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第七話 先輩マゾと後輩サドの尽力
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しおりを挟む「アイツ顔だけは上等だから、一応相手にはこと欠かねぇんだ。男女どっちもいけるし割とモテる。縛っちまってるなら、……ま、できるだけうまくしてェ。うん。ただの男のプライドってヤツだけどよ」
「は~……二十九年間全く男に興味なかった元ノンケのシュウちゃんにそこまで言わせるって、凄いカレシ」
「いや今も他の男にゃ興味ねぇぞ。アイツが男だったからノンケ卒業しちまっただけだ。正しく結果的にな」
「ねぇ写真ないの? アタシ見たい!」
「聞けよ。ったく……確かこの前会社の飲み会で撮ったやつがどっかに……」
「やだ、なんで数ヶ月も付き合っててツーショットの一枚もないのかしら」
スマホをスイスイとスワイプしていると、なんとも言えない哀れなものを見るような目で俺を見たナーコが「セックス以前にもっとイチャラブしなさいよ!」とプリプリ文句を言った。
なんでって、そういう系の写真に興味ねぇんだから仕方ねぇだろうが。
三初はたまに撮っているが、アイツの記念写真は誰かの弱みや何かに使えそうな証拠写真ばかりだ。
人間よりペットを撮るほうが多い。あと意味のわかんねぇ謎写真。
俺はもっぱら旅先の記念写真やおもしろ系スナップ、美味かった甘味等を撮るくらいで、普段はカメラ機能を開きもしない。自撮りは以ての外。
学生の頃は撮りたがるダチがグループに一人はいたから割とあるんだけどよ。あとこう、プレゼントの包み紙とかはしばらく取っとくぜ。
そんなことを考えつつアルバムを漁るうち三初が写っている課の飲み会写真を見つけたので、「ん」とナーコに画面を突き出す。
「……ほほう……」
「腐れイケメンだろ?」
「そうね。顔で衣食住の全てを賄えそうな人ね。飲み会の集合写真の画素数でこの写りとか実物どんなレベルなのよォ……ッ!」
「なんで悔しがってんだよ。実物もあんま変わンねぇぞ」
俺にはカメラ三初と実物三初の違いがわからないので小首をかしげると、これだから男は! とナプキン噛み締めて憤慨された。クソ、意味わかんねぇ。
だってあんま変わんねぇよ。リアルで会ったことねぇんで妙な期待してんのか知らねぇけど、リアルで会っても画面内と想像を超えない三初が来るだけだぜ。多少立体的なだけじゃねぇの?
三初なんかどこにいようとなにをしてようとどうせ三初で、それは画像サンプルでも現物でも変わらない。
どんな三初も、ただの三初だ。
……。いや新商品のPR企画を画像サンプルだけで考えんのと現物見て食って考えんのじゃ全然違ぇわ。変わるわ。
でも別にアイツ美容院行くっつってなかったし、今日と明日で髪型変わったり体型変わったり顔変わったりしねぇんだから、やっぱそんな違いねぇよな?
うーんと画面の中の三初と記憶の三初を比べてにらめっこしてみるが、やはり違いがわからなかったので、とりあえずそういうことにしておいた。
「……お。単体バージョンもあったぜ」
「見せてッ!」
スイ、と画面を動かしてカメラロールを見ていると、前に本人から送られてきた三初の自撮りがあったので、ナーコにスマホを渡す。
おう、食い気味すぎて怖ぇ。
別に三初の猫耳猫尻尾の猫ポーズなんざ珍しくもねぇぞ。アイツ自主的なおふざけは割との頻度でやるかンな。
アイツあんまそういうの拒否しねぇんだよ。特に恥じもしねぇ。
前に某テーマパークへデートに行った時ふざけて買ったキャラ耳を着けてやったが、しれっとそのまま遊んでいたり。
そんなわけでリアルでも夢の中でも見たことがある俺はイマイチ良さがわからなかったのだが、写真を見たナーコは、無言で目頭を押さえて親指を立てた。
オイコラ。勝手にマインで画像送んな。あとでバレて俺が三初に殺されたら墓前で謝ったって遅ぇんだぞこのメンクイマッチョめ。
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