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第八話 シスターワンコとなりゆきブラザーズ
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「ゲホッ……手作りですか」
「言っとくけど、危険物発言は却下な」
カポ、と蓋を開けて器に軽くよそい、スプーンを添えて差し出してやる。
素直に器を受け取った三初は、珍しくなにも言わずに一口食べた。
二口目も食べる。静かに咀嚼もしている。その後飲み込みもする。
三口目も食べる。まだ無言だ。あの三初がこの味に突っ込まないなんて、嘘みたいである。
一見普通に見えるショウガがゆは、一口で痛感するほど不味いはずだ。
強火で炊きすぎて水分が飛び残った汁を吸ってべっちょりとしたかゆにショウガ汁をぶっかけた、と言っても差し支えないできばえであることは、自分でも把握済みである。
(うぅん……熱、上がってんじゃねぇか?)
けれど美味いとは言わないが不味いとも言わず、三初は火照った顔で気だるそうなアンニュイな表情のままショウガがゆを食べている。
美味くも不味くもないらしいかゆを真剣に食べ進め続ける理由は不明だ。
最早俺を虐めて遊ぶ体力も語彙力も、丸ごと失ったのだろう。俺がじっと見つめていることにも構わない。
とはいえゆっくりだが淡々と食べ進めるものだから、俺もなにも言わずに見守ることにした。
「…………手ぇ疲れてきた」
しばらく食事を続けたあと、ふう、と息を吐いた三初がそう呟く。
脱力するようにベッドヘッドに頭を預け、俺に器を返した。中身は半分くらい残っている。
「もういらねぇのか?」
「あー……いりますけど……ずっと持ちながら、手をあげてるのがしんどいんで……あとで食べます。ちゃんと……うん。食べます。片付けなくていい……」
ヤバイ、重症だ。壊れ切っている。
プシュウ、と湯気が立ちそうなくらい発熱している三初は完全にオーバーヒートしたようで、普段の天邪鬼が脱げ去り、思ったことをどうにか出力するだけのガラクタとなってしまった。
暴君型完璧超人サドタイプなサイボーグ男が、まるで出来の悪いチャットボットである。こうなってしまっては、三初の修理は俺の手にかかっているだろう。
引くほどバグってやがるぜ。
エネルギーチャージしねぇと、再起不能になっちまうんじゃねぇのか?
つい幼い頃の妹を見ているような気分になってしまったが仕方ない。
俺は風邪菌グを舐めていたのだ。アイツは最強のウイルスに違いない。
「じゃあ、ほら。食わせてやる」
「ゴホッォエ」
使命感に駆られて、受け取った器からスプーンに一口分のかゆをすくい、三初の口元に差し出す。
俺は真剣そのものなのに、三初は強めに咳き込んで嘔吐いたあと、こちらをぼけっと見つめた。いや、見てねぇで食え。
「うぇ、ゴホ、……なんでこう……?」
「なんでって手がだるいっつーから、俺が食わせてやれば解決だろ?」
「はぁ……うん。……理にかなってますね。そうか。合理的だ」
首を傾げたまま頷いたのでズズイとさらにスプーンを差し出す。
三初はあ、と大人しく口を開く。
零すことなくかゆを食べさせると、それをきちんと咀嚼して「先輩、便利ですね」と呟いた。だろ?
「ほれ。あーん?」
「あ」
──三初が風邪を引いてバグってしまったことで、また一つわかったこと。
三初要は、高熱が出るとチョロくなる。
甘えてこそこないが簡単に丸め込まれる三初に、感動すら覚えながら、俺は恥ずかしげもなくあーんをし続けてやった。
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