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第七話 先輩マゾと後輩サドの尽力
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◇ ◇ ◇
三初との散々な休日を終えた俺は、またしてもマゾヒスト呼ばわりされてしまった。
おかげであの日から、SMとは? という哲学的なところにまで、思考を深みに沈めていたりする。不本意ながら。
仕事をこなしつつも隙間時間にウィキを見たり、コソコソと人間観察をしてサドっぽいやらマゾっぽいやら考えてみたりな。
こんなに人生でSMについて考えたことはねぇぞ。マジで。
痛めつけたいという気持ちも痛めつけられたいという気持ちも、俺の人生には覚えがない。
そんな俺が悩み悩んで出した結論。
三初はサディスト、サドだ。
本人は否定するが、おおむね確定で間違いない。ソースは俺。
曰く、別に俺が痛がる姿や苦しむ姿だけが好きなわけではないのでサドではない。ヤツはそう言い張っている。
なら具体的にはなにがいいってんだよ、と尋ねると、だ。
『なに? んー……頭の中を俺向けの感情だけでいっぱいにさせた時、とかですかね』
だとかなんとか。
具体的っつってんだろ抽象的だわ良さみもわかんねぇわ結論殴りてぇわ殴らせろ殺意いっぱい。なんのヒントにもなりやしねぇじゃねぇか。
しかしそう食ってかかって渋々付け足された説明によると、三初は嫌いな人間は心身ともに容赦なく叩き潰すと言う。
けれどそれでは好きな人間に対して与える嗜虐的な行為も、苦痛、暴力などの面で差がないと言える。
あまりに無差別な愛情モドキだ。
どんな感情が由来だろうと、経緯と結果が全く同じでは相手の理解は得られない。エゴイスティックなガキの癇癪。
『なら根底に相手の得にもなるもの……つまり快感やら興奮やらがないと、ただのイジメでしょ。興味ない。まあそうじゃない人の根底をそうにするのは調教でして。それはそこそこ面白おかしいですが、複雑なんで割愛』
だ、そうだ。
営業部を脅して流させた情報から今後タイアップ企画の可能性がある取引先向けの持ち込み企画書を作成しつつ、自社工場の増設予定地と対応可能生産ラインを新企画関連度別にリストアップしながら直々にご高説いただいた。化け物め。
隣でそのリストと試算したデータを元にお偉方を黙らせて先方に話を持ちかけるための会議用パワポを必死に作成する俺を見もしない。
だから俺も視線をやらず、じゃあサドじゃないお前的に俺に普段してることはなんなんだコラ、と尋ねると、だ。
『ん? あれは……嫌だろうけど本気で無理ってとこまでじゃない、っていう嫌がらせを見極めて、その絶妙なゾーンを広げていく遊び、かなぁ……』
かなぁ、じゃねぇんだよ。
勝手に人様で遊んでンなクソ暴君サディスト野郎が。
『あはは。俺はサドじゃねーって言ってるでしょ? 俺はね、先輩をかわいがってるんですよ』
『あ? 嘘つけ。いたぶってるだろうが』
『それは先輩がいたぶられるのが好きだから。ただ自分の嗜虐心を満たすために虐めてるわけじゃ、ないんですよねぇ。ま、普通に嫌がってるの前提でする時もありますけど』
意味わかんねぇ。虐めるのが好きなのはサドじゃねぇか。
もしくは虐められたいマゾを喜ばせるために虐めたいのがサドなんだろ? 知らんけど。まぁテメェはこのタイプじゃねぇな。捻くれ天邪鬼だからよ。
俺は性根がド腐れな三初の見解が理解不能すぎて、訝しく首を傾げて眉間にシワを寄せる。
いたぶられるのは好きじゃない。と思う。断固そう思う。うん。マゾじゃねぇし。ならかわいがるってのは的外れだろ。だって喜んでねぇんだし。
普通のやつは人を調教したりしねぇ。
泣かせたり、開発したり、縛ったり、叩いたり。
野外でも公共の場でも普通のやつはしねぇんだよ、無自覚ドS。
んでいい加減一発殴らせろってんだ鬼畜暴君アンポンタン。
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