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第十話 誰かこの暴君を殴ってくれ!
03
レトロというのはかっこいい。
いくつになっても男のロマンだ。なら、言葉はいらねぇ。
キョロちゃんとブルジョアかき氷機を無言でもとの場所に戻し、レトロかき氷機を二人で覗き込む。
「手動ですよ。ハンドル横についてますね」
「値段も手ごろだぜ。樋口がいれば事足りる」
「バラ氷もいけるからすぐ作れるかな。専用カップで製氷すれば、フワフワも作れるらしいです。お、保証もついてる。有能」
「なによりテンション上がるだろ、この見た目」
「否めない」
いそいそとかごに入れてシロップの棚へ移動し、かき氷機戦争はいつの間にやらレトロかっこいい協定により、あっさりと収束だ。
軽い言い合いならほぼ毎日している俺たちにとって、この程度は日常茶飯事。
喧嘩になる前にやめるからな。
シロップ売り場では定番のいちご、メロン、レモン、みぞれ、抹茶をかごに入れたが、三初がしたり顔で数本の瓶を持ってきてかごに入れた。
おかげで俺が持つかごの重量がダンベル並みだ。
右腕の血管が浮き出している。
「待てコラ。お前入れすぎだろ! 瓶入りシロップの重さ舐めてンのかっ」
「そのための筋肉でしょ? 軽い軽い」
「荷物持ちのために鍛えてるわけじゃねぇぞコノヤロウ。十キロ超えてんだよチクショウが」
「でもこれは絶対買いじゃないですか?」
「あぁん?」
文句を言う俺を嗜めて、三初はニマ、と猫のような笑みを浮かべ、シロップの一本を手に取りお披露目した。
やけにおしゃれな英字が印刷された部分をよく見ると、〝お酒と合わせてカクテルにも!〟と書いてある。……なるほど。
かなり悔しいが、これは甘い酒が好きな俺の好みを把握している三初の、ベストなチョイスと言えるだろう。
黙ってレジへ歩き出した俺の隣で、三初は「夕食はつまみメインにしようかねぇ……」と巧みに俺を誘惑する。
(くそォ……ッ)
たぶんこいつは悪魔の生まれ変わりだ。そうに違いない。
アホな前世予想を本気で考えた瞬間である。
それからかごの中身の決定権を握られ続けながら買い物を終えて、予約していたケーキも無事に受け取った。
家に帰って荷物を片付け終わると、時刻は午後二時過ぎだ。
──ということで、お待ちかね。
食卓にレトロなかき氷機をセットして、いざ尋常にかき氷制作開始である。
様々な味で食べるために、器は小さめのガラスのグラスを用意した。酒も飲める。
「俺、みぞれで。その後は焼酎割りね」
「おう」
氷を削ることに興味津々の俺と違い、三初は氷を削ることには興味がないらしい。
夕食の準備をしながら飲むつもりらしく、かき氷は一杯だけを注文する。
キッチンで下拵えをしつつこちらを見ている三初に頷き、俺はハンドルを回し始めた。
「お、おっ、おぉ~っ」
ゴリッ、と初めに硬い感触がして、後はスムーズに氷が削れていく。
下にセットしたグラスの中に削れた氷が積もっていくのを見ていると、祭りの出店を思い出す光景だ。
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