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第八話 シスターワンコとなりゆきブラザーズ
01
五月の頭になると、土日を含めてなかなかの一大イベントが爆誕する。
その名もゴールデンウィーク。
このゴールデンウィーク限定のキャンペーンを打つ企業も数多くあるため、食品会社であるうちも、法人向けのノベルティ作成を請け負っている。
例えばどこそこのイベントに行くと来場者に会場限定トポスプレゼント、とか、ゴールデンウィークの旅行でこちらの航空会社を選ぶと到着時にお子様へお菓子セットプレゼント、とかだ。
その限定パッケージやらセット内容やら付加価値やらをクライアントと企画がすり合わせて、サクッと作成。
まぁいろいろ選べる組み合わせ自由の企業向けオーダーって感じだぜ。
モノ自体は既にあるので割とすぐできる。限定イベントも意外と早い。
限定系って数量少ねぇから冒険しやすいし市場リサーチも楽なんだよ。
コラボとかテコ入れとかデカめのイベント、あと新商品開発なんかは時間かかるヤツで、数ヶ月先はざら。なんなら半年先や一年先でもあるあるが企画課だ。
一周まわって今年のバレンタインに来年のバレンタイン企画の話をしている時もある。マジで感覚狂うぜ。
それを思うと、こういう枠組みが決まった制作企画は、比較的流行り廃りを気にしなくていい素敵な依頼と言える。
ただ一つ。物凄く。物ッ凄く。
菓子類が食いたくなる以外は。
「やっぱトポスはカスタードクリームが一番うめぇ」
「んー……俺はティラミスムースのがまだマシかな」
「いやお前ほぼバリッツのサラダしか食ってねぇだろうが」
ゴールデンウィーク初日の自宅。
リビングにてコメディ映画を上映しながら、テーブルいっぱいに自社や他社のお菓子を並べる俺と三初は、ダラダラとおかしパーティ中であった。
おっと。ゴールデンウィークの初日にいい大人がなにしてんだ、とか言うんじゃねぇぞ。
菓子はいくつになってもうまい。
たまになんかこう、無性に百円単位の菓子が食いたくなるんだよな。
俺が食べているのはトポスという自社製品で、看板製品でもある。
丸い堅焼きビスケットの中にカスタードクリームが入ったものが、ノーマルトポス。三初の言うティラミスムースはその対だ。
パイシートで包んだクリームをビスケットで挟んで焼いているので、表面はカリッと、中はサックリとしている。マジでうまい。
他にも季節によってショートケーキムースやらマロンクリームなんかも出したりして、昔からの主力商品なのだ。
ご当地限定フレーバー47都道府県企画も企画課全員で年数かけてやった。
まぁ多少割高に感じるかもだが発売当時から内容量変更なしの店頭価格で百円代だぜ? 破格だろ。購買部スッゲェ。
ガキの頃から馴染みのお菓子に関われるってのは楽しいもんだ。
だらーんとソファーの肘置きに腕を置いてだらけながら、トポスを貪る自堕落な午前。
俺の膝を枕にバリッツを食べる三初は、基本的にしょっぱい系の菓子ばかり食べている。
膝枕はやらされすぎて慣れたからどうでもいいが、行儀の悪いやつめ。
犬柄ティーシャツにスウェットの俺と違い、妙に肌触りのいい生地感のクルーネックとキレイめなパンツを纏っただけでなぜか様になる三初は、得な男だ。
「…………」
「いて」
なんとなく、三初の側頭部にズビッ、と指を突き立てる。
すると全く痛そうに聞こえない棒読みの悲鳴があがった。
ペロリと指についたバリッツの粉を舐めた三初は、テーブルの上のお手ふきで手を拭き、仰向けに寝転び直す。
「なんですか?」
「別に」
「そ?」
俺の手が取られて尋ねられるが、知らんぷりしてテレビ画面を見つめた。
コメディ映画なので笑いどころがあり、少し吹き出す。
これいいな。原作は小説だったっけか。
「先輩……拗ねてもどこにも行きませんよ。ゴールデンウィークに旅行とか出かけんの地獄なんで」
「イカレてんのか?」
しかし俺の手を胸に抱いてトントンと指先でつつく三初は、なんの脈絡もなくそんなことを言った。
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