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第六話 狂犬と暴君のいる素敵な職場です
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ケッ。俺だってテメェのことを隠したいとか、恥ずかしく思ってるとか、そういうのはねぇ。世間体もクソ喰らえ。
ヒヨッてなんかない。
ただ三初に許可を取らずに一存で話すのはなんか違うな、というか。
……わかった。
正直に言うとだな、冷やかされるのが苦手なんだよコノヤロウ。
進んで恋人の話すンのも照れくさいんだわコンチクショウ。
「おろん? なんか顔赤くね? 室温高いすか? ワンコ暑いの苦手っすもんね!」
「暑くねぇしワンコじゃねぇ。俺のどこに毛皮があるように見えんだコラ。耳も尻尾もねぇだろタコ」
想像して頬が赤くなっていたのか中都にデコを触られ、俺は頭をブンブンと振って唸った。
中都はさりげなく髪をわしゃわしゃなでてデレッとニヤけ「わっはこの触り心地! 耳と尻尾とか標準装備でルッキングなんですけど~!」とはしゃぐ。
曰く、ちょっと硬めの髪質が毛皮っぽいらしい。行動がわかりやすいところと義理堅いところもそれらしいとか。
相変わらず意味わかんねぇ野郎だな。
根っからの犬好きめ。
犬好きには人間がみんな犬に見えるのか? と腑に落ちない気分だが、協力してもらっている手前文句は言わず作業を続けることに。
ポフポフと粉を入れきって計りの数字を確認し、コーヒー粉も振るう。
──そういえば、三初も俺が犬に似てるとか言って笑ってンな……コイツら歳も近ぇし感性が似てンのかもしんねぇ。
「中都、お前三初と合うか?」
「ほ? 全然ムリ。全然合わねっす。ワンコみの欠片もねぇ野郎にゃこれっぽっちも興味ねぇし! つかアイツ猫じゃん真逆じゃんマジムリ!」
似ているなら三初に見立てて味の意見をしてもらおうと考えて尋ねると、中都は首を横に振って即答した。
表情筋総動員で嫌そうな顔をしている。そんなにか。
ノリが違う中都と三初は仲良くないだろうとは思っていたが、いつの間にかそれ以上に決別していたらしい。
正確にはポメラニアンが地面からワンワンと吠えかかり、猫が塀の上で知らんぷりしつつ煽る犬猫の仲である。
中都は三初のマインの連絡先を勝手にもぎ取ってあれこれ文句をつけたにも関わらず、三初は総スカン。交換させたってことは本人も同意のくせにガチシカト。
ブロックはされない。たまにグロ画像や俺の画像が送られてくるとか。
いやなにやってんだコイツら。
仲良しかよ。
「クールも腹黒もワガママも要らん。ずる賢くて気まぐれでなに考えてんのか読めねぇとかめんどくせぇじゃん!? 萌えね~!」
「まぁなぁ」
「ツンデレなら言葉と行動噛み合ってない程度がベストっしょ! わかりやすくて一直線で仲間思いで献身的で懐くと一途で従順なとこがバチクソかわいいんだってのに……あんの性悪めっ!」
材料を全て計量したあと指示通りにバターを練る俺に、収まりがつかない中都は三初の所業を告発し始める。
それを聞きながら、バターをねりねり。
話は理解できるようで理解できねぇけど、三初が性悪ってのは同意するぜ。
アイツに萌えとか感じたことねぇしな。
小粒三初は別として。小粒はかわいい、ような気もしないこともないような。
「しかも俺がセンパイ誘うと邪魔するんスよ!? 公然の餌付けタイムをぉぉ……っ喧嘩なら受けて立つべやっ!」
「やめとけ。アイツは二、三人無傷でのせるくらいにゃ強ぇぞ。見た」
フンッ、と中都は黙りこんで拗ねた。
コイツはわかりやすいんだよ。
三初にも中都の爪の先くらいはかわいげがあればいいのに皆無だぜ。
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