誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

文字の大きさ
240 / 454
第六話 狂犬と暴君のいる素敵な職場です

34



「で? 誰が酷い男だって?」


 一生懸命縋ったのに、同期で隣のデスクの竹本は、俺を大魔王の供物として差し出した。

 おかげで俺はあっさり捕まり、新年会場の喧騒の中、三初によって部屋の端へ追いやられていたりする。

 新年会が始まった時、俺を酔い潰してそれを面白おかしく眺めるのだと言っていた三初は、女性集団の中へ消えてしまった。

 ツンと強がっていたのに、いないとだんだん寂しくなる。
 それで恋しくなって姿を探していたことがバレると嫌で、俺は隠れたのに、この体たらく。

 無理矢理引っ張り出して追い詰めるなんて、やっぱり酷いじゃねぇか。
 バカ三初。嫌いだ。けど嘘だ。


「う、ぅぅ……」


 畳の上にへたりこんだ俺は極限まで壁にへばりつき、壁にドンと両手をつく三初の影で小さくなって唸った。


「お、怒んな。……なんで怒る?」

「怒ってませんよ。目の離せない手のかかる駄犬だわって、思ってるだけですんで」


 それを世間一般的に怒っているというと思うのだが、わかっていないのか。

 相変わらずのうすら笑いだが、壁と三初の体で挟まれた俺には逃げ場がない。視界も三初一色だ。まるで俺が人から隠されている気分である。


「…………」


 ──それほど俺は、三初にとって、恥ずかしい恋人なのかもしれない。

 自慢できないような恋人。
 ヤケ酒をすると深く酔って醜態を晒すような恋人なんて、人に見せたくない。

 そう思うとなんだか寂しい気がして、俺は三初の首に腕を回し、抱きついた。


「ん?」

「三初、三初」

「なに。そんなことしても許してやんねぇけど?」

「三初……三初……」

「なんですか」


 俺はここにいるだろ、というアピールとしてぎゅうぎゅうと抱きつき懸命に名前を呼ぶと、三初の冷たい声が仄かに甘くなる。


「……みはじめ」

「ふ、なんですかって」


 少し柔らかくなる声。やっと笑ってくれた。
 気分が良くなって自分の頬を三初の頬に擦り寄せる。周囲のざわめきなんて聞こえていない。

 そうするとようやく三初は俺の前に座り込み、俺を抱き寄せてくれた。


「あんたホント、もうこんなになるまで酒飲まないでくださいね。いい歳した大人が泥酔して単細胞化とか、笑うわ。普段セーブできてんでしょ? それどころじゃなかったの?」

「あぁ……だって、お前、いねぇから」

「くく、そう? 素直だね」


 トン、トン、と背中をさすられて、クスクスと耳元で笑われる。

 俺は真剣なのに、どうして笑うんだよ。
 少し拗ねた気分になって、俺は「だってよ、だってよ」とごねた。

 三初、俺を見てるって言ったじゃねぇか。どうして俺を置いて行ったんだよ。

 だから俺は竹本と酒を飲んでいて、こうなっちまったんだぜ。バカ。女のところになんか行かねぇで、俺と一緒にいりゃあいいのに。俺は好きだ。三初、だいすき。


「帰る?」

「うん……」

「了解」


 唇を耳たぶに添えて囁かれた言葉に頷くと、同時にグッと強く体を上に引かれて無理矢理立たせられる。新年会だというのに、勝手に帰っていいものか。

 けれどその声にはもう冷たい温度はなく、いつも通りの三初だった。




感想 137

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

またのご利用をお待ちしています。

あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。 緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?! ・マッサージ師×客 ・年下敬語攻め ・男前土木作業員受け ・ノリ軽め ※年齢順イメージ 九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮 【登場人物】 ▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻 ・マッサージ店の店長 ・爽やかイケメン ・優しくて低めのセクシーボイス ・良識はある人 ▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受 ・土木作業員 ・敏感体質 ・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ ・性格も見た目も男前 【登場人物(第二弾の人たち)】 ▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻 ・マッサージ店の施術者のひとり。 ・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。 ・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。 ・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。 ▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受 ・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』 ・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。 ・理性が強め。隠れコミュ障。 ・無自覚ドM。乱れるときは乱れる 作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。 徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。 よろしくお願いいたします。