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第六話 狂犬と暴君のいる素敵な職場です
08(side竹本)
「ったく、いちいち俺で遊ぶなってのに」
「そこにアンタがいたんだから仕方ないと思いますけど」
「仕方ないわけねぇわ超理論引っ込めろ」
しかし好奇心でちらりと隣を横目に見てしまうのが、モブの性。
三初は話しながら、自分のデスクチェアーと更に隣の元木のデスクチェアーを引っ張って、ゴロリと横になった。
ポケットからスマホを取り出して、なにやらトットッとゲームをし始めたようだ。
御割は返ってきた自分のデスクチェアーに不満げな仏頂面でドスッ、と座り、三初が頭を乗せられるようデスクと自分の間へ少しスペースを作る。
で──ポスンと膝枕。
「今日鍋しましょ。チーズ明太うどん」
「なんでシメを先に決めるんだよテメェ。豆乳鍋」
「じゃ、鳥白湯ね」
「なんで鍋もテメェが決めるんだよ。嫌だ。豆乳だ」
「無理。具は先輩が決めてもいいですよ」
「無理ってなんだよクソが。じゃあ、ん、……んんー……エビ。海鮮」
「まーいいかな。でも死ぬほど大根おろししてくださいね。すみっこで豚しゃぶするから」
「鍋するって言っといてなんで結局しゃぶしゃぶすんだッ」
カタカタカタカタ。
おっと間違えた。カタカタカタ。
いや。いやだって間違うよな。なんか妙に自然体なんだもんよ、この膝枕ポジションの二人。
てか、御割の〝なんで〟に一回もまともに答えてねぇぞ三初。
そんで三初のそれに懲りずに悪態を吐きながらも、なんやかんや仕事をしつつ返事をちゃんと返す御割。
なんだこれ。
え? なんだこれ。
「もう知らん。邪魔すンな」
「そ? じゃー勝手にしようかなぁ……」
「っ、腹筋噛むなッ、邪魔すンなって言っただろうが」
「じゃあ舐めよう」
「舐めんな」
「はぁ……あれもだめこれもだめ。なにならいいんですか? だめだめじゃわからないでしょ」
「はァ? なにならいいって、なに、んん……ひ、ひっつく?」
「リョーカイ」
いや。
いやいや。
ひっついちゃったよオイ。
御割、言いくるめられてんぞそれ。グレードダウンしてもらったように感じるけど、やらない選択肢奪われてんぞ。
オフィス内のチラチラとした視線に気付いているのかいないのか、すこぶる自然体でいつもどおり言い合いをしつつ、なぜか距離だけが近い。
たぶん三初は気づいてる。
でも御割は気づいてないと思う。
……そういえば、年明けから結構こんな感じだった気がする? かもしんない。わかんないけど。
わかることはただ一つ。
「た、竹本先輩……これ、御割先輩に渡してほしいです……」
涙目で俺を呼び出した幸村さんが、修正した資料の束をおずおずと差し出していて、それを俺が配達するということである。
そして、届けた先は御割なのに、受け取ったのは三初だった。
なんでダブルチェック。なんで最終確認が三初。
なんなのアイツら。なんでちょっと仲良くなってんの。仕事効率良くなってんのかよ。膝枕のおかげとか? まじか、膝枕すげぇ。
余談だが──その後。
俺が機嫌のいい時を狙い、デスクに座る御割に横から膝枕を頼むと、返事を貰う前に三初に背後から顎クイされた。
首が後ろに折れるかというくらいの力でクイされてなんだと聞くと、三初は「別に?」とニンマリ笑っていた。たぶん目は笑ってなかった。
そんでなんでか機嫌がよかったはずの御割の機嫌が悪くなっていて、俺はその場でホロリと泣いた、麗らかなある日の午後である。
くそう。四月に席替えなかったらギャン泣きするからな!
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