誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

文字の大きさ
214 / 454
第六話 狂犬と暴君のいる素敵な職場です

08(side竹本)

しおりを挟む


「ったく、いちいち俺で遊ぶなってのに」

「そこにアンタがいたんだから仕方ないと思いますけど」

「仕方ないわけねぇわ超理論引っ込めろ」


 しかし好奇心でちらりと隣を横目に見てしまうのが、モブの性。

 三初は話しながら、自分のデスクチェアーと更に隣の元木のデスクチェアーを引っ張って、ゴロリと横になった。

 ポケットからスマホを取り出して、なにやらトットッとゲームをし始めたようだ。

 御割は返ってきた自分のデスクチェアーに不満げな仏頂面でドスッ、と座り、三初が頭を乗せられるようデスクと自分の間へ少しスペースを作る。

 で──ポスンと膝枕。


「今日鍋しましょ。チーズ明太うどん」

「なんでシメを先に決めるんだよテメェ。豆乳鍋」

「じゃ、鳥白湯ね」

「なんで鍋もテメェが決めるんだよ。嫌だ。豆乳だ」

「無理。具は先輩が決めてもいいですよ」

「無理ってなんだよクソが。じゃあ、ん、……んんー……エビ。海鮮」

「まーいいかな。でも死ぬほど大根おろししてくださいね。すみっこで豚しゃぶするから」

「鍋するって言っといてなんで結局しゃぶしゃぶすんだッ」


 カタカタカタカタ。
 おっと間違えた。カタカタカタ。

 いや。いやだって間違うよな。なんか妙に自然体なんだもんよ、この膝枕ポジションの二人。

 てか、御割の〝なんで〟に一回もまともに答えてねぇぞ三初。

 そんで三初のそれに懲りずに悪態を吐きながらも、なんやかんや仕事をしつつ返事をちゃんと返す御割。

 なんだこれ。
 え? なんだこれ。


「もう知らん。邪魔すンな」

「そ? じゃー勝手にしようかなぁ……」

「っ、腹筋噛むなッ、邪魔すンなって言っただろうが」

「じゃあ舐めよう」

「舐めんな」

「はぁ……あれもだめこれもだめ。なにならいいんですか? だめだめじゃわからないでしょ」

「はァ? なにならいいって、なに、んん……ひ、ひっつく?」

「リョーカイ」


 いや。
 いやいや。
 ひっついちゃったよオイ。

 御割、言いくるめられてんぞそれ。グレードダウンしてもらったように感じるけど、やらない選択肢奪われてんぞ。

 オフィス内のチラチラとした視線に気付いているのかいないのか、すこぶる自然体でいつもどおり言い合いをしつつ、なぜか距離だけが近い。

 たぶん三初は気づいてる。
 でも御割は気づいてないと思う。

 ……そういえば、年明けから結構こんな感じだった気がする? かもしんない。わかんないけど。

 わかることはただ一つ。


「た、竹本先輩……これ、御割先輩に渡してほしいです……」


 涙目で俺を呼び出した幸村さんが、修正した資料の束をおずおずと差し出していて、それを俺が配達するということである。

 そして、届けた先は御割なのに、受け取ったのは三初だった。
 なんでダブルチェック。なんで最終確認が三初。

 なんなのアイツら。なんでちょっと仲良くなってんの。仕事効率良くなってんのかよ。膝枕のおかげとか? まじか、膝枕すげぇ。

 余談だが──その後。

 俺が機嫌のいい時を狙い、デスクに座る御割に横から膝枕を頼むと、返事を貰う前に三初に背後から顎クイされた。

 首が後ろに折れるかというくらいの力でクイされてなんだと聞くと、三初は「別に?」とニンマリ笑っていた。たぶん目は笑ってなかった。

 そんでなんでか機嫌がよかったはずの御割の機嫌が悪くなっていて、俺はその場でホロリと泣いた、麗らかなある日の午後である。

 くそう。四月に席替えなかったらギャン泣きするからな!




しおりを挟む
感想 137

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

BL短編まとめ(現) ①

よしゆき
BL
BL短編まとめ。 冒頭にあらすじがあります。

処理中です...