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第八話 シスターワンコとなりゆきブラザーズ
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まぁとにかくそんなふうに遊んだり和んだり喧嘩したり昼寝したりしながら、付きっきりの看病というやつをした。
その甲斐あって、三初の体調は着々と快方へ向かった。
今はいつも通りに近いくらい、壊れていた人格が修復されている。
残念ながら底意地の悪い性根バグは据え置きである。善良修正パッチが欲しい。アーメン。
ブオオオン、と轟音と温風を撒き散らしていたドライヤーのスイッチを、カチ、と切る。
ソーププレイはしなかったけど、いつかの宣言通り丸洗いしてやったんだぜ。
三初は眼光で触るなと言っていたが、口には出さなかった。
心底不本意そうに黙ってはいたが。
この変化は俺の言う〝ちゃんと頼れ〟を、三初なりに遵守しているのだろう。
それがわかっているなら、気分は上々。
ドライヤーを所定の場所に戻して寝室に戻ると、三初は俺の寝るスペースを空けてベッドで丸くなっていた。
「よし、寝るか」
「ご自由に」
当たり前だが、三初の隣に潜り込む。
ご自由に、ってのは了承なんだよ。
当然のように頭を抱き抱えられて、やはり俺の視界は三初の鎖骨一色だ。
普段はこんな抱きしめられながら寝ることはねぇけど、昨日もこうやって寝たしな。
甘えを解禁してちょっとずつしてほしいことを求めるようになった三初は、風邪菌に侵されてちょうどいいくらいだ。
でもまあ、あんまくっつかれっと……うん。心の距離感も縮まったので、こう、あれだ。
ムラムラするから、困んだけどよ。一週間は抜いてねぇし。
ずっと一緒にいて何日も抱かれねぇのは今じゃ珍しいから、余計に勘弁しろと思う。俺、こいつの匂いとか結構好きなんだわ。言わねぇけども。
「先輩」
「んー?」
「全然眠くない。なんか話してください。先輩のご家庭のこととか、幼少期の話とか聞きたい。洗いざらい聞きたい」
「テメェはなにかと唐突なやつだなコノヤロウ」
毎日ほぼ三時間しか眠らない男である三初の脈絡のないワガママにグイーンと意識を戻され、呆れる。
別に寝るまで話すのは構わねぇけど、やっぱ基本的に気まぐれなんだよな。
俺の昔の話なんかにどうして興味を持ったのやらと訝しむが、夢で自分の過去を思い返すことがあったから、という答えは俺の知らない経緯である。
(昔話なぁ……つってもこれと言って語るエピソードとかねぇと思う……一般家庭の一般幼児だし……)
うーんとしばし考え込みつつ、とりあえずとりとめのない話を思いついた順にとつとつと語ってみることにする。
「あんま話すほどのことはねぇんだけどよ……あぁ、そうだ。俺と美環は半分しか血が繋がってねぇんだ」
「や。割と一大事じゃないですか、それ。人生的に」
「親父の再婚相手が今の母親で、できちゃった再婚なんだよ。でも親父が外に女作ったってんで慰謝料ふんだくって別れたから、俺は母親に引き取られてチビの時から三人暮らし」
「やっぱ割と一大事でしょ」
取り敢えず俺の人生で起点となった出来事を話してみると、呆れた三初は俺の頭をワシャワシャと乱暴になでた。
風邪菌に喉をやられた名残でガラガラと荒れた声だが、そこには哀れみも悲しみもなにもない。
そのほうが気が楽だ。
話しやすくていい。
こういうのは昨今よくある話だってのもあるが、俺が気にしていないのだからサラリと受け取ってもらえたほうが気兼ねなく語れて助かる。
解決しているなら過ぎたことはもういいタイプである俺の考えと、三初の考えは一緒なのだろう。
ちょっとした思考の共通点が見つかって密かに嬉しくなったので、額でゴン、と三初の胸に軽く頭突きをした。
「ちゃんと養育費は支払われてたぜ。母さんはバリキャリだしな。だから俺も奨学金と働きながらで一人暮らししつつ大学にも行けたし、俺の仕送りで美環も大学に行けた」
「へぇ、歴長いんですね。だから料理以外の家事は慣れてるわけですか」
「おう」
感心する三初に、俺は少し照れくさくなりつつも頷く。
六つも離れていたらまぁそうなる。
学校へ行く時に保育園に連れて行って、時間になったら迎えに行っていた。
食事は母親が出来合いのものを用意してくれていたので、それを食べさせて、風呂に入れて、遊んでやる。
小学生の頃はずっとそうだったから、あの頃は友達がいなかった。
目つきも悪かったしな。
今よりずっと、ガラも悪かった。理不尽に誰彼と威嚇していたのだ。
若気の至りの、物凄くダサい時代。
だから基礎がなくて、余計人付き合いが下手くそになっちまったんだけどよ。
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