227 / 454
第六話 狂犬と暴君のいる素敵な職場です
21
しおりを挟む──あれからしばらくが経った。
強制的にチョコレートを贈呈しなければならなくなった俺は、どんなバレンタインチョコをどのようにしてあの人間性破綻系野郎に渡すかを、真剣に考えていた。
普通にうまい高級なチョコレートか?
いっそお気に入りの駄菓子系チョコレートを詰め合わせる?
それともやはりネタ系チョコレートで気恥しさごと誤魔化すべき?
俺の脳内は仕事中以外、寝ても醒めてもチョコレートだらけだ。最近仕事中でもふと思い出す。まるで呪いみてェだぜ。
一度は夢にまで見たが、脳内三初が小粒なネコ耳執事となって俺を誑かしただけの無駄な夢だった。
大きい三初よりかわいげはあったけどよ。
手のひらで転がしてるようで、楽しかった……かもしんねぇ。
しかしながら現実の三初は奇妙なくらい俺になにも言ってこないので、逆に恐ろしかった。
話題に出さないところを見ると、俺に催促しなくてもいい理由があるのだ。
どうせ忘れていた場合のお仕置きとして、誓約書のペナルティ履行を目論んでいるのだろう。
大義名分を得るか、チョコレートを得るか。
どう足掻いても大魔王は利を得る。
抜け目のないクソ野郎である。
バレンタイン当日が近づくほど仕事が落ち着く宣伝企画課。
落ち着いてしまうと思考時間が増える。
困り果てた俺は夢の中の三初の『買えるものは意味がない』という言葉と、多少のヤケを含め、暴挙に出た。
有り体に言うと──手作りすることにしたわけだ。
「っつうことで、コーヒーとチョコチップのマフィンを作るぞ」
「はいっす!」
キッチンで材料を前に仁王立ちする俺の隣でコミカルに敬礼するのは、大学時代の俺の後輩──八坂 中都である。
柔らかな金髪をカラフルなピンで止めたゆる系若人の中都は、こう見えて料理ができる男だった。
確か昔、犬の食事を休日に手作りしていたからだったかな。
あと料理男子はモテると思ったらしい。
オリーブオイルの打点は高め。
そんな意外と頼りになる後輩を引き連れて菓子作りに挑む俺は、もちろん料理ができない系男子である。
オリーブオイルの打点は不明。
なぜならオリーブオイルを振りかける料理を作ったことがねぇからだ。
ちなみに中都にはあとで俺をシャンプーする権利と、飲みに行く権利を対価として与える約束だったり。
なんだかんだと約束を守る俺は、休日の今日、ちゃんと銭湯と飲み屋のコンボに付き合うつもりだ。なお明日は仕事。
接客業で基本的に土日が仕事な中都に合わせてわざわざ有給を取ったかんな。そんだけ後がねぇってことを察しろ。日にち的に。
閑話休題。
それじゃあ不本意ながら、始めるぜ。
見守る中都の指示通り、まずは材料の分量を全て正確に測っていく。
中都の仕事は俺に作り方を教えることと、とんでもない間違いを犯す前に止めることと、見守ることなので、手は貸さない。
作るのは俺。
手出しは無用と言ってある。
ふるいを置いたボウルの上へ慎重に粉をポフポフと注いでいると、コーヒー粉を眺めながら中都は小首を傾げた。
「それにしても、センパイの彼女は変わってるッスね~。付き合って初バレンタインってぇと基本、女が作るんじゃないスか? 今時はどっちもアリッスけど」
「あー……ま、まぁな」
一瞬手が止まり、生ぬるい返事をする。
チョコレートを作るに際して〝恋人がほしいと言った〟と誤魔化したのだ。
嘘でもない。確かに恋人で、アイツが欲しがった。
……いやだってよ。彼女じゃなくて彼氏で、それも相手は三初だなんて、言えるわけねぇだろうが。
『あぁ、別に? 俺は誰に言ってもらっても良いですよ。俺も先輩と付き合ってんの? って聞かれたら思った通りに答えるかな。聞かれないから言ってませんけど』
脳裏にあっけらかんと笑う三初が過ぎったが、頭を振って追い払う。
23
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる