憤慨しつつ車を降り、バタンッ! とドアを閉めた。
恋愛下手かよバカがっ。
相手に愛想尽かされて泣くぞコラ。いや、こいつの恋なんざ応援してねぇけどよ。むしろ破綻したほうがいいけど、ちょっと悔い改めろっ。
クソ、もうクリスマスなんか知らん。
クリぼっち極めてやがれ悪魔超人が。
内心で散々キレつつ軋む体を引き摺って、振り向くことなく部屋に向かい、逃げるように帰宅した俺だった。
別に、拗ねてねぇからなッ。
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
またのご利用をお待ちしています。
あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。
緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?!
・マッサージ師×客
・年下敬語攻め
・男前土木作業員受け
・ノリ軽め
※年齢順イメージ
九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮
【登場人物】
▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻
・マッサージ店の店長
・爽やかイケメン
・優しくて低めのセクシーボイス
・良識はある人
▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受
・土木作業員
・敏感体質
・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ
・性格も見た目も男前
【登場人物(第二弾の人たち)】
▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻
・マッサージ店の施術者のひとり。
・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。
・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。
・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。
▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受
・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』
・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。
・理性が強め。隠れコミュ障。
・無自覚ドM。乱れるときは乱れる
作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。
徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。
よろしくお願いいたします。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。