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第七話 先輩マゾと後輩サドの尽力
37※
悔しくて、イライラする。
ムカつくけど認めるしかねぇんだ。
俺は確かに、好きでもない男にこんなオモチャに犯されながら鞭で打たれて罵声を浴びせられても、感じている。
三初じゃなくても、三初に調教された体は敏感に快感を拾い集めてよがる。
痛みや苦しみや恥辱すらバネに、そこで感じる方法を熟知している。
それは紛れもない事実だ。
俺の体は貞淑じゃない。
気持ちいいのなら、相手が変態ゲス上司だろうが鬼畜プラグだろうがなんだって構わないのだろう。誰だっていい。
そりゃあ〝好きな男じゃないと感じるわけない〟とか乙女みたいな夢を一瞬くらいは見たもんだが、実際の俺は好きな男じゃなくても余裕で勃っている。
男に興味ねぇとか言っといてちゃっかりケツは調教済み。まぁ認めてやる。腹の立つ限りだが。
しかしなぜだか体とは別に、心とやらがまるで満たされていないのだ。
中途半端な責め方や雑な触れ方に、不快感が止まないのだ。
意地っ張りの狂犬。結構。
つまらないマゾヒスト。結構。
無警戒で騙されやすい俺が悪いって、そりゃあ構わねぇけどなにがなんでもブン殴るぜ、俺は。容赦しねぇ。
人の口塞ぐ無礼なヤツは問答無用でぶちのめす。ケツに機械突っ込まれてそれがなんだよクソッタレ、鞭がなんだよ百倍で返すわ。殺意だけは無限湧きだな。世界が狂っても折れてやんねぇ。
これは嘘偽りない本心である。
じゃあなんで焦ってんだよ。
──だってアイツ以外が俺にこんなふうに触ンのは、なんか違ぇと思って。
俺は人に触られて不快に感じるタイプじゃないし、意地は張ってもプライドはそんなに高くない。
なのにどうしてこんなに焦るのか、抗うのか、嫌悪するのか。
三初が相手なら、剃毛だろうが映画館で手ぇ出されようがこんなふうに拘束してオモチャで弄ばれようが、心のどこかで〝仕方ねぇな〟と許せてしまうのに。
よくわからないがつまるところ、俺はやはり断じてマゾヒストなんかではなく、至って普通の男ということだろう。
至って普通の──苦痛も快感も恋人以外には与えることを許せない、意地っ張りでつまらない貞淑な男なのだ。
「──ふッ…ぅ……んッ…んん……ッ」
そう結論付けようが現状は変わらず、筋肉が激しく痙攣し始めると同時に中のプラグを、ギュゥ……ッ、と締めつけながら、俺はついに達してしまった。
我慢したぶん張り詰めた屹立からビュク、ビュル、と濃い白濁が飛び散り、今更もう止められない。
力が抜けて、ガク、と項垂れる。
重力に従い顎を濡らす唾液が、床にシミを作っているだろう。いろんな穴からだいぶダラダラ垂れ流しだ。
「うわぁ、痛そう」
「ンッ……ッ……は……ッ」
カチ、と振動レベルが下がる。
鞭の打撃が止み、代わりに絶頂の余韻でピクピクと震える蚯蚓脹れだらけの凹凸した肌を、細い手がなぞる。
これも違う。
アイツの手も綺麗だが、もっと冷たく、人が悪い。
「お尻も背中も太ももも真っ赤ですし、穴は裂けて血が出ています。痛そうというか間違いなく痛いというか、うーん……要くんが調教済みなら相当慣れたカラダだと思っていたので……私、急ぎ過ぎましたかね?」
「く、ッ……んッ……ふッ……」
プラグの動きが完全には止まっていないために、俺はぐったりと横たわりながらも、断続的に声を漏らした。
見えないせいで余計に感度が高まる。熱く腫れた皮膚をなぞられると、悪寒に似た粟立ちが襲う。
声が聞きたいと言って、間森マネージャーは目隠しをそのままに口枷だけを外した。
「っぅ、はっ……ひんれ……しんでくだ、さっ……ん、っ……死ね間森ィ……」
「開口一番上司に向かってなんてことを言うんですか。興奮しちゃいますよ」
うるせぇ三十路が。
出会いから継続的に敬意ゼロに決まってんだろ我が身を振り返れ。
プレイとして程度にサドもマゾも嗜むらしい腐れハイブリッド変態上司は、やはり猫なで声で俺の耳をペロリと舐めて、上機嫌にキスをする。うぜぇ。
力の入らない体で速攻頭突きを仕掛けたが手応えはなく、代わりに楽しげな笑い声が聞こえた。
「チッ……ッん、はッ……さっさと抜けよ、ヘタクソ……ふッ……テメェのヤり方、生ぬるくて、折れてやれねぇわ……ッ」
「ふふっ……いけずやねぇ……?」
懲りずに吐き続ける意固地な否定に、返されるのは粘着質で甘い笑みだけ。
三初が気ままで懐かない強かな野良猫だとしたら、この上司は血統書付きのワガママなお猫様だ。
三味線の皮になれ、と呪いをかけると、ふと、マネージャーの気配が遠ざかった。
「ぁ……? ぅッ…ッ……く……てかも、抜いてくださ」
「よし、御割さんの限界ハメ撮り中イキ動画を撮って捨てアドで要くんに送っちゃいましょう。私両刀なので、御割さんには後で挿れさせてあげますね。念のため変声マスクをつけていてよかった。御割さんのイキ顔だけを映せば私は証拠不十分で言い逃れ可能です」
「な、ン……ッ!?」
「いつも通りしらばっくれれば要くんのことですから、恋人に手を出したくらいで私相手にガチ報復はしませんよ。いつも反応するとめんどくさいって捨て置きますから。そこがまた気が狂うほど取り乱させたいところなんですけどねぇ」
あっけらかんと決定される馬鹿げた提案が馬鹿過ぎて、俺は素っ頓狂な声をあげてバッ! と顔を上げた。
驚きのあまり全身に力が入って逸らしていたモロに感じたプラグの振動を思い出してしまい、逸らしていた意識がまた過敏に反応して「はぁ……っ」とつい熱の篭った息を吐く。
その隙にマネージャーの声は、どんどん俺から遠ざかり始めた。
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