誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

文字の大きさ
348 / 454
第八話 シスターワンコとなりゆきブラザーズ

16



 なんだこいつ、かわいいか。
 意外とガキっぽいんだよな。

 いつもは完璧主義で冷めた思考をしたマイペースな男が、小学生のような恋愛の仕方をして参っている。
 しかも無駄にかっこつけたせいで、普通に風邪引きましたって言うよりダサいことになってもいた。バカだ。

 それがわかると、部屋から出てこない理由を考えなかった自分の鈍さを反省する気持ちと、意固地な三初に対する苛立ち由来のモヤが簡単に薄れていく。


「くく、なんだよ」

「ゴホッ、ゔ、なに……重いですし……」

「あははっ、やべぇ、くっくっ」


 髪がはみ出るくらいを残して布団の塊になっている三初を、潰さない程度に上から抱き込んだ。

 抱き込まれた三初が布団の中で嫌がってもなんのその。

 俺は今、すこぶる機嫌がいい。
 もっと言えば、こいつをめちゃくちゃにかわいがりてぇんだ。


「だぁからせっかく一緒に暮らしてんのに構わなかったのかよ。クールぶりやがって、この一週間ろくに俺に要求しなかったのはそういうことか。ぇえ? 彼氏一人世話してやれますって? 結果風邪引いてダウンしてんだからダセぇなぁ、要ェ~」

「っ? や……名前やめて……」

「あ? もう何回も呼んでんだろ。慣れろよ、要。要くん。カナちゃん。ふっあははっ、カナちゃんはねぇか。くくく」

「そういうんじゃなくて……」

「はっはっは。まぁ、お前が思うほど怖かねぇさ。今日は俺の天下だぜ」

「ラリってんですかね。……なにがヒットしたのか、ゲホッ、も、暑苦しいなぁ……」


 三初は名前を呼びながら急にテンションが上がり始めた俺に、少し困惑した様子だった。

 それも気にせず、俺は布団の塊をぎゅうぎゅう抱きしめる。
 カナちゃんは似合わねぇ。笑っちまう。でもそのくらいかわいいと思ってしまった。要、お前かわいいぜ。

 いつも俺だけが先輩らしく、年上らしく、かっこうつけたがっていたのかと思っていたのだ。

 俺の世話を焼き後始末をつけてなにかとサポートしてくれるこいつが〝弱った姿はダサいから見せたくない〟なんて思考を持っているとは、思わなかった。

 構わねぇのによ。
 俺は今結構、嬉しいんだよな。


「うん。これから俺たちはちゃんと、共同生活していくんだよ。わかったら、今は俺に愛でられてろ。仕事じゃねぇんだ。いろいろ、一緒にしていこうぜ」


 ワシャワシャとはみでた頭をなでたあと、その髪にキスをした。そのくらい俺は浮かれてる。

 しかしキスをされた三初の頭は布団の中に完全に引っ込んで、伸びてきた手が俺の頭をぺんと叩く。コノヤロウ。せっかく甘やかしてんのに嫌がンなよ。

 仕方なく離れてやり軽く布団の塊を叩いて手打ちにすると、引っ込んだはずの熱い手が伸びて、俺の手を緩く握る。


「ま……嫌なわけじゃ、ないからね……」

「でもよ、手ぇ叩いただろ?」

「……普通に、俺はこういうの、慣れてないんで……わかんないですよ。あー……困るなぁ。どうしていいのやら」


 そんなふうに、ゲホゴホ咳き込みながらボソボソ呟く三初が握った手に指を絡めて困るので、俺は反射的にギュッと強く握り返してしまった。

 いや、だって、なぁ?


「テメェ、マジでデレ期かわいい系かよ」

「は……? イカれてますね。クソ老眼耄碌アホかわ系には負けますよ」

「今のはわかったぜ毒舌クソ野郎。お前それ照れ隠しだろ」


 つい思ったことを口に出すと、風邪を引いていようが迎撃モードが標準装備の三初が脊髄反射で俺を罵る。

 こいつ……クソ、老眼、耄碌、アホ、の四段階で煙を巻いてまで〝かわいい〟と伝えてきやがった。
 筋金入りだなチクショウめ。



感想 137

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

またのご利用をお待ちしています。

あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。 緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?! ・マッサージ師×客 ・年下敬語攻め ・男前土木作業員受け ・ノリ軽め ※年齢順イメージ 九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮 【登場人物】 ▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻 ・マッサージ店の店長 ・爽やかイケメン ・優しくて低めのセクシーボイス ・良識はある人 ▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受 ・土木作業員 ・敏感体質 ・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ ・性格も見た目も男前 【登場人物(第二弾の人たち)】 ▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻 ・マッサージ店の施術者のひとり。 ・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。 ・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。 ・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。 ▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受 ・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』 ・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。 ・理性が強め。隠れコミュ障。 ・無自覚ドM。乱れるときは乱れる 作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。 徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。 よろしくお願いいたします。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。