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第六話 狂犬と暴君のいる素敵な職場です
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──翌朝。
チョコレートプレイが嫌だと抗う俺にしれっと誓約書を書かせたあと、サクッと風呂場で俺を抱き、うやむやにした三初。
当然のようにベッドにも潜り込んできたので、今日は泊まるのか、と言外に察知したのが昨夜だ。
ピピピピ、ピピピピ。
「……ンぁ? あー……」
今日も今日とて仕事に行くしがない社会の歯車である俺は、目覚まし時計の電子音でのろりと起き上がった。
モソモソと朝の寒さを嫌がりながらも体を起こし、アラームを止める。
しばし瞬きを繰り返すと、カーテンの開けられた窓から差し込んだ朝日が眩しくて、意識が徐々に覚醒してきた。
隣を見るととっくにもぬけの殻だ。
仕事の日の朝は殻の主がカーテンを先に開けてからリビングへ向かうので、俺は一人の時よりも早く目が覚める。
おかげで朝の時間に余裕ができるのが、平日の宿泊受け入れメリット。
──その余裕をイタズラやからかいで潰されるのが、デメリットである。
まぁプラマイゼロ。ちなみにセックスの手加減は平日でもしてくれない。むしろマイナス。結論、いっぺん殴りたい。
「最近痛い系のヤツをジワジワレベルあげてされてる気が……」
目元を手の甲で擦ってから、ぐっと背伸びをする。
ベッドから立ち上がろうとすると、ちょうど枕元でピコン、とマインの通知音が聞こえた。
あ? なんだ?
自分のかと思ってスマホを探しキョロキョロすると、画面が明るいのは俺のではなく、充電器を差しっぱなしの三初のスマホだった。
ブラウン系のネコのあれだ。
忌々しいニャンコである。
「…………」
特に意味はなく覗き込むでもなく、ああ俺のじゃねぇわ、と思っただけだ。
けれどその画面に表示されるメッセージの送り主が〝間森先輩〟だったから、俺は眉間に皺を深く刻み、物凄く嫌そうな顔をしてしまった。
「『あれ、来月になりました。またお泊まりに行きますね』だとォ? あの人間性破綻野郎……ッ!」
勝手に触るのはいけない。
画面が消えるまで親の仇のようにそれを睨みつけ、怒りの炎をメラメラと燃やす。
──アイツ、ただの先輩って言ってただろうが!
なんとそのメッセージの語尾には、ハートマークがついていたものだから、俺が内心で咆哮を上げるのも無理はなかった。
付き合った日のことだ。
アイツと俺が揉めたあと、アイツは車内で間森先輩とやらの存在を明かしてくれた。
あの日は昔馴染みの先輩が泊まりに来ていただけで、その先輩とは惚れた腫れたの関係ではない、と。
大歓迎というわけではないが、先輩なので逆らうのは得策ではなく、一晩の宿を提供したらしい。
もちろん今朝方すぐに帰ったと。
それを聞いた時、そりゃあ多少違和感はあったぜ?
だって三初は泣く子も踏み潰す暴君だ。
なんの関係もないただの先輩なら、歳が上というだけで従ったりしない。
実際俺は好意を持たれていたにも関わらず、現在進行形で足蹴にされている。
それに関しては不満だがまぁいいとして。
とにかくそんな三初が学生時代の先輩なんてなんのしがらみもない相手に、ホイホイと従う理由がわからなかった。
わからなかったけれど、その時の俺は目隠しをされて手を縛られていたものだから、それどころじゃなかっただけである。
その後の出来事も強烈すぎて、詳しく聞く機会を逃してしまっていた。
有り体に言えば、忘れていたわけだが。
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