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第八.五話 オワリ兄妹のある日
03(side美環)
抱き着いたにぃの腕をブンブン振って笑いかけると、にぃは怪訝そうに私を睨む。
「そんなのにぃの恋人さんなんだから当たり前じゃんよっ。今までの彼女さんと違って、にぃから好きになったみたいだし」
「!? そ、っ、俺が先に好きになったとは限らねぇだろッ」
「やぁやぁ! どっち始まりだとしても、今はにぃもベタボレなんでしょ? 好きになったことは否定しないんだもん」
「アホ、俺の言葉を読み解くなッ」
嬉しくってにへにへと笑いつつ微かな本音を引き当てた。
私からすれば簡単な問題である。
昔からにぃは相手を自分から好きになって告白するのではなく、告白されて付き合ううちに好きになっていくタイプだった。
なので見ていて温度差があったのだが、三初さんと一緒にいる時のにぃは自然体だったし、私と三初さんを選べないくらい大事にしているとわかる。
だからこそ、私は二人を応援する。
男同士だとかは今のご時世、結構市民権を得てるしね!
当てられて照れてるくせに必死に拗ねて見せるにぃに、へへへと笑って──ふとあることを思い出した。
「あっ、そうそう。私、にぃに渡すものがあるんだ」
「ンだよッ?」
突然立ち上がる私を、首を傾げて見上げるにぃ。
私は思いついたらすぐ行動しちゃうから、にぃはこういう突然話を変えたり動いたりすることに慣れてるんだ。
ちょっと待っててと声をかけて、とっとこ走り出す。
(ええと、確か寝室に置いておいたはず……あったあった、これだ!)
目当ての品を手に取って、意気揚々とリビングに戻った。
きっとこれがないと困ると思うんだよね! だから絶対渡さないとって思ってたのに今まですっかり忘れてたよっ。危うく渡しそびれるとこだった。うっかりだなぁ~。
「ほらこれ! 忘れてったでしょっ!」
ガチャ、とドアを開き、ソファーに座ってちゃんと待ってくれていたにぃに、褒めて褒めてと尻尾を振らん勢いでルンルン駆け寄る。
それから手の中の物を見せつけるように掲げて、私はにっこりと笑った。
「イボ付きバイブとチェーン付きボディクリップ!」
「不燃ゴミだオラァッ!!」
まさか、兄が恵まれた体を駆使してソファーの背もたれを飛び越え、ワンステップで襲い掛かってくるとは。
純粋な善意で持ってきたのに、修にぃは私の手からバイブとクリップをひったくって、不燃ゴミのかごの中にガゴォンッ! と投げ捨てた。
ひったくられた私はきょとんだ。
ええっ? 不用品にしては綺麗に手入れ済みで埃被ってないしベッドの下に転がってたから、うっかりなくしただけだって名推理したのに、要らないのかな?
そう尋ねようとしたが、真っ赤になりながら地獄の鬼もかくやの気迫で三白眼をかっぴらき牙を剥き唸るにぃは、触るな危険のビジュアル化。
身内でもちょっぴりおっかないレベル。なのでお口チャック。
結局この日、アレは必ず捨てろと口を酸っぱくして言い聞かせられて、私とにぃの歓談は幕を下ろしたのだった。
まったくもう。私だって大人だから口出しなんてしないのに、いつまで経っても子ども扱いされちゃう。
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「でもにぃ、ほんとにいいの? あれなくて夜とか困んない?」
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「? オッケ! じゃあ今度から見つけたら三初さんに連絡するよ」
「あいつが呪術師なんだよッ!」
第八.五話 了
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