誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

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第八話 シスターワンコとなりゆきブラザーズ

27



 ──翌日。

 お互いにあれそれと新たに認識と心構えを改め、相手への感情を密かに深めた次の日。

 今は月の昇る夜の十時だ。
 三初が風邪でダウンした翌日の夜ともなれば、ピークを迎えた高熱もどうにか三十七度台にまで下がっていた。

 ま、朝はまだ三十八度台だったんだけどな。ジワジワと治ってはきている。

 だけどフラッフラなのは変わらないので、絶対安静も変わらない。

 このぶんなら一晩眠れば動けるくらいに治っているだろうと思うが、まだ体を休めておいたほうがいいだろう。

 なのでもちろん、二日目の今日も俺の天下は続行したわけだ。

 俺は今日も今日とて三食せっせと残念な食事を作ったし、家事も一通り終わらせ、三初を風呂にも入れてやった。

 ちゃんとあーんとやってやったぜ。
 多少腑に落ちない顔をしていたが、体を動かさなくていいのは楽だとわかっているらしい。

 家事をしている間は一人で暇だろうから、俺のことわざ辞典や漫画を貸してやった。

 最近してる箱庭ゲームも教えてやったり。なかなか充実した二日間である。

 ちなみにそのゲームは〝こんがりワンコの焼きたてファーム〟というものだ。

 家畜を育てたり農作物を育てて、その材料で個性的なアニマル型のパンを作って売るんだぜ。パン定食を作って、カフェの営業もできる。

 主人公の黒しばはこんがりどころか焦げすぎて一見まっ黒い塊だが、世話焼きで仲間思いなイイ犬だ。

 黒しばはいろんな犬たちと協力しあって、ファームをこんがりと盛り立てていく。ってのがストーリー。

 なかなかかわいいサブキャラもいたりするんだよな。

 ファームの庭にははちみつにゃんこというキャラがいて、こいつははちみつ色のスマートな猫だ。

 猫なので犬の黒しばチームとは仲間ではないが、なにかと助けてくれるお助けキャラである。
 無制限に行えるミニゲームをするとランダムに金やレア材料をくれる。

 いちいちセリフが嫌味でムカつくのにお猫様効果なのか、ユーザーには人気があるのだ。

 例えば『その程度の腕前じゃにゃんとも言う価値がにゃーですにゃ』とか、『あくせく依頼をこにゃさにゃーと黒しばファム長は野良わんこ一直線でしょうにゃ。ま、ネコには関係にゃーねぇ』とか言ってくる。

 で、黒しばファム長は『わんとは言えるわん! ミニゲームは遊びなんだぞ。遊ばせてほしいわん。ぐるる』とか反論するのがお家芸。

 文句を言われても『はちみつにゃんこがにゃーと鳴いても知らないわん。おれが野良になったって、ネコにだけはならないわん。ぐるる』と言い返すので、黒しば推しの俺もスッキリだ。言われっぱなしは性にあわん。

 それでも嫌味は続くが、言ってもはちみつにゃんこはファームの庭から出ていかないので、変な猫である。

 やってみりゃ結構ハマるぜ。
 基本は放置ゲーだから無理はない。作物も時間か、もしくはタップで早く育つしな。やりたい時に好きなだけ感よ。

 そうアピールしつつ三初にもやらせてフレンドになり、余っていたファームの装飾をプレゼントした。

 なぜかインストール早々黒しばの頭を無言でゴリゴリにタップしやがるから、黒しばをかわいがる俺とじゃれ合いの言い合いが勃発。

 俺がちょーっと洗濯物を干して掃除機をかけている間に、性悪野郎はファームを盛り立てやたらめったら豪華にしてやがった。

 嫌味なヤツめ。コイツはどこでもガチる。大人気ねぇんだ。
 今は無課金でも、課金し始めるとヤバそうだな。




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