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第九話 先輩後輩ごった煮戦線
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しおりを挟む店舗が見えるところまでやってくると、げんなりとするような行列ができていた。
はぁ。もういい加減、見るだけで頭が痛くなるぜ。
本格的に喫茶部門で商品化してるんならいいけどよ。こっちはまだ試用段階なんだ。
一時的なブームを得たら、フラットな状態の客受けがわかんねぇんだよ。チクショウめ。
宣伝と売り上げ的には万々歳でも、データ的にと現場的にはブーイング待ったなし。
「うえ、っえ、うわあぁ、あぁぁ~っ」
「っ、と」
急いでブースの中に戻ろうとしたが、行列のそばで子どもが大泣きしている姿を見つけた。
まだ五歳くらいの男の子だ。
頬をボタボタと濡らして、ティーシャツの襟ぐりを変色させて立ち尽くしている。
近くに親らしい大人がいない。
心配そうに客が子どもを見つめているだけで、誰もその子の詳細は知らないようだ。
(誰かどうにか、ってか、待つより俺が動いたほうが早いよな)
スタッフからさっさと帰ってこいという視線を感じるが、俺には幼い頃の美環とダブって、放置することはできなかった。
子どもは俺の顔を見ると黙り込むか逃げるか泣くかなので、自信は皆無。
それでもそーっと歩み寄って、ヤカラスマイルと言われる愛想笑いを浮かべ、その場にしゃがみこむ。
「あー、なぁ。どうして泣いてんだ?」
「ひっ、ひ……っう、あぁぁぁぁ~!」
「あぁぁっ、待て待て、男だろうが、泣くなっ、取って食いやしねぇって!」
(ぐっ……! 周りの目が痛すぎる……ッ!)
接客用の笑顔で引きつった口角を一瞬で崩壊させ、俺は素に戻って焦りまくった。ますます周囲の視線が厳しくなる。
迷い迷った末に、俺は迷子の脇に手を入れて、そっと抱き上げた。
「うぇぁ……っ」
途端にビクッ、と迷子が硬直し、おとなしくなる。
なんでか知んねぇけど、子どもってのはおとなしい時に驚くと泣き出し、泣いている時に驚くと沈黙するんだよなぁ……。
泣き止んでいるわけじゃないが真っ赤な目を丸くしておっかなびっくり俺を見る迷子に、俺は背をトン、トン、となでてやった。
「おら、泣くな。泣いてたってしょうがねぇ。そうだろ?」
「うっ、うっ……っ」
「ママかパパはいねぇのか」
「うぇぇ、えっう、っ」
「いなくなったんだな、おーし。んじゃ、見つけりゃいいだろうが」
「うぅ~」
徐々に泣き止んでいくが当然なにを言っているかわからないし、まともな言葉も言わない。
ママかパパ、と言った時に再度泣きそうになったから迷子で間違いないとあたりをつけ、思い出させないようにとっとと次の話に進める。
親の服装とか、特徴を言ってくれりゃあいいんだけど、混乱している子どもは何度尋ねてもわからないと言うのが普通だ。経験上。
どうにかぐずる程度に落ち着いた迷子の頭を、ワシャワシャとなでた。
「ふぎゃっ」
「うしうし、上出来だぜ。見どころのある男だな。名前はなんて言うんだ?」
「お、おれ。おれしょう……」
「ショウな。俺はオワリ。今から俺らはコンビだぜ。冒険にでかける前に、特別に食料をやんよ」
「え……っ? わあ、トポスだっ。お、オワリ、すげえっ、ありがとっ」
「だろ? しかも新商品!」
制服代わりのカフェエプロンのポケットから取り出した、端数のトポス。メロンソーダ味。
それを迷子──ショウに渡すと、潤んだ瞳のショウは、ようやく笑顔になった。
子どもは泣くのも仕事だが、やっぱり笑っているほうがいい。
母体のスタッフでもない俺が店舗の仕事よりこっちを優先するのは、多忙な今よくないことではある。
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