332 / 454
第七.五話 暴君カレシの尽力
05
なんだよその驚きの穏やか声音はッ!
それ急にバカな案件ぶっこんでくる取引先をスルーする時のやつだろッ!
まさかの初対面の時以来のよそ行き対応で承られた俺は、なぜ歩み寄ったのに謎ルートで距離を取られたのかがわからず、唸り声をあげる。
『はー…………取り繕わないと反応できないくらい、ビックリしたわ。マジで全然似合わないこと言わないでくれます?』
「お前取り乱したらビジネス対応になるのかよ。嘘だろ……」
『仕事で取り乱さないんでね』
確かに取り乱したところは見たことねぇけど対処方法が独自すぎるわ。
少し落ち着くともういつも通りに戻ったらしい三初に、俺は腑に落ちない気分になった。
ちょっとは照れるやら喜ぶやら狼狽えるやら、それらしい反応を感じられるかと思ったのに、なんだか思ったような愛情を伝えられた気がしない。
そりゃあ俺だって歴代彼女は普通に名前で呼んでたし、親しいダチはだいたい名前呼びだしで、別に照れも恥も特にねぇけども。冬賀とか中都とかその他。
でも三初を名前で呼ぶことはなかった。
職場でしない名前呼びなら、甘さってもんが多少出ると思ったのによ。
「じゃあお前も俺を名前で呼んでみろよ。ずっと御割先輩じゃ、色気がねぇだろ? 呼び捨てでいいから」
『気が向いたらね。そんなもん、改まって呼ぶものじゃないですし』
「そうか? お前、そもそも俺が寝落ち寸前の時ぐらいしか本気の色気あるやつ言わねぇだろうが」
『それは気が向いてるの。まー……返事されんのが嫌なんで』
「どこまでも捻くれてんな」
普通は返事が欲しくて人は誰かに話しかけるものなのに、三初の理論はよくわからない。ほぼ独り言だぜ。
その後は他愛のない話をして、夜に合流すると言って通話を終了した。
スマホを元通りにポケットにしまい、ふー、と息を吐く。
「……要、か」
改めて口にすると、なんとなく周囲にホワホワと花が飛んだような気がした。
アイツに一番しっくりくるのは、みはじめ、という音だが、かなめ、も割としっくりくる。
似合ってるよな。
みはじめかなめ。
三初のほうが怒鳴りやすいのは、たぶん普段からそっちでキレてるからだ。
だけど要呼びも達成したので、間森マネージャーなんかなに一つ負けることはねぇ。
合鍵は順序があるから保留。
金もかかるしな。あと名前呼びよりやるのが恥ずかしい。俺基準だ。
甘いことをするのは照れくさいが、俺だって一人だと喜ぶくらいはする。
ニマ、と笑って赤い頬をパシンと叩き、カウンターの下から這い出した。
気合を入れて、バッ! と立ち上がる。
「うしッ」
「うふふ。シュウちゃんのカレシ、カナメちゃんって言うのね~」
「…………」
しかしカウンターの向こうにいつの間にやらナーコが立っていたらしいということで、俺はあえなく硬直。
そのままみるみるうちにゆでダコと化して、再度カウンターの下に潜り込んだことをお知らせしておこう。
(く、くそォ……ッ! 金輪際シラフでデレデレとか、絶対しねェ……ッ!)
第七.五話 了
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
またのご利用をお待ちしています。
あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。
緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?!
・マッサージ師×客
・年下敬語攻め
・男前土木作業員受け
・ノリ軽め
※年齢順イメージ
九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮
【登場人物】
▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻
・マッサージ店の店長
・爽やかイケメン
・優しくて低めのセクシーボイス
・良識はある人
▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受
・土木作業員
・敏感体質
・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ
・性格も見た目も男前
【登場人物(第二弾の人たち)】
▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻
・マッサージ店の施術者のひとり。
・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。
・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。
・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。
▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受
・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』
・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。
・理性が強め。隠れコミュ障。
・無自覚ドM。乱れるときは乱れる
作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。
徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。
よろしくお願いいたします。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。