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第六話 狂犬と暴君のいる素敵な職場です
37※
「ふ、っ……中、熱い……我慢できねぇ……早く抱かれ、てぇ……っ」
そうだ。俺は身体だって、お前なしじゃいられねぇよ。奥が疼いて、切なくて、欲しくてたまらないんだ。
──他の男によそ見しないでくれ。
そうやって心の中でゴネ繰り回していた駄々はいつも口から出ないし、心の中ですら言い訳をして意地を張り、何一つ強がらない素直な自分になんてなれっこない。
それが俺という人間なわけだが、どういうわけかアルコール受容体が本気を出して一定の血中濃度を超えると、ご覧の有り様。
「俺を、気持ちよく、してくれっ……俺で気持ちいいって、言って、三初ぇ……っ」
「ふっ」
口元を覆って吹き出した三初の上機嫌に気づかず、必死に〝三初好みの誘惑〟とやらを模索したりするのだ。
「しょうがないな。鈍感な先輩に、特別に気持ちよくなる方法を教えてあげますよ」
「ん、ん、く」
模索の甲斐あってか、三初は半べそをかいて鼻をすする俺の尻をペチンと叩き、体の上からどけるように指示をした。
素直にねだっても全然ダメだと言う三初が答えを教えてくれるということで、俺は言われるがまま四つん這いになり、ベッドの上にへたりこむ。
すると今まで受動的だった三初はようやく起き上がり、ベッドヘッドに背中を預けてゆるりと身構えた。
それからベッドの下を指差して「先輩、おもちゃ箱取って、開けて」と言う。
ニンマリとしたいつもの笑顔だ。
怒ってはいないが、怒っていたから俺を今いじめている。
理由をつけて俺にお仕置きしたいだけかもしれないけれど、構い方も虐め方も同じな三初の真意はわからない。
俺はオドオドと様子を伺いながら、ベッドの下から箱を取り出し、三初の足の間ににじり寄った。
移動で体に力を込めると、トロ……と太ももをローションの溶液が伝う。
剥き出しの下肢が恥ずかしいがそれよりも早くいつものように触れてほしくて、カポッとフタを外した。
「三初、あ、けた、ぜ」
「うん、イイコ」
「……ん」
頬を指先でなでられただけなのに、むず痒い腹の奥が嬉しげに鼓動するのがわかる。
なんでもないような言い方だが、そう言われるとやはり気分がイイ。
けれど許されたと思った俺が三初の体に抱きつこうとすると、細めた瞳の視線だけで動きを制された。
「ぁ、なんで」
「理由? そうですねー……半泣きで感じるあんたの顔がイイってのと、先輩がヤケ酒するほど拗ねてた理由も聞いていなければ、俺がお仕置きした理由もあんまわかってないっぽいんで、続行?」
まるでコーヒーのように苦味のある言葉が、低く、されどチョコレートのように甘い、色気のある声で発される。
火照った頬を手のひらで包み込むように挟まれ、ハチミツ色の瞳が怯えて震える俺の顔をじっと覗き込む。
「っ嫌だ、お仕置き終わっただろ……? 俺、優しくされたい、拗ねてる……ちげぇ、俺は……っ嫌だ、しねぇ」
ドロドロに愛されている錯覚すらもたらす酷い拒絶と誘惑に、俺はとにかく回避しようと身をよじって否定した。
嫌だ、嫌だ、お仕置きなんて嫌だ。
さっき終わったじゃねぇか。なにが嫌だったんだ? 意地悪すんなよ。三初は、いじわる。
俺は、ご褒美が欲しい。
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