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第六話 狂犬と暴君のいる素敵な職場です
09
◇ ◇ ◇
気が向いて時間が合えば、外か俺の家で夕食を共にし、更に気が向けば恋人らしい行為をする俺たち。
今日も今日とて寒さの厳しい冬を鍋で乗り切ろうという誘いに乗り美味しくディナーを終わらせたあとは、なにも言わずとも二人で過ごす。
「なんでまたホラーなんだよ」
「どっかの誰かさんが拗ねてるから、笑かそうと思って?」
「拗ねてねェわ」
フイ、とそっぽを向いて、ゴマ豆乳プリンをすくい美味しく食べた。
ゴマの風味と豆乳の柔らかな甘さが舌に染み、緩みかけた表情筋を引き締め直す。
このヒラヒラ野郎。
結局鶏白湯強行したくせに、ワイロで誤魔化しやがって。ウメェ。クソが。
ムスッとしながら不機嫌を隠さない俺を、隣でコーヒーを飲んでいる三初は全く気にした様子がなかった。
それがさらに癪に触って、拗ねる、じゃねぇ機嫌を損ねる俺。言い方は大事だ。メンタル的に。
ホラーらしく部屋を薄暗くして雰囲気を出し、二人肩を並べて座るソファー。
イチャつく雰囲気的にも完璧だが、ギャーッ! と叫ぶ画面の中のモブを眺める俺は、手すら握らない。
実はこの俺──三初に悔い改めさせるべく、ひっそりと勝負をしかけているのである。
なにが? って、昼間の竹本への顎クイ。……じゃねぇ。全然違ぇぞ。今のナシ。
俺の仕事を邪魔することや、拗ねているのだとわかっていても素知らぬ顔をしている扱いの悪さに、だ。
ケッ。すました顔しやがって。
そもそも、飯のあとDVD借りて観ることすら俺ァ知らなかったんだからな? 勝手過ぎんだよッ。
モグモグとやけプリンをしつつ、脳内で一人愚痴る。本人に言っても聞かねぇかんな。
まだお付き合いに発展してからひと月程度だが、知り合ってからなら四年近い。
その間俺は嫌なものは嫌だと良い、赴くままに文句を言って説教をしてきた。
それでも三初は人のためにほとんど自分を曲げないので、恋人という関係性ならではの攻め方に変えてみてた策士な俺だ。
今回ばかりは折れねぇぜ。
いい加減人間性を叩き直さねぇと、コイツは一生人様をコケにして恐怖の象徴として君臨しちまう。
カラン、と空のカップをローテーブルに置いて、俺は胡座の上でクッションを抱きしめ、意気込んだ。
ちなみにプリンは美味かった。
チクショウ。
「ゾンビとか笑うわー。どういう仕組みでゾンビになんのか、考えると止まんね。グロ系ホラーもウケますね」
「……なぁ。俺ずーっと機嫌悪ぃってオーラ出してると思うんだけどよ、なんで普通に映画でウケてんだよ。テメェの血はヘドロか」
「や。もうめんどくさいのいつものことだし、いっかなって。まー今日はやや長めですけど」
「俺の計画その程度しか効いてなかったのかよッ!」
しかしなあなあで誤魔化されないようにとへそを曲げ続ける作戦は、察した上でまあ良しとされていたらしい。
つい振り向いていつもどおりにガウッ! と吠えてしまうと、三初はニンマリと笑って「はいご対面」とほくそ笑んだ。この野郎。
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