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第六話 狂犬と暴君のいる素敵な職場です
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──翌朝。
目が覚めるといつもの自分の部屋ではない室内が見えて、一瞬思考回路が止まる。
しかし次の瞬間には昨夜の記憶が蘇り、それと同時に体の言い知れない場所の筋肉と頭へ、ズキィン、と痛みが走った。
「ッ、ツ……あぁぁ……クソ、三十路目前の内側舐めてたぜ……!」
布団の中で丸くなりブルブルと震える。
これはつまり、二日酔い由来の頭痛とセックス由来の倦怠感に、三初の鬼畜プレイ由来の節々の痛みだ。
三十路目前ニ十九歳の俺。
いくら鍛えても内臓は鍛えられない。
体力だけは筋トレの賜物か寝て起きるとそこそこ回復するので、体のコンディションは及第点と言ったところだろう。
意識を失う寸前までは俺を抱いて横になっていたはずの三初の姿は、もう部屋の中にはなかった。
リビングのほうからも物音ひとつしない。出かけているのだろうか。
エアコンの効いた室内はあたたかく、朝の寒さはない。
加湿器も稼働していることからアイツはとっくに起床していて、どこかへ出かけてしまったらしい。
「……んん……」
もぞ、と身じろぐ。
ここは三初の家なのだ。
勝手にうろつくのはなんとなく悪い気がして、帰ってくるのを大人しく待つことにした。
それに俺は寝起きだが三初が暖房と加湿器をつけて行ったおかげで、すでに割と快適な空間である。
ベッドサイドにミネラルウォーターのボトルがあったのでそれに手を伸ばし、一息に半分ほどを飲み干した。
なんつーか……こういうアフターケアはしっかりしてやがるから、鬼畜プレイをされてもどうにも憎めねぇんだよな。
元々扱いの酷いセックスが多かったけれど、特に最近は痛いことをメインにされている。
前は恥ずかしいことだったのは、俺の勘違いだと大歓喜。……ケッ。
まぁとにかく、その痛いことは、だいたい俺を叩くことだ。
口ですることやそれ系の苦しいこともするし、縛りつけて無理な体勢をさせたりもするので、アイツとのセックスは俺の体に結構な負担がかかる。
なのに事後こうしてしっかりケアされると、許しちまった。
端的にこれを、飴と鞭という。
三初御用達の手法。
に、まんまとハマって現在いい気分の俺。
チクショウ、死にたい。
チョロいとかいうアイツの罵倒に反論しにくくなる。
「いや別に誰にでもチョロいとかじゃねぇよ。アイツだけだ。うん。だからいいんだ。良くはねぇけどいいんだ」
諦めとも開き直りとも言える言い訳をして、俺はガバッと起き上がり、ベッドの上で腕を組んだままうんうん頷いた。
そうしていると、玄関からドアを開けるガチャ、という音が聞こえた。
おそらくどこかへ行っていた三初が帰ってきたのだろう。
それほど時間もかからず、寝室のドアもガチャリと開く。
「おけーり、み、……」
「…………うん?」
しかし三初だと思っていた俺は──ドアを開いて入ってきた人物に声をかけ、ビシッ、と石化した。
柔らかそうな淡い黒髪に、背の割に華奢で線の細い体。
大和撫子を男にするとこうなるだろうと思う、中性的で繊細な顔立ち。
それは忘れもしない、謎の先輩。
「あなたは誰ですか? ここは要くんのおうちで合っていると思うのですが……ね?」
自然険しくなる俺の眼光も気にせず、怖いもの知らずにも笑顔でベッドに近づいてくるのは、紛れもなくあの間森先輩であった。
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