412 / 454
第九話 先輩後輩ごった煮戦線
36
休日出勤を終えた日曜日の夜。
九時前に帰宅した俺は、出来合いの弁当で夕飯を済ませ、風呂に入って待機していた。
出張明けの今日は帰りが遅くなるだろうが、それでも三初は帰ってくるだろう。
だから、あの山のような雑務に蹴りをつけたイイ報告のために、俺は疲労困憊のまま待機していたのだ。
あくまで報告のためである。
俺だって土日がうまくいったか聞きたいので、つまりそういうこと。
他意はない。なにもない。全然ない。
リビングのソファーに座ってテレビを見つつ、誰にとも言えない言い訳をした。
──……までは、覚えている。
そこから先は記憶になく、気がついたら暗転。正しくは、寝落ち。
「ん……、……ん、ん?」
結局、目を覚ますと室内は太陽光をたっぷり取り入れて、明るくなっていた。
んん、と瞬きをする。
後頭部に固いものが当たった。カーペット越しの床だ。俺はソファーから落ちて床で寝たのか。
気温が上がり始めてからベッドで使っているガーゼケットが、体にかけてある。
見覚えのあるネイビーのものだ。
そうそう。いつも朝起きた時にも、これを被って──。
(……朝? 今日は、月曜日……)
理解した瞬間、ガバッ! と起き上がる。
「ち、遅刻ッ!?」
「しませんよ」
しかし、悲鳴のような声を上げて起き上がった俺に、待ち人の呆れた否定が入った。
首を声のほうへ向けると、キッチンからエプロン姿の三初がのんびりと歩いて近づいてくる。
「は? え? 時間……」
「十時過ぎてますが、今日は前もって休み取っといたんでね。おはようございます」
「おう、おはよう。ってかテメェなに勝手に俺まで申請してんだッ! この時期に休み取るか普通!」
「まーまー。目覚ましと今度はアラームもちゃんと切っておいたんで、よく眠れたでしょ?」
「肝が冷えたわッ!」
ソファーの背もたれに身を乗り出して見下す三初に、俺は頭をガシガシとかきながら唸った。
ケッ。一週間ぶりに会ったってのに、なんの感動もありゃしねぇ。
いやいらねぇけど、こういうのは気分的に、だ。
有休を自主的に使うことが滅多にないので構わないのだが、無駄に焦ってしまった俺の心をもう少し慮ってほしいものである。
しっかりと眠ったおかげで、頭はすっかり冴えていた。
疲労もそれなりに回復している。
文句もあったが起き上がってガーゼケットを綺麗にたたみ、ソファーに置いて、俺は顔を洗うために洗面所へ向かった。
身支度を整えてリビングに戻ると、エプロンを外した三初が朝食の並んだテーブルに着いてた。
今朝のメニューは目玉焼きにウインナー、キャベツとトマトのサラダ。ご飯とみそ汁に、キュウリとナスの浅漬けだ。
帰りが遅かったはずなのにマメな男である。
申し訳ない気がして三初をうかがっても、全く苦にしていなさそうな顔だった。
最強かこいつ。眠気も感じねぇ。普通にカフェイン摂取してやがる。
自分の交際相手で後輩だが、規格外の男だ。
三初のスペックは無視することにして、俺好みの献立にひそかに胸を躍らせながら向かいの席に着く。
(あー……二ヶ月の呪い、やべぇよな)
いただきますと手を合わせてから、こうして話しながら食事ができる久しぶりの朝の日常に、俺は内心で少し浮かれた。
息吐く間もない新生チームによる混乱や仕事のピークなら、受け持ちの仕事をどうにか終わらせた昨日が最後だろう。
けれど今、〝やっとゴタゴタが落ち着いたか〟という実感が湧いてきたのだ。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
またのご利用をお待ちしています。
あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。
緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?!
・マッサージ師×客
・年下敬語攻め
・男前土木作業員受け
・ノリ軽め
※年齢順イメージ
九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮
【登場人物】
▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻
・マッサージ店の店長
・爽やかイケメン
・優しくて低めのセクシーボイス
・良識はある人
▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受
・土木作業員
・敏感体質
・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ
・性格も見た目も男前
【登場人物(第二弾の人たち)】
▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻
・マッサージ店の施術者のひとり。
・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。
・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。
・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。
▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受
・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』
・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。
・理性が強め。隠れコミュ障。
・無自覚ドM。乱れるときは乱れる
作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。
徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。
よろしくお願いいたします。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。