375 / 454
第八.五話 オワリ兄妹のある日
02(side美環)
「ねぇねぇ、今日は三初さん来ないの?」
「あ? あいつは来ねぇよ。水差す気はないって言ってたけど。……俺は別に、構わねぇっつったんだけどよ」
「同じく是非ともだよ~!」
「んじゃあいつに言え。フン」
ブスッ、と不貞腐れながらへの字に唇を曲げて三初さんの文句を言うにぃを見て、私は三初さんの来訪を支持する。
だってね。にぃの「別に構わねぇっつったのに」は「俺は一緒のほうがよかったから」って意味だからね。
わざわざ自分は構わないアピールするイコールそっちのが嬉しいって、単純でしょ? 今は残念がってるの。
(へっへっへ。にぃのベタボレな恋人さんは、私だって大好きなんだぜー)
もちろん同じく嬉しい私は、脳内に三初さんを思い出してうししと笑う。
三初さんは、にぃの彼氏である。
モデルさんです? ってくらいにキレイめ美形でスタイルが良くてなにかとそつがなくて、マグカップを持つ手つきですら余裕を感じる人だ。あといい匂い。
最初は私、初対面のハイレベルイケメンに「お兄さんとお付き合いしています」なんて笑いかけられたものだから新手の結婚詐欺師かも!? なんて勘違いして、すごく威嚇してしまった。
んだけど、酔っ払ったにぃが三初さんの言うとおりむちゅーっとキスをしたので、疑惑が停止。
更に抗うことなく三初さんの好きなところトップスリーまでボソボソ発表し始めたため、疑惑は晴れて真実となり、私は深々と這いつくばって謝罪をした。
よく考えると、うちの兄は結婚詐欺師に絆されるほど気が利かない。
意地っ張り過ぎて実はホイホイ懐かないしね。ちゃんとラブ!
ちなみににぃ曰く三初さんの好きなところトップスリーは、一位から〝口移しでお酒を飲ませてくれるところ〟〝色ご飯でおにぎりを作ってくれるところ〟〝温泉卵が美味しいところ〟らしい。
私にはよくわからないけど、たぶん〝それに至るまでの過程全部好き〟か〝なんでもない行動でも好きだと思う〟のどっちかかな?
妹の翻訳は完璧なのだよ。
でもにぃは酔っ払ってたからなぁ。
酔っ払ったにぃは、酔い度によっては凄く相手が大変。
ちょっと酔ってるとよく喋るくらいだけど、そこそこ酔うと眼光三割増しで誰も寄りつけないし態度悪いし黙り込むし、淡々とお酒を飲み続ける。
で、すごーく酔うと突然あんなふうに人格ぐだぐだになっちゃうんだ。
普段素直に言わない人ほど酔うと本性が出るって言うもんねぇ。
照れ屋だから自動的に乱暴な言い方で誤魔化すし、負けず嫌いだからなんにでも強がるし。
それに昔からお母さんに迷惑かけないようにって責任感抱いててにぃは我慢ばっかりしてたから、酔うと好きな人にメロメロに甘えちゃうみたい。
美環大好き、どっかいっちゃやだやだって、いっつも言ってるよ。仕方のないにぃだね。
三初さんはそんなにぃの挙げたトップスリーを聞いて、にぃの頭をワシャワシャっとなでていた。
なにも言わずにただ笑ってたのは、ご機嫌? あれでよかったのかな?
んんっ。話が長くなっちゃった。
なにが言いたいかって言うと、にぃは三初さんが大好きで、三初さんもにぃが大好きみたいってことなのさ!
「だいたい、俺が住んでた時は散々来てた部屋なんだから今更だろうが。家族じゃないしって、一緒に住んでンだから同じようなもんだろ?」
私が考え事をしていた間も、にぃの三初さんへの不満語りは続いていた。
にぃの言ってることは回りくどいんだ。にぃは世紀の意地っ張りマンだからね。
要約すると〝にぃとしては三初さんももう家族と同じくらいに思っているから、気を遣われるのは嫌だ〟ってこと。私は優秀な翻訳機なのです。
「うししっ。むしろわざわざ来てほしいなぁ、私的にはもっと仲良くなりたいっ」
「はぁ? なんでお前そんなあいつのこと気に入ってんだよ」
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
またのご利用をお待ちしています。
あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。
緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?!
・マッサージ師×客
・年下敬語攻め
・男前土木作業員受け
・ノリ軽め
※年齢順イメージ
九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮
【登場人物】
▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻
・マッサージ店の店長
・爽やかイケメン
・優しくて低めのセクシーボイス
・良識はある人
▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受
・土木作業員
・敏感体質
・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ
・性格も見た目も男前
【登場人物(第二弾の人たち)】
▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻
・マッサージ店の施術者のひとり。
・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。
・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。
・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。
▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受
・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』
・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。
・理性が強め。隠れコミュ障。
・無自覚ドM。乱れるときは乱れる
作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。
徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。
よろしくお願いいたします。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。