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第七話 先輩マゾと後輩サドの尽力
06
「喧嘩はしょっちゅうだけど、それが普通ってか、割としっくりきてるぜ」
不貞腐れた顔を作りつつも、小声で呟く程度に言葉を重ねる。
ノロケってヤツではないと言っておく。
本当に。うん。
別に……言いたくなったわけじゃない。
俺は俺の不器用なところを短所だと思っているから、ああやって受け入れられると、そりゃ嬉しくなるってもんで。
それが恋人だったら、余計に好きになるってのは、当たり前だろ?
多少、いや結構なやり方でワガママを言われて、わかりにくいアイツの行動や言動にいつも振り回される。
そういうところにムカついてキレて、でもそれでも離れないのが、俺がアイツに返せる好意の形、とか、もにゃもにゃ。
当たり前だから、おかしかねぇわ。
ドツボにハマってもねぇ!
そう言うと、冬賀は微笑ましげに頷いて俺に親指を立てた。やめろ。そういうんじゃねぇんだ。俺のガラがなッ!
「仲睦まじくてよきよき。まーでもド変態に恋人狙われてるってのは、それ、結構危なくねぇか? ダチとしては気になるとこよ。三角関係ってやつ」
「三角関係ェ?」
「そ。シュウは元々ゲイでもバイでもなかったわけで、男と付き合うのも初めてだろ? セクシャリティってのは末永く考えると無視できねぇとこだし、体の相性とかもさぁ……言っても男は頭と下半身、思考回路別だからなぁ~」
「は、いやンなこと、あー……? まぁ確かにアイツは、……あー……。俺もそれは、……あー……」
「ありゃ? そこそこ有り得る?」
そこそこどころかなかなか有り得る。
とは言えねぇ。
なぜならアイツと俺は体始まり。
さらに言えばフリーだった頃の俺は「気持ちいいからまぁいいか」という思考の元、グズグズにされるたびにものの見事に流されてきた。そして惚れた。なんでか。
なので同じくそういう関係になった相手に乗り換える、もしくは相手に惚れられることは、有り得そうな展開だった。
俺にも同じことが言えるが、先のことはわからない。
けれど取り敢えず今は他を考えてはいないので、大丈夫。
つーかそうそう男に掘られてたまるか。
掘るのも勘弁だぜ。
俺は男がイケるようになったというより、三初 要というドブにハマったドジな男、というだけである。
曖昧な顔で眉間にシワを寄せると、俺の悩みをキャッチした冬賀がうーんと唸り、次いでポン、と拍子を打った。
「超絶テクを身につけるんだよ、シュウ」
「脳みそがそばつゆに浸ったのかオイ」
「従兄弟のゲイバー、電車でそんなかからないとこの歓楽街だから、現場リサーチ行くしかねぇぞ~」
「よしわかった。テメェは取り敢えず耳鼻科に行って俺の声が聞こえるようになってから出直せ。話はそれからだ」
俺は馬鹿げたことを言う冬賀の頭をバシッと軽く叩き、伝票を手に立ち上がって、レジに向かう。
間森マネージャーがどんだけ床上手ないし、三初の好みのプレイというものをできるド変態だったとしても、問題ない。
アイツが好きなのは俺なので、気にするこたねぇんだ。
「……うん。……いや、いや。飽きるって、まだ付き合って四ヶ月くらいだし……そもコンビ組んで四年、……もう四年目かよ……!」
──……が。
好かれているとわかっていても、多少は未来が気になりまくる。
それが世紀の意地っ張りで恋愛ベタを拗らせた俺の、どうあがいても変えられない生まれつきの性質なのであった。
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