誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

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第八話 シスターワンコとなりゆきブラザーズ

09



  ◇ ◇ ◇


 翌日は、一日を使って引越しをした。

 普段から泊まる時用に必需品は置いているので、足りない衣類や仕事道具、使い慣れた雑貨など、最低限の荷物を三初の家へ運び入れる。

 荷造りと荷運び、荷解きをすれば、一日なんてあっという間だ。

 こういう時、相手が恋人で良かったと思う。
 寝室は一つでこと足りるし、プライベートなんてダダ漏れでも構わないからある程度の距離を取れば問題ない。

 俺の荷物は客間である小さめの洋室に運ばれ、とりあえずの住処も与えられた。過去に一人暮らしにしては無駄に広いと思ったことを、訂正しなければならなくなった俺である。

 その後は夕飯を食べながら、居候中のルールも決めた。

 期間内は家賃を折半する。
 雑費と光熱費は三初が払うので、食費は俺が払う。外食は別。

 家事については、できる時にできるほうが率先してやることになった。

 料理ができない俺が洗い物をするということは固定だが、お互い一人暮らしをしていて家事はできるので、そうしたのだ。

 ま、相手の性格はわかってるしな。
 三初は自分がなにもしない状態で人に押しつけることはしない。

 押しつけられるのが嫌いなのだから、当然やらない男だ。
 俺だって自分の世話を誰かに押しつけるのは、むず痒くってできないだろう。

 そしてどこにどの生活用品があるのかや、家電の使い方、生活のルールなんかは、まさかのガイドがついた。

 そういうのをわかりやすく簡略化して図解した資料をPDFファイルで送りつけられたので、いちいち聞かなくても把握して使え、ということである。

 有能な暴君、というのを体現した行動だ。効率厨め。

 兎にも角にも、こうして始まった三ヶ月の居候生活。

 始まって一週間が過ぎ、祝日やら土日やらが重なった長いゴールデンウィークも終わりへ向かう。

 しかし残すところ後二日となってから──俺にはこの生活にて既に思うところが芽生えていた。


「…………」


 三初宅の無駄にふかふかなソファーに寝そべり、マルイを腹の上に乗せながら、ムスッ、と不貞腐れる。

 なにがどうして不貞腐れているのかと言うと、話せば長くなる話だが。

 結論からかんたんに言うと、目的が明確な恋人から日常的な同居人になった三初は──超個人主義だったのだ。


「おいマルイ。お前の飼い主、マジでサイボーグかよ」

「ナーウ」

「全然わかんねぇ」


 犬派なのに猫にやたら構われる俺は、飼い主よりもかわいげのあるマルイの額をカリカリと指先でなでる。

 とりあえず根拠を説明しよう。

 普段俺がここに来る時といえば、仕事帰りに食事に行った帰りに泊まる時や、ここで夕飯を作って食べる時だ。

 いわゆるお家デート、ってやつの時も、やることはまぁ決まっている。

 お互い大人で車もあるとなれば、基本的に外へ連れ出すことも多い。

 とはいえおおむね俺の部屋に泊まったり集まったりしていたから、三初のプライベートをじっくり知ることなんてなかったし、何日もずっと一緒にいることなんて当たり前になかった。

 しかし住むとなれば話は別。

 流石に毎晩ヤッたりしねぇ。
 当然ゴールデンウィークだからって、毎日デートしたりもしねぇだろ? 土日込みでまぁ長ぇし。

 そうなれば三初というのは、元来気ままに生きる生き物である。

 どうにも俺をマルイやナガイと同じように扱うフシが、目立ってきたのだ。




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