誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

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閑話 嫉妬×監禁×自堕落=最低カレシ

12(side三初)



「……っぁ……み、みはじめ、……」

 部屋の中がシンと静まり返ると、小さな声で名を呼ばれる。

 三初の姿を視認できないまま与えられる不安と痛みに、怯えているのだろう。

 そしてそれによって半端に滲む理解不能な快感で、反抗心なんてすぐに崩れていく。

 今の御割がいつもどおりの態度を取れるのは、三初が優しい時だけだ。

 冷たくされると、オロオロと焦り、三初を求めて寂しがる。

 そういうふうにしつけた。
 だから三初は声以外、すこぶる愉快で上機嫌だったり。

「どけろ、早く」
「ぅ……な、まだ、怒ってるのか……ご、めんって、」
「先輩」
「……っ、わか、た……」

 普段はしたいでしょ? 言って? と誘うように話す三初が、冷たく命令するだけで、相当効果がある。

 見かけだけは仏頂面を装ったが素直に腕を下げた御割に、三初はしゃがみこんで、チュ、とキスをした。

「ン」
「くく、偉い偉い。やればできるじゃないですか」
「は……」

 従った時は、とびきり甘い声でグッボーイと褒めてやる。

 チュ、と再度触れるだけのキスを落として顔を離すと、相変わらずのへの字口がモニモニと照れくさそうにつぐまれていた。

 わかりやすく嬉しそうである。
 本当にチョロい。

 皮の目隠しで目が見えないのが残念だ。

「わかってないのに謝られましても、って昨日も言ったでしょ? 先輩の選択肢は俺の気持ちを理解するか、監禁プレイを乗り切って手打ちにするか、二択なんですって」
「ん……ん……」

 首を上げて三初を見つめる御割の桃色の頬を、つんつんとつつく。

 嬉しがっているのと、ボディクリームの媚薬が効いているのだろう。

「わかんないなら、もっとわけがわからなくなればいい。俺とダメになるコト、しましょ」
「ふっ……」

 いいタイミングで誘いをかければ、御割は熱に浮かされた顔色でコクリと頷いた。

 ほら、やっぱりイイ顔しちゃってる。
 腕で隠すなんて、もったいないわ。全部見たいし、全部ひとりじめ。

 普段のイカつい形相も好みだが、たまにはか弱い子犬のような姿になってしまった腑抜けの恋人も、アリだと思う。

 三初は手にした首輪をカチ、と御割の首に巻き付け、顎の下を擽ってやった。

「んっ……お前、お、怒んの、やめろよ……」
「ん? あぁ、嫌われたかもって思ったんですか?」
「っンなこと、っ……ぅう……」

 からかいながらグッとリードを引くと、犬の散歩のような体勢に疑問を抱かず、御割は三初の後をついて四つん這いで歩く。

 いやはや。ずいぶん飼い犬が板についてきたらしい。

(好きだからやだったんでしょ。これはまぁ、ただの腹いせと趣味だけど、無駄な心配だよなぁ)

 内心で愉快に笑みながら素知らぬ顔で歩き、ベッドに腰掛けて「マテ」と声をかける。

 床にお座りの姿勢で止まった御割は不満そうにしているが、逆らうと突き放されると学んだらしい。

 三初が全ての世界で抗うほど馬鹿ではない。

「でも、ま……答えを教えないのは、俺の悪い癖ですから、特別に教えてあげようかな……」

 二日も調教を楽しんでおいてなにを言っているのやら、というツッコミはなしにしよう。

 御割の顎を鞭の先でクイ、と上げ、三初はニンマリと愛しい飼い犬に微笑みかけた。

「俺の嫉妬のボーダーラインは、俺の前でよそ見することです」

 そんな性質だから──目隠し監禁プレイは、ただの〝こっち見て〟という構ってアピールなのだ。

 まったく。
 か弱い子猫で参っちゃうね?


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