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第八話 シスターワンコとなりゆきブラザーズ
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三初は俺が愛想笑いやらよそ行き対応やら気を使って接するとイラつくが、俺は三初が自分は一人で問題ないという態度をとると、腸が煮えくり返ってイラつくのだ。
他人の頼りなんていらない。
別の見方をすると、それは〝他人の荷物にはならない〟ということである。
人の世話は焼いたくせに恋人だろうが弱った姿を見せないドライな傲慢さは、俺が頼りないから頼れないという意味ではなく、一人で解決したいから頼らないという意味。背負われたくない。理由は不明。
だから、俺はそんなに頼りないかって腹立つんだよ。
どんな理由であれその程度の度量しかねぇと思っているなら、舐めるなとキレたいしやっぱフルスイングで殴りてぇ。
まず好きな男を荷物うんぬん思うわけねぇだろボケってのは前提として、それを肯定したとしても殴りてぇ。
バカ。
背負いたい荷物もあるだろ。
俺はな、お前のこと、好きなところも嫌いなところもめんどくさいところも心地いいところも強いところも弱いところも全部ひっくるめて〝ただの三初要〟だと思ってんだぜ。
初めから終わりまで、ずっと。
「俺が好きでこうしてんだって、いいかげんわかれよ。なんでそんな強がるんだ? マヌケ。ぶっ倒れてた時点でグズグズだろうが」
熱い頬をなでて、顎を取り、唇を親指でなぞって、じっと見つめる。
かけた言葉は乱暴でも、声はとびきり優しくしたつもりだ。
ギシ、とベッドを軋ませて顔を覗き込みがてら身を寄せ、可愛がるように視線を絡めて勝気に笑ってみせる。
やい、病人。
てんで迫力ねぇ顔しやがって。
火照った肌と熱で潤んだ瞳に気だるさが増すと、元々甘めな三初の顔立ちには無防備な幼さが滲んでいた。
溶けた瞳がゆっくりと瞬きをする。
少しは考えたようだが、結局思考する力がなく、布団の中に目元まで沈んで狸寝入りを決め込もうとする三初。
諦めんな。中身も子どもかよ。なんの裏もねぇんだから素直に受け取って、我慢せずに弱っちまえ。
「……ゲホ……」
「なんだよ。まだ文句あんのか?」
「…………ありまくりでしょ」
それなりに間を置いて、布団の中からくぐもった声が聞こえた。
聞き取りづらい声で話し始めようとする様子に、耳をすまして待つ。
「……まぁ……あんたがそうしてほしいなら、弱みくらい見せても……いいんですけどね。割と前から、それはわかってたし、今更どうでも……いいんです。別に」
そう言ったきり続かなくなって、ポンポンと布団の上から肩を叩き先を促す。
三初は余計に深く潜り込んだが、ややあってゆっくりと、聞き取りに苦労するほど微かな声が話す。
「謎に暴君だ大魔王だ言われてようが、俺も……ただの男なもんで。……先輩に情けないとこはあんま、ね」
拗ねているのか、不貞腐れているのか、嘆いているのか、悲しんでいるのか、はたまた怒っているのか。
深々と潜り込んでしまった三初の意図なんて、想像と経験則の自己解釈でしかなく完璧にわかったことなんかない。
しかし、とりあえず俺が求めたことは叶えてやろうとしたが、常にいつもの自分しか見せたくない、というプライドがあることはわかった。
普段から誰にも弱みを見せない性分は、もともとこ性格だけでなく、たぶん育ってきた環境か、なにかそうしようと思う出来事でもあったからだろう。
けれど他でもない俺だからこそ、というところの根っこは、男の矜恃。
(コイツ、マジか……俺にダサいとこ見せたくねぇっつう、有り体に言やぁ──〝かっこつけ〟でブッ倒れてたのかよ)
結論に達した途端、ニヤ、と口元が緩んだ。
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