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第九話 先輩後輩ごった煮戦線
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「三初も俺ぐらいわかりやすくキレればいいのによ」
「…………」
固く誓った回想を終えてボソリと独り言を呟き、俺は最後に取っておいた目玉焼きの黄身の部分を一口で食べる。
「まー……、うん。不機嫌にはなっても、俺はそうキレませんから。疲れますし」
「は? ってかそういう不機嫌の威圧じゃなくて、相手がふざけた野郎の場合は、間森マネージャーみてぇにぶちのめせよ」
「ゴミ箱に顔面突っ込んでやったりですかね?」
「怒りをあらわにしすぎだろ何十年代のヤンキーだよコラ」
軽いやり取りをしながら食べ終わった食器をお盆のまま持ち上げ、シンクに下ろした。
三初は椅子に座ったまま空のコーヒーカップを渡し、「次はそうしてみようかね」と謎のつぶやきを放つ。
次ってなんだ。一回キレたのかよ。
知らねぇけど、相手が悪いなら一発キメてやれ。
自分の食器とコーヒーカップを洗いつつ、まあいいかと話を切り上げた。
「つか、なんで休み取ったんだよ」
「そうですねぇ」
洗い物を終えた後。
そもそもの理由を尋ねると、三初は立ち上がり、「先輩は今日なにがしたいですか?」と珍しく俺の意見を聞く。
その殊勝な態度に、俺は訝しく睨んだ。
普段は勝手に計画して勝手に俺を連れていく三初なのに、計画段階から俺に意見を許すなんて。
これは、なにか悪だくみをしているに違いない。
ちょうど外の散歩から帰ってきていたのか、マルイが開けっ放しのドアからリビングへやってきた。
そーっと移動してマルイを確保し、怠惰にも横向きにソファーへ腰かける。
「平和的に家でゴロゴロしつつ、癒しを重視してモフる」
「んじゃ、今渡すからマテしてて」
「あ?」
「ナーウ」
革張りのソファーでマルイと俺は、揃って首を傾げた。
三初がいやに大人しいからだ。
頭上に?を飛ばす俺の心境を知ってか知らずか、三初はサッサとリビングを出て行き、すぐに戻ってくる。
そして俺に、正方形の箱を手渡した。
シンプルだがオシャレなラッピングが施された、シックな箱だ。
「……? なんだこれ? くれんのか?」
「どーぞ」
「ありがと、よ? ……なんでくれんだ?」
しかし俺には理由が思いつかず、終始?まみれで素っ気なく渡されたプレゼントを受け取る。
そんな俺を見下ろす三初は盛大に溜息を吐き、ソファーの背もたれに身を乗り出して、グッと顔を近づけた。
(っんだよ、近い……!)
アップに耐えうる造形の顔が近づいて、思わず肩を竦める。
鼻先が擦れ合いそうな距離感に息を詰めると、呆れたジト目に貫かれた。
「今日は何月何日ですか?」
「し、七月七日だろ」
「あんたの誕生日は?」
「七月七日だろ。…………あ」
ポカン、とマヌケに口が開いた俺を見て、ようやく三初が離れる。
「記念すべき三十路の仲間入り、おめでとうございます」
「……もうちょっと祝いらしい言い方しろよ、捻くれ大魔王」
開いた口を閉じるついでに、照れ隠しの悪態を忘れないのが俺だ。
なるほど。
これで全ての辻褄が急速にカチリと合う。
三初が〝来週中に〟と念を押していたのは、今日が俺の誕生日なので、仕事を残すとせっかく取った休みを返上しなければならないからだ。
となると、何度かもの言いたげにしていたが結局なにも言わなかったのは、たぶんこう。
『……先輩、なんか……あー……』
──欲しいものは、ありますか?
ということだろう。
けれど結局三初は俺に欲しいものを聞かなかったので、この箱の中身は三初チョイスということである。
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