330 / 454
第七.五話 暴君カレシの尽力
03
「あのね、シュウちゃんのカレシくんは〝隠し事をされた〟ってことよりも〝男を性的対象にする人が集まるゲイバーって場所へ知らない間に自分の彼氏が一人で行っていた〟ってことについて怒ってたわけよね?」
「そりゃあ、まぁな」
そこはわかるのでコクリと頷く。
たぶん、そこへ行くなんてやましいことがあるのかと疑ったのだろう。
詳しい動機は聞いていない。三初はメッセージの既読がつかないから冬賀に場所を聞いてやってきた、と言っただけだ。
帰れない理由があるのかもと思った、とは言っていたが、つまりやましいことってことだろ?
それこそ浮気やらなんやらの不貞行為及び火遊び。その心配は理解している。
しかしナーコ目線の見解を聞くにつれ──俺の体はジワジワと体温が上がり、言葉を失う羽目になってしまった。
「それってつまり、シュウちゃんが誰かに手出しされてないか気が気じゃなかったってことでしょ?」
「…………」
「心配だったのは、シュウちゃんの浮気とか悪ノリじゃないのよ。シュウちゃんの身の安全と無事の帰宅。貞操もね。それだけシュウちゃんラブってこと」
「…………」
「カレシくんはバイだけど、元ノンケのシュウちゃんは男への警戒心が薄いもの。素人臭に集る悪い男にお持ち帰りされたり、無知に漬け込まれて騙されたり、相手のその気に気づかずちょっかいかけられたり……自分がそばにいればまだ牽制できるのに、ナイショで勝手に行かれたって知ってかなり焦ったんじゃない? しかも返信なし。そりゃあ相当急いで現場まで来るわよぉ~」
「…………」
「で、まんまとキレイちゃんが手出ししてたからプッツンきちゃったのよね。なんせ彼、シュウちゃんラブだから」
「…………」
「怒ってたのは、シュウちゃんが勝手だからじゃないのよ~。案の定騙されちゃっててショック受けちゃって、要は心配の裏返しじゃない? 無事の反動? 八つ当たり? なんにせよ愛ね。だから大好きなシュウちゃんに酷いことしたキレイちゃんは許せないし、シュウちゃんの無事を確認してなかったから体面気にする余裕もなくて、ブチギレちゃったんでしょ? 涼しさとは無縁な顔で」
「…………」
「必死になるってことはそれだけ大事ってことなの。彼が怒った理由は〝俺がこんなに必死に大事にしてるアンタを粗末に扱うな〟ってことよね~」
ウキウキと全容を聞きかされた俺はその場にやおらしゃがみこみ、俯いたまま無言で頭を抱えた。
全ては三初のガチギレ現場にいた上で先入観のない第三者である、ナーコにしか出せないフラットな解釈だ。
だからこそ信憑性がある。あるから俺は物も言えず頭を抱えている。
曰く三初は、浮気の可能性や隠し事のツケではなく、俺が食い物にされていることだけを心配して、夜更けにわざわざここまでやってきたらしい。
そしてナーコや客の視線も気にせず間森マネージャーを潰した理由は、俺に手出しされて、平静を保てないほど怒り狂ってしまったかららしい。
そんなに心配だったらしい。
そんなに許せなかったらしい。
だがにわかには信じ難い。
ムカついた、嫌だった。そんなふうに言われたがそれもサラッと理屈で言われただけで、そう感じた理由や意味までは詳しく教えてくれなかったのだ。
俺には淡々とキレてたくせに。
朝だって、もうなんでもない顔してたくせに。
「う、嘘だろ……」
「ホントよぅ」
「じゃあアイツ、それを俺に言えよ……!」
照れ隠しに文句を言うが、体の熱はちっとも冷めなかった。
嬉しいのか、俺は。
悔しいけど、嬉しい。クソ、ムカつく、嬉しい。クソ……っ!
赤くなった顔を隠す腕までみるみるうちに真っ赤に染まり、全身隅々が悶え狂いたかなる稀有な感情に満ちていく。
「うふふ。シュウちゃんが眠ったあと改めて挨拶に来てくれた時は、初対面が嘘みたいに涼しい顔したスマートなイイ男だったけどねぇ~」
「好きの一言も言いやがらねぇくせに……」
「それが崩れるんだから、愛よねぇ~」
「俺に見せなきゃ意味ねぇんだよ……ッ」
熱くて熱くてたまらず、顔を隠したまま悪態を吐くことしかできない。
ナーコが茶化しても構わずだ。
素知らぬ顔をしていた三初の一面を人づてに聞かされるなんて、青天の霹靂すぎた。いかん。死ねる。
恥が限界を迎えた俺はついにカウンター席のテーブル下に潜ってしゃがみこみ、ナーコの目から隠れる。
ナーコは「シャイな子だワ~」と笑って店の奥へと消えた。用があるのだろう。好都合である。
そうして一人になった店内にいると、不意にポケットに入れていたスマホが継続的に震え、着信を知らせた。
未だ熱の引かない顔のままモソモソと動き、スマホを取り出す。
画面の文字は〝三初 要〟。
タイミング良すぎかコノヤロウ。
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
またのご利用をお待ちしています。
あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。
緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?!
・マッサージ師×客
・年下敬語攻め
・男前土木作業員受け
・ノリ軽め
※年齢順イメージ
九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮
【登場人物】
▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻
・マッサージ店の店長
・爽やかイケメン
・優しくて低めのセクシーボイス
・良識はある人
▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受
・土木作業員
・敏感体質
・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ
・性格も見た目も男前
【登場人物(第二弾の人たち)】
▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻
・マッサージ店の施術者のひとり。
・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。
・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。
・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。
▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受
・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』
・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。
・理性が強め。隠れコミュ障。
・無自覚ドM。乱れるときは乱れる
作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。
徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。
よろしくお願いいたします。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。