誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

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第七話 先輩マゾと後輩サドの尽力

29(side三初)

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『土曜』

『土曜は無理。飲みに行く』

『へぇ。誰とですか』

『冬賀の従兄弟と』

『粗相しないようにしてくださいね』

『お前の態度が俺に対しての粗相だろうが』

『じゃあ日曜』

『シカトすんな。お前日曜、殴ってやる』


 金曜日にメッセージにてそんなやりとりを経て、現在。

 俺と先輩は今週、フリーな土曜日を各々過ごすこととなった。

 まーそんな毎週二人で過ごすわけじゃないから、こういうこともある。
 別に束縛はしない俺なので、先輩がどこへ行こうとそれほど気にしない。先輩も大人だ。

 朝から副業関係の作業を終わらせたりジム行ったりやること終わらせて、午後は世話になっている人やら店やらにブラリがてら顔出したり、ツテを保ちながら自分のやりたいことをした。

 割とのんびりしたな。
 街中でゆるキャラのイベントをしているのを見つけたので、気まぐれにツーショット記念撮影したりね。

 日曜日に先輩に写真を見せてあげよう。ついでにVRアトラクション施設にでも連れて行こうかね。

 もちろんゲームは俺の趣味だ。
 先輩はアホだからなんでも本気にしてしまって、必死すぎて疲れ果てる。

 ので、あんまりやりたがったりしない。
 デートという餌で釣った強制連行だったり。

 休みの日に一気に用事を片付けた俺は休眠モードで、食事も風呂も済ませてまったり読書中。

 先輩にはいつ寝てるんだと言われるが三時間ほど寝れば俺はいつも通り動けるので、例え深夜二時近くに寝ても五時には起きている。

 まー普通に、要領はイイと思うけど、最低限下準備をしたり自分や能力を磨いたりはしなきゃだからね。

 時間は有限で、その中でも俺は我慢したくない。

 我慢させられないように、有無を言わせない力をつけるのだ。

 普段からね、結構いろいろやってるよ。気が向いたら興味あることなんでもするし。

 そんな人生において昨今先輩をいじめるのは、俺のデトックスなのである。

 あの人は飽きない。
 好きでいじめるし世話も焼く俺に、仕返しも、お返しも、きっちりしたがるのだ。
 甘やかされたい甘ったれだが、甘やかしたがりでもある。

 そういうところがお気に入り。
 目付きや態度で損をしているあの人には、いいところが結構ある。
 俺とは真逆に根が善良で、流されやすい暴走癖はあっても、そんな残念なところも嫌いにはなれない。

 だから他にも気に入ってるところはあるけど、割愛ね。
 俺がゲロ甘発言とかキモイでしょ。

 あとはシンプルに、普通に甘やかすのがつまらないから言わない。
 甘いことを言ったりやったりやることに、なんというか、反応されるのが嫌だ。デレ期とか枯れてるんで。

 ふと時計を見ると、夜の十時をそこそこ過ぎた頃だった。

 まだ終電はあるので帰りが遅いとは思わないが、普段は帰った時に連絡を入れてくる先輩から音沙汰がない。

 今日はまだ一度も連絡を取っていないし会ってもいないし、明日は約束の日曜日。

 律儀な先輩の行動を予測すると、何時に来るのかと確認を取るはずだ。
 そういう大義名分で構いに来るだろう。

 しかし未だに連絡がない。
 珍しい。

 付き合ってからはそっけないながらも、マメにちまちまぶっきらぼうなメッセージを送ってくるような人なのに。

 俺に構いたくても言葉が思いつかない時は、謎スタンプを送ってきたりする。それもない。


「んー……ちゃんと帰ってるのかねぇ」


 パタン、と本を閉じた。
 本の代わりにテーブルに置きっぱなしのスマホを手に取りメッセージを打ち込むのは、会わない日でも多少記憶に現れる駄犬のせいだ。

 まったく世話が焼けることで。
 こういうのでいちいち確認取るのが、割と面倒なんだよなぁ。
 確認を取らないという選択肢が選べないのだから困ったものだ。

 俺の手間を考えると、体にGPS埋めるのが一番早い気がする。
 勝手につけようかね。

 本気の冗談を考えつつ、メッセージを送る。


『迎えは?』


 これだけで通じるだろう。
 閉じた本を手に取り、それを開いた。

 けれどしばらく経ってからスマホを確認してみると、既読すらついていない。




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