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第七話 先輩マゾと後輩サドの尽力
10(side三初)
ジムに到着し、好きな場所へ別れる。
ガラス張りのトレーニングルームから、前方階下にある温水プールはよく見えた。
やけくそになってひたすらクロールし続けている駄犬を見ながら背筋を鍛えていた俺は、ついでにレッグプレスもしておくことに決め、マシンを移る。今日は背筋と足。朝走ったから有酸素運動はいいや。
……まあ、百八十越えの成人男性を抱くこと自体が、結構なトレーニングな気もしてるけどさ。
正直な話、ね。
護身術的な面でも鍛えてるからあっさりマウント取って押さえ込んでるように見えますが──あの人、すっげー力強いんデスヨネ。
割とガッツリ男なんで。
抱かれるためにイイ体してるわけじゃないってこと。
かと言って本気の抵抗をサクッとねじ伏せるのが楽しいので、ただただ従順に躾られて抵抗をしない先輩というのもつまらない。
となると自分を鍛えるしかないのだ。
ちょこちょこ弱点突いて崩したりね。ジムの頻度上げてんだよ。地味に。夜中。
「あー……身長若干負けてんのも、なんかヤダなー……なんで鍛えてんだよ……もっと弱って、甘ったれた糖分バカになればいいのに……はー……駄肉に塗れた豚でベスト体型なのにさー……クソ、めんどくせぇなー……」
ギッコギッコと寝そべりながら足腰と体幹を鍛えていると、負荷がかかっているせいか余裕のない呼吸に合わせて、脳内で思っていたことがボソッと漏れた。
それを聞いていた女性会員二人が、そっと引きつった笑みを浮かべて距離を取る。
お、声かける前でよかったね?
たぶん無視したけど。あと俺トレーナーじゃねぇから残念お門違い。
首から下を鍛えつつ、脳は思考に費やすトレーニングタイム。
「なんかなぁ……甘やかしたいんだけど、クソ虐めたいし、怒らせて泣かせたいけど、ネガティブ系で泣かれるとなんか焦るし、どうしろってんだよなぁ……」
間森先輩やたら警戒してたの。
あれもね、盗られると思ってたんだろうなぁ。バカだなぁ。
予定回数をこなしたのでマシンから降り、首から掛けていたタオルで汗を拭う。
プロテイン片手にシャワールームへ直行。もうやめよ。
ロッカーで落ち合う約束の時間より早いが、たぶんあの調子で泳いでいたなら力尽きるのも早いはずだ。
楽しいランチタイムになることを思うと、自然に口角が上がる。
人を恋愛的に本気で好きになったことがそもそもほぼない俺にとって、先輩への執着と愛着がどれほどの本気度なのかは、自分でも不明だった。
でもまぁ、こうして先輩と付き合うことを自主的に続けていて、継続のために思考を働かせているのだから、そういうことだろう。
まったく。
俺のどこがサディストなのやら。
「警戒しなくても、運転中にスイッチ入れるとか危ないことはしませんよ。やっぱりこういうのは人の多いところとか、映画館ってのがマナーでしょ?」
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