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第八話 シスターワンコとなりゆきブラザーズ
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◇ ◇ ◇
〝料理は三初の担当だから俺にはできない〟
そう言っていた過去の俺よ。
食費を出しているからと言って当たり前に三食手料理を食わされていたありがたみを、今すぐ骨身に刻み込んでごちそうさまを忘れんな。
「この鳥がゆ、クソまずい……ッ!」
ゴンッ、とシンクに頭をぶつけて、自分の不器用さを呪う。
バレンタインに中都の監修を受けながらマフィンを焼いたことでやればできると思い込んだが、自意識過剰すぎた。
きちんとレシピを調べて、シェフが教える簡単レシピ的なものを発見したのだ。
なのに俺が初めて作った鳥がゆは、残念ポイントが目白押しである。
まず、米が汁を吸いすぎてべっちょりとしているのはなぜだ。
おかしい。
そうならないよう、米から炊くレシピを選んだのに。
次に肉クズレベルで裂いた鶏ささみがなんだかパッサパサしている。
全然わからない。
汁に浸かっているのになぜパッサパサになるのかが。
どこからか「出汁を汁と呼んでいる時点から不安要素」という声が聞こえるが、俺の耳には届かない。液体は汁だ。
その次に味だが、喉にいいということでたっぷり入れたショウガの味が、残りすぎている。
一口食べただけで新鮮なジンジャー臭が鼻腔を吹き抜け、今めっちゃショウガ食ってる感が強い。
隠しすぎた隠し味であるごま油と鶏の風味がする、ショウガ味のかゆだ。
「……むしろ俺が作ってたのって、ショウガがゆだったのか?」
書かれたレシピのとおりにやったはずがうまくいかない理由がわからなさ過ぎて、小首を傾げて呟く。
現実逃避とも言う。
三初のエプロンを着けたまま腕を組み、悩ましい気持ちで一人用鍋を見つめた。
これは、不味い。
だが大雨の中外へ出てかゆを購入すると、いよいよもって俺も風邪菌を貰うかもしれない。危険すぎる。
それにかゆを炊くために調理ニ十分、炊飯四十分で、一時間も使っていた。
安直に冷凍ご飯を使うと危険な気がして生米から煮たせいだ。おかげで時刻はほぼオヤツ時である。
俺の腹の虫も鳴くが、三初が薬を飲めず、いつまでたっても解熱できない。
頭も痛いままだ。かわいそうだ。
考え込んだ俺はややあって、冷蔵庫から三初がトッピング用に刻んでおいている小口ネギを取り出し、鍋に散らした。
せめて彩りをよくしようという悪あがきである。そんなことをしても味はよくならない。
妹の面倒を見ながらも家事はしていたので料理以外は苦もなくできるのに、授業で失敗してばかりだったため、料理だけは苦手意識から避け続けてきた。
おかげでこういう時にも失敗する。
俺は肝心な時でもかっこ悪いぜ。
改めて居候生活に入ってからもなんら疑問を抱かず三初に作ってもらうことが当たり前になっていた自分を恥じて、鍋と器、それから薬と飲み物を盆に乗せ、歩き出す。
寝室に入ると、三初はまだ眠れていなかったのか起きていた。
薬を飲んでいないので辛いのだろう。
俺が丸椅子を引っ張ってきてベッドのそばに座ると、無言でのそりと体を起こし、ぼんやりと鍋を眺めている。
「その、なんだ。あんまうまくできなかったけど……メシだぞ。残していいから、食え。ちびっとでも食わねぇと薬で胃が荒れちまうしよ」
そう声をかけると、ぼんやりとしていた三初の視線が俺に焦点を当て、着けっぱなしのエプロンを見つめた。
お前のを借りたんだと言うと、へぇ、とだけ言われる。
なんだよ。そんなに似合わねぇのか? 知ってるわ。
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