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第六話 狂犬と暴君のいる素敵な職場です
32(side竹本)
くそう、あんまりだ。
俺だってやけ酒したいのに、今まともなのが俺しかいねぇ。
あと本当いい加減、御割は抱き寄せてる俺の腕を離してくれ。
さっきから三初が黒霧島を飲みながらグラス越しに俺を見ているのが、どういうわけか寒気がするくらい恐ろしいんだよ。睨んでるわけでもないのに。俺、先輩なのに。
まぁ一応アイツのためじゃなく、第三者として説明すると、だ。
三初は最初連行される時、うまく断ろうとしていたんだぜ?
だけど三初の処理能力と的確なフォローを気に入っている東野リーダー直々の誘いだと、三初じゃなくても断れないと思う。
そしてクリエイティブな仕事は思いっきり才能なので、三初は一応そういう自分にできないことをする人たちは立てるようだ。
あけすけに言うと、デザイン部のやつらには比較的甘い。
それを教えてくれたのは、ほろ酔いになる前の御割である。
女の子だから甘いのかと俺はずっと思っていたがそうじゃなかったので良心の呵責。
ゴホン。
話を戻そう。
んで、それを目の前でされた御割は、全然意味はわからないけれど、一気にご機嫌ナナメになった。
いやいや。だって俺の目には三初にいつも通りキレかかっていたと思うわけよ?
三初は嫌がらせのような言い方しかしないし、御割もツンケンとしか返していなかったし、三初を盗られて機嫌が悪くなる意味がわからない。
そしてその時に俺の腕を掴んだまま「竹本、行くぞ」と言った御割とニコイチになり、今に至る。
全然わかんない。
もう全然わかんない。
「幸村さん来ないしィ……」
同僚たちが間接的に潰されたせいで、俺と御割の周りに若干の空白ができたテーブルにて、俺は唐揚げを咀嚼する。
幸村さんとあわよくばを狙っていた俺の隣には、酔いつぶれかけている狂犬しかいない。
ボトルを飲み干しでもしたのか、心なしかしょんぼりとして揺れている。オイコラ寝るなよ? お持ち帰りなんてしねぇぞ。
「お、御割ー……寝たのか?」
多少は酒が入って気が大きくなっている俺は、このまま腕を組んで眠られたらたまったもんじゃないと思い、御割の肩を控え目に揺すった。
「……寝てねぇ……」
「いやもう寝そうだろ」
するとゴスッ! と石頭が肩に当たる。
そら見たことか。
やけ酒のしすぎでキャパを超えた御割が俺の肩で駄々をこね始め、俺は酔っ払いめんどくさいなぁ、と呆れかえった。
「寝てねぇよ、起きてる。ほら、たけもと」
「寝てなくても酔ってはいるよな」
「む……そう、かもしんねぇ」
──ふーむ、やけに素直。いつもは潰れるまで飲まないのにな。
彼女持ち(俺予想)の御割でも、あの男として勝ち組の状況を目の当たりにすると、やけ酒の一つでもしたくなるのだろう。
グリグリと肩に額を押しつけ「構えよ、竹本」と絡んでくる。
そんな調子の素直な御割はペット的な意味で若干かわいい気がしたので、気をよくした俺は自分のハイボールをグラスに注ぎ、手渡してやった。
「まぁ飲めよ。帰りはしゃんとしろな」
「あぁ……三初は?」
「ん?」
御割は素直にグラスを受け取りゴクゴクと飲んだ。おお、野良犬への餌付け。
なぜかいきなり三初の所在を尋ねられたのでそっちを振り向く。
「アイツはあっちヒィェェェ……」
「ひぃぇ……?」
と、目の前にいた。
は? え? トランザム? 瞬歩? どこでもドア? ついに人間やめたのか?
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