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第七話 先輩マゾと後輩サドの尽力
02
「三白眼の封印ってなんだよ。生まれつきのもんを封印とかできるか。テメェが封印されろ生まれつき悪魔暴君」
「生まれつきガラ悪い駄犬よりマシ」
「だから顔関連はほっとけっつってんだろコラ。それに笑えって言うけどな、お前俺の愛想笑い嫌いじゃねぇか」
「大嫌いですよ? 俺は見たら反吐が出ますね」
「ふざけんな死ね」
お互い社会人らしく従順に前を向きながら声はボソボソと罵りあい、足元はタップダンス並みの戦争を繰り広げる朝礼。
まぁ一応、コイツが俺の表情が好きなだけで顔が好きなわけではないことは、不機嫌な時に愛想笑いをしただけで胸ぐら掴まれたクリスマスでお察ししている。
俺の顔を貶すくせに愛想笑いは嫌いなんて、どうしようもない暴君だ。
イケメンに生まれたからって好き勝手言いやがって。この顔だけ大魔王が。
なってみろよこの顔に。
小学生の時点で既に女子に泣かれたことがあンだぞ。あだ名はヤクザ。極道。若。
あとは人混み割り機御割くんだ。
中学を経て、体が成長しきった高校では完成された眼光を身につけてすっかり〝なんか怖そうな人〟にカテゴライズされるハメになり、今に至る。
その頃には気が強くお気楽な男友達と友好を築いていたのでボッチではなかったものの、おかげでそうじゃない人との付き合いが壊滅的な下手くそへと育った。
コンビを組んでから行動を共にすることが多い三初はそのあたりを、高校からの幼なじみである冬賀に次いでよーくわかってる。
にも関わらず、安定の罵り。
いちいち癪に障るやつだ。
俺は踏み合いで痛んだ足をプラプラと揺らして、フン、とそっぽを向いた。
──朝礼が終わると、そのまま課内は日々の業務へと移行する。
俺と三初は現在、これといって主体になる新規の企画を進めていないので、初夏向けの企画を主体になって行っているアクティブ勢を横目に季節やイベントの関係ない企画の業務をするのが平時の仕事。
こういう下準備期間は主体コンビがたいてい生産工場やサブの下請け、販売先へとあっちへこっちへ出張に旅立つ。
イベント打ち出し本番前のやつらは逆にデスクにかじりつき、最終確認と段取りを決めて各所へ伝達。
まあとにかく、そういう新しい企画を考えて案が通るとやりがいと評価は上がるが、ものすごく忙しいってこったな。
なのでその間、手の空いているコンビが通常業務をなんとなーくやることになっているのだ。
報告会の予定を組んで資料の原本を作ったり、恒常企画をこなしたり、その他もろもろ。ひと月かけない単発企画とかもな。
今で言うと、俺と三初とその他数名。
ほぼ毎日決まっている業務なので、三初はだいたい午前で自分の担当分を全て終わらせる。俺を通して助っ人を頼まれても、小一時間で片付けた。
効率厨ここに極まれり。
そんなサイボーグみてぇなやつとゼッテェ仲良くなれねェ、と思っていたものだが──事実は小説より奇なり、だ。
今では俺の恋人である。
秋が近づいた夏に始まり冬に実った渋柿的なものだけどよ。
──まぁ、渋柿だってやりようによればそれなりに甘くなるもの。
なんとなくそんなことを考えて若干頬を染めつつ唇を尖らせ、鬼気迫る勢いで仕事をしていると、あっという間に昼休みの近い時間になった。
「御割先輩、そういう顔で仕事してんのは飼い主として感心しないなー」
「まだ人様のご尊顔に文句付ける気か鬼畜トレーナー」
できた資料を全員のデスクにバサー。
各種データを同僚に転送。コピーは依頼待ち。入力発注予定外のトラブルまで余すところなくバスター完了。
日報を書いて帰るくらいしか仕事が残っていない通常運転の暴君が、パソコンと格闘する俺の顔を覗き込みながら、淡々とクレームをつける。
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